ピルツジャパンのブログ「裏ピルツ新聞」

2022年12月20日更新ピックアップ

  どうも~アラフィフおやじです。

 

  今日はアコースティックギターの音を拾う「ピックアップ」に関する話です。

  以前こちらのコラムでアコギの録音に関するお話しをさせていただきました。アコギの場合、サウンドホールの近くにマイクをセッティングして録音するのが一番簡単かついい音で録音ができるのですが、ライブのように割と大きな音を出す会場でプレイする場合、ギターの近くにマイクを置いて音を拾うやり方だと、PAのスピーカーから出た音をマイクが拾って更に増幅して…ということを繰り返す「ハウリング」と呼ばれる現象が発生してしまいます。そのため、ライブで使うときは、ピックアップ(マイク)が仕込んである、いわゆる「エレアコ(エレクトリック・アコースティックギター)」が使われることが多いです。

  アラフィフおやじは6本のアコースティックギターを持っているのですが、そのうち半分の3本がもともとピックアップを内蔵した「エレアコ」です。正確に言うと、残りの3本のうち1本については自分でピックアップを購入してDIYで取り付けて「エレアコ化」したので、現状では6本のうち4本がエレアコという事になります。

  ピックアップには様々な方式が存在しますが、どの方式にも一長一短あります。例えば、アラフィフおやじの持っているエレアコのうち、アメリカ製の「Ovation(オベーション)(図1)」やカナダ製の「Godin(ゴダン)(図2)」といったブランドのギターの場合、「ピエゾ方式」というピックアップが用いられています。これはギターの弦とボディが接触する「ブリッジサドル」と呼ばれる白っぽい棒状の部位の下に隠れている「圧電素子(Piezoelectric element)」と呼ばれる部品に、弦振動という「圧力」がかかることで電圧を発生し、その電圧を拡大することで音を拾うという原理です。純粋に弦の振動だけを拾うのでハウリングが発生しにくいというメリットがありますが、マイクのように空間を通して音を拾うのでなく、ブリッジ付近の弦の振動(圧力変動)をそのまま拡大するので、少し音がダイレクトすぎるというか、アタック感の強い「ペチペチ」とした感じの音になってしまうというのが欠点と言えば欠点と言えるかもしれません。しかし近年では、ピックアップの音を内蔵プリアンプで補正してピエゾ臭さを軽減させるようなノウハウも確立されつつあり、コストや扱いやすさなどの利点から、最も広く普及している方式と言っても過言ではないと思います。

図1-1 Ovationピエゾ(スチール弦)

図1-2 Ovationピエゾ(ナイロン弦)

図2 Godinピエゾ

  ちなみにアラフィフおやじがDIYでピックアップを取り付けたギターは、チェコ共和国製(!)の「Furch(フォルヒ)」というブランドのギターです。もともとこのギターはピックアップがついていない純粋なアコースティックギターだったのですが、ライブでも使いたくなって、思い切って後付けできるピックアップを購入して自分で取り付けてみました(図3)。こちらは「マグネティックピックアップ」と呼ばれる方式で、エレキギターと同じ原理を採用しています。マグネットにコイルを巻いた電磁石を弦に近づけることにより、マグネットの磁界の中で弦が振動(細かく移動)した際にコイルに誘導電流が生じ、その電圧を拾って拡大することで音を拾う、という原理です。こちらもピエゾ方式同様、比較的ハウリングはしにくいのですが、エレキギターのピックアップと同じ原理なので、どうしても少々エレキっぽい音になってしまうという難点も。しかしピエゾ方式と同様、近年ではこちらもピックアップ内蔵のプリアンプで上手にエレキっぽさを軽減して自然なエアー感のあるアコギサウンドに加工されていることが多いので、もはやピエゾだろうがマグネットだろうが「好み」のレベルの差でしかない、と言い切ってしまってもいい様に思います。アラフィフおやじがフォルヒのギターに取り付けたマグネティックピックアップは、ピックアップメーカーとして定評のある「L.R.Baggs(エルアールバッグス)」の「M1 Active」というモデルで、ギタリストの「Char(チャー)」が同モデルを使用していることでも有名です。サウンドは非常にナチュラルかつエレキ臭さも少ないので、アラフィフおやじも大変気に入っています。

