ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2016年4月21日更新ドイツの電車は香ばしい

ドイツでは、かつて国有鉄道会社だったものを1994年に株式会社化して「民営化」しました。カッコがついているのは、株式会社化しても株主は100%ドイツ連邦政府だからで、実質的に民営化されていません。株式上場に向け何度も議論されていますが、ドイツはここしばらく複数政党連立政権で全然コンセンサスが固まらず、そうこうしているうちに選挙になり先延ばし、が繰り返されています。

ドイツの元国鉄、日本でいうJRは、ドイツではDeutche Bahn、略してDBと呼ばれています。路線は全国津々浦々に張り巡らされており、各州政府や自治体が運営する地方路線とも相互乗り入れしていて、生活に広く浸透していますが、ドイツの鉄道は概して評判がすこぶる芳しくなく、特に民営化後は「最悪」「サービス皆無」「歩くほうが速いし安全」と散々な言われよう。今まで同僚や友人から聞く限り、DBについて良く言うドイツ人は今のところ皆無です。なぜか日本ではドイツのイメージがとてもよく、電車も日本同様に時間に正確なのだと思われていることが多いのですが、実際の定時性やサービスは悲惨の一語に尽きます。

 

まず、始発駅であっても定刻には出発しません。1~2分レベルではなく5~15分、日常的に遅れます。そして発車のベルもアナウンスもなく突如ドアが閉まり、動き出す。むしろアナウンスがあるのは異常事態の時で、たとえば私が経験したトラブルで「列車番号が前後逆になっている」というのがありました。もちろんドイツ語のみなので、最初は何が起きたのかわからず、突然ホーム上を右往左往し始めたドイツ人に「どどどどうしたの」と訊いて初めて「番号が逆らしい」と判明、ダッシュで自分の号車へ向かう羽目になりました。しかもこのときは始発駅ではなく途中駅で、まさに列車が到着するその時にアナウンスがあるという手際の悪さ。それでも、この駅は説明があるだけ相当マシなほうで、普通は車内外問わず説明は皆無です。予約した座席どころか車両が存在しないことも結構あります。

ストライキが多いのも特徴です。以前は日本でもそこそこありましたたが、DBの場合昨年でさえ1か月に3回ストをやって利用客に大ヒンシュクを買いました。しかも多くの場合、無期限ストで予定が立てられません。現在の組合委員長は旧東ドイツ出身で頻繁にストを実施、乗客から目の敵にされていますが、反発がかえって使命感を燃え上がらせているようで、最近は連休無視で実に10日間のストを決行するなど仁義なき戦いを挑んでいます。なおストライキはきっちり定刻に開始されます。

 

事故、故障も少なくありません。2011年7月のある週、ドイツとしては異常な38度を超える気温が連日続いた結果、1週間に48の列車でエアコンが故障し、車内で気絶した老人や呼吸困難に陥った人、修学旅行中の学生が集団熱中症にかかりばたばた倒れるなど阿鼻叫喚がこだまする事態が全土で繰り返されました。異常気象でエアコンが壊れること自体、日本では考えられませんが、DBの総裁はこの地獄絵図を引き起こしておきながら「全部壊れたわけじゃない」と居直って袋叩きに遭いました。この総裁、2008年にドイツ中部のフルダ近郊で「なぜか」トンネル内にいた大量の羊に特急ICEが時速200キロ超で激突・脱線する大事故が起きた時にも、記者に「新幹線と同じように柵を設けないから羊が入り込んだ」と咎められた際に「総延長何千キロあると思ってるんだ!ならお前が柵つくれ」とお手本のような逆ギレ対応を見せて集中砲火を浴びており、炎上がもはや通常運行になっています。なお、羊がいなくても脱線は結構頻繁に起きていて、突如がたがたと揺れたあと「乗客の皆様、当列車は脱線しました」という脱力系アナウンスがあり、さしたる混乱もなく避難開始というのがDBの日常です。

 

定刻に出発しないDBですが、不思議なことに到着時刻はかなり正確です。つまり最初からかなり余裕を持ったダイヤにしてあって、途中で遅れを挽回する設定のようです。最初からバスみたいなものだと割り切れば実害は少ないのかもしれませんが、とりあえずドイツから日本に帰るたびに、日本の鉄道のサービス・安全性・定時制は疑いようもなく世界一!と痛感する私です。

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