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2018年3月23日更新野合のメルケル政権4期目

極右政党のAfDが大躍進したドイツ連邦議会総選挙は、2017年の9月でした。それから約半年、ようやく先週になって第四次メルケル政権成立に漕ぎつけましたが、まあ誰がどう見ても大いなる妥協の産物です。何といっても「私は首相になりたい!仮に第一党になれなくても、連立には絶対に加わらない」と明言公言していたSPD(社会民主党)が、厚顔丸出しで前言撤回し再び連立に加わったのが象徴的です。与党第一党であったCDU/CSU(キリスト教民主・社会連合)は下馬評通り(というかもはや当然のように)単独過半数は取れませんでしたから、SPDが連立から外れる以上、他の政党と連立を組まざるを得ませんでしたが、SPDに次ぐ野党は今やAfDで連立は論外。残る緑の党とも政策が違い過ぎて破談になったので、もうSPDサマに頼るしか政権成立の途は残されていませんでしたが、「俺は首相になりたい!」と公言していたSPDのシュルツ代表がすんなり連立に戻るはずもなく、すったもんだの折衝の果てにようやく政治空白は埋まったわけです。

元の鞘に納まったのだからいいじゃないか、という声は、もちろん聞かれません。理由はAfDです。SPDが再び連立に戻ったことで、最大野党は議席数第3位だったAfDとなりました。つまり、連立政権は宿敵であるAfDを野党第一党に押し上げてしまう結果をもたらしたのです。これにはSPDを最大野党として期待・投票した有権者も「野合じゃないか」「ばかにすんな」と呆れ果てていました。何のことはない、選挙の結果は「政権そのまま、大躍進AfDの勢力拡大」に落ち着いてしまったのですから、結局ドイツもポピュリズムの波にのまれてしまったわけです。

そもそも、メルケル首相はその変わり身の速さに定評があります。

もともと原発推進派だったメルケル首相が政策を180度転換し脱原発を決めたのは、福島第一原発事故がきっかけでした。緑の党は大喜びでしたが、原発推進派の多い保守系支持者は失望しました。ドイツでは少しでも保守的なことを言うとすぐにナチ扱いされるため、隠れ保守がたくさんいます。

徴兵制の事実上の廃止や、同性婚の容認も保守派に嫌われる政策でしたが、AfDへの対立軸を明確にするためか左傾化したメルケル政権は押し通しました。そして、致命傷になったのがご存知の難民積極受け入れです。

他国は上限どころか受け入れそのものも認めない国が多い中、ドイツは人道的な意義を強調、上限なしで受け入れると表明して人権派に正義の味方として祭り上げられました。当初は拍手喝采で迎え入れていたドイツ国民も、ドイツの地域文化になじもうとしない難民の振る舞いと政府の難民厚遇に不満を募らせるようになりました。

なお、最近会ったトルコ系ドイツ人の同僚と話した際、「シリア難民との軋轢が報じられてるけど、ドイツって大戦後にトルコ系移民を受け入れた時も同じようにもめたよね?」と訊いたら、「まさにそれ。ウチの両親もそうだったけど、難民受け入れても多くのドイツ人は所詮排他的なので、自国内での文化多様性にはすごく不寛容。イスラム教徒であること自体嫌悪されるし、就業日に教会行事参加なんてまず無理な会社がほとんど。で、今度はシリア難民に同じことをしようとしてるわけ」と言って、ため息をついていました。「でも、PILZは例外。イスラム系もイスラム教も問題なく認めてくれて、会社を休んで行事に行くこともOK。すごく感謝してるよ」とのことでした。

話が脱線しましたが、ドイツは基本的に超保守。難民厚遇や同性婚容認などの進歩的政策は、ナチ扱いされないための「予防線」に過ぎず、本質はドイツ万歳なのです。それを公にしない「マナー」をAfDは叩き壊してしまったため、政権側にはメチャクチャ嫌われていますが、AfDが決して単なる少数政党でないことは、CDU/CSU 246議席 > SPD 153議席 に続く AfD 94議席を獲得し第三党を得たことからも明らかです。連立成立後の首相選出投票でも、メルケル氏は賛成364・反対315と、過半数の355をギリギリで上回りかろうじて首相に選ばれました。賛成票数が与党議席数に遠く及ばないことから、与党内に公然たる造反組がいる中での船出であり、「任期全うできないのではないか」という意見も多く聞かれます。

昨年の選挙は、革新の仮面に隠れていたドイツ保守派有権者の本音をあぶりだしてしまいました。(そして、それはドイツの圧倒的多数を占める存在だとドイツ人自身も認めるようになってきています。)この状況下だと、メルケル首相の変わり身の速さは即支持率低下につながるため、絶対多数でない議会ではもう通用しません。第三党のAfDは予算委員長のポストを確保しましたので、難民保護政策などリベラル政策の予算通過は極めて困難になるでしょう。

オーストリアでは極右政党が政権を掌握し、イタリアでは今月の選挙で反EUを掲げる右派政党が第一党に選ばれました。BREXITに続きEUに激震が走り続ける中、EUが頼みの綱であるドイツの立場はもはや安泰ではいられません。これまで以上に妥協を迫られる、メルケル政権の難しい12年目が始まりました。

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