図3 Furchに取付けたマグネットピックアップ

  ちなみにアラフィフおやじの持っているピックアップがついていない2本のアコースティックギターは、以前こちらのコラムでも紹介した「ジプシーギター」と呼ばれるモデルで、「Aria(アリア)」というブランドが中国の工場で作らせたものです。やや特殊な形状で、特殊なジャンル(ジプシージャズ)でしか使われないモデルのため、ライブで使用することはめったにないのですが、たまーに使いたくなる時があります。

  その場合、マイクスタンドでマイクを立てて音を拾うのは少し面倒なので、アラフィフおやじはギターのサウンドホールに引っ掛けて使うことができる、オーディオテクニカの小型コンデンサマイク「PRO70」(図4)を使用しています。ギターのサウンドホールに取り付ける事ができるアタッチメントが付属してくるので、ライブの時に簡単にセットアップすることができます。音に関しても普通のコンデンサマイクなのでとても自然です。しかしその反面、周囲の音も拾いやすくハウリングには少々弱いですが…。

図4-1 PRO70本体

図4-2 PRO70を取り付けたジプシーギター

  またこのPRO70の他に、ギターの表面板に粘土等を使ってピタッとくっつけるコンタクト型のピックアップ(図5)も使用することもあります。こちらはボディ表面の微小な振動を拡大するタイプのピックアップなので、ハウリングにはやはり少々弱いのですが、価格が非常に安く(なんと1000円程度!)、その割には自然な音なので割と気に入っています。アラフィフおやじはこのピックアップをギターのボディにコクヨ製の『ひっつき虫』という粘土タイプの粘着剤を使って取り付けていますが、ボディのどこに取付けるかで音の傾向を微妙に調整することができます。

図5 コンタクト型ピックアップ

  これまで紹介したように、アコースティックギターに使用するピックアップには様々な種類が存在しますが、ピックアップを選ぶ時の最大の悩みは「購入する前に出音(でおと)が確認できない」という事です。厳密にいうと、ピックアップから出る音は「ギター固有のサウンド×ピックアップ固有のサウンド」のように掛け算で決まるので、実際に購入して自分のギターに取付けてみるまで分からない、という事になるのですが…そんな悩みを見事に解消してくれたのが『Acoustic Guitar Magazine』誌の出したムック本である「ピックアップ&プリアンプ・ブック」(図6)です。

図6 ピックアップ&プリアンプ・ブック

  この本は、ピックアップ51種、プリアンプ27種、計78種の製品をマーチン製のアコースティックギターに順番に取付け、同じフレーズを弾いて録音した音源が2枚組みのCDとして付属しています。使うギターが変わればピックアップの出音も変わるだろ、と突っ込みが入りそうですが、相対的な音の傾向はこのCDでかなり正確につかむことができます。現にアラフィフおやじはこのムックで確認をしてから前述したL.R.Baggs(エルアールバッグス)の「M1 Active」というピックアップを購入しましたが、実際に自分のギターに取付けて聴いてみた音はCDで聞いた音とさほど変わりませんでした。CDの出音サンプルだけでなく、本文にも有益な製品情報が満載ですので、「どのピックアップを購入しようかな~」と悩んでいる人には是非お勧めしたいムックです。

  近年では、ピエゾピックアップとコンタクト式ピックアップやコンデンサ式ピックアップ等を組み合わせて双方の弱点を補ったハイブリッド型のピックアップなども多く発売されていますし、ピックアップで拾った音をプリアンプ内でリアルタイムに加工し、あたかもマイクで拾ったような自然な音色にシミュレートして出力する技術も確立されるなど、ピックアップの世界もどんどん進化しています。

  ギタリストは常に自分の演奏を聴きながら演奏しているので、ピックアップの出音が良くなれば良くなるほど、気分が上がっていい演奏ができるようになります。そのため、ピックアップの進化はギタリストのプレイの進化につながり、音楽シーンの活性化に少なからず貢献しているのではないかと思います。

  アラフィフおやじも、ピックアップの技術進化に負けないよう日々練習に励みたいと思います。

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