ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2016年10月19日更新【第2話】指示?勧告?準備? 一体いつ避難すればいいの?

いつもは穏やかピルツライヒ(ピルツ帝国)だが、年に何度か天気の神様が暴れん坊になる時がある。

そのお陰で豊かな土壌が育まれ、きのこたちもすくすく育っているのだが、今回は神様、ちょっと羽目を外しすぎたようだ。ひっきりなしに雨が降り続き、強い風が吹き荒れている。サンズFluss(Fluss=川)の水面もどんどん高くなり、このままでは溢れてしまいそうだ。

こんなひどい天候になったのは、ヤス先生の長い人生の中でも今回が2回目だ。さきほどから停電にもなