ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2018年5月23日更新「はさまれ・巻き込まれ事故」に関する法律や規則について教えてください。

1. 労働安全衛生法 

 3月号、4月号で、製造業におけるはさまれ・巻き込まれ事故の現状、事故事例を見て来ましたが、今回は関連する国内の法律や規則についてご紹介したいと思います。これらの事故を防止するため、日本の法規上、事業者や監督者には何が求められているのでしょうか?

 

 まず、日本で最も重要な労働関係の法律と言えば、みなさんもご存じの「労働基準法」(以下、「労基法」)ではないかと思いますが、その労基法の中の労働者の安全・衛生の部分だけが別の法律として独立した法律が「労働安全衛生法」(以下「労安法」)です。もともとは労基法の一部だった訳ですから、労安法は労基法と重要性は同等と言ってよいと思います。この2つの法律の違いは、労基法は最低基準の確保を目指しているのに対して、労安法は適切なレベルの職場環境の実現を目標としている点です。

 

 早速労安法について調べてみたところ、以下の記述がありました(硬い表現が苦手な方は、読み飛ばして、口語訳の部分からお読みください)。以下に直接関係のある部分のみ抜粋します。

 

第四章(労働者の危険又は健康障害を防止するための措置)

第二〇条 事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

一 機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)による危険

 

第六章(安全衛生教育)

第五九条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。

第九章 事業場の安全又は衛生に関する改善措置等 《章名改正》平26法082

第一節 特別安全衛生改善計画及び安全衛生改善計画 《節名改正》平26法082

(特別安全衛生改善計画)

第七八条 厚生労働大臣は、重大な労働災害として厚生労働省令で定めるもの(以下この条において「重大な労働災害」という。)が発生した場合において、重大な労働災害の再発を防止するため必要がある場合として厚生労働省令で定める場合に該当すると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、その事業場の安全又は衛生に関する改善計画(以下「特別安全衛生改善計画」という。)を作成し、これを厚生労働大臣に提出すべきことを指示することができる。

 それでは、今の部分を日本語(いえいえ、日常の表現!)に訳してみましょう。

 

口語訳

1.事業者は、はさまれ・巻き込まれなどを含む職場の事故で労働者に大けがや死亡の危険がある機械には、安全対策を施して、作業者を危険から守る義務がある。

2.事業者は労働災害防止のため、労働者に安全衛生の教育を受けさせる義務がある。

3.重大な労働災害が発生してしまった場合、事業者は再発防止のため、厚生労働大臣に安全衛生の改善計画を提出しなければならない。

 

と、簡単に言うと大体このような内容になるかと思います。このようにきちんと法律で事業者に危険な機械による事故を防止するための法律が定められているのですね。

 

 この労安法は、平成26年までは努力義務でしたが、同年から平成28年6月までの間に一部の項目が努力義務→義務に改正されました。前述の「重大な労働災害を繰り返す企業に対する大臣の指示、勧告、公表」もそのうちの1つです!改善計画書の指示を受けると、4月から翌年3月までの1年間、労働基準監督署の労働基準監督官などによる個別指導を受け、定期的な訪問があるそうです!!さらに、改善計画を作成しない、大臣の計画変更の指示に従わないなどの、問題行動を繰り返す企業は、厚生労働大臣が企業名を公表できるようになりました。そんなことになったら大きなイメージダウンで、お客様からの信頼を失ってしまいますね。

2.労働安全衛生規則

 では、労安法以外に労働安全に関する規則はあるのでしょうか?労安法に基づいて定められた労働の安全衛生基準について具体的な仕様が書かれた厚生労働省令「労働安全衛生規則」(以下、安衛則)があります。なんだか舌を噛みそうな名前です!安衛則では、特定の状況(例:掃除等の場合の運転停止等、手袋の使用禁止)、特定の機械(例:工作機械、プレス機械およびシヤー)に対する具体的な方策、措置が定められています。

 

 安衛則は、機械の種類別にそれぞれの仕様を示す前に、まず第一節で、すべての機械に共通する規則が「一般基準」として以下のように規定されています。

第一節   一般基準

(原動機、回転軸等による危険の防止)

第百一条  事業者は、機械の原動機、回転軸、歯車、プーリー、ベルト等の労働者に危険を及ぼすおそれのある部分には、覆(おお)い、囲い、スリーブ、踏切橋等を設けなければならない。

2  事業者は、回転軸、歯車、プーリー、フライホイール等に附属する止め具については、埋頭型のものを使用し、又は覆(おお)いを設けなければならない。

3  事業者は、ベルトの継目には、突出した止め具を使用してはならない。

4  事業者は、第一項の踏切橋には、高さが九十センチメートル以上の手すりを設けなければならない。

5  労働者は、踏切橋の設備があるときは、踏切橋を使用しなければならない。

 

 その後の第二節から第九節までは、機械の種類別に具体的な要求事項が記載されています。

第二節     工作機械

第三節     木材加工用機械

第三節の二        食品加工用機械

第四節     プレス機械及びシヤー

第五節     遠心機械

第六節     粉砕機及び混合器

第七節     ロール機等

第八節     高速回転体

第九節     産業用ロボット

 

 それぞれの機械について、たとえば以下のように、どのような対策を施す必要があるのか、わかりやすく説明されています。

 

第二節  工作機械 (突出した加工覆(おお)い等)

第百十三条  事業者は、立旋盤、タレツト旋盤等から突出して回転している加工物が労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、覆(おお)い、囲い等を設けなければならない。

 

 このように、日本の法律には、はさまれ・巻き込まれを含む重大な事故を防ぐための対策の実施が義務付けられています。安全の意識の高い読者のみなさんの事業所では、すでにこれらの法規に対して万全の対策をされているかもしれません。しかし、現在の対策が十分であるか心配な方は、古澤先生の「事後の百策より事前の一策」という言葉を思い出して、ぜひ専門家のアドバイスを仰いでください。

記事一覧

ページの先頭へ戻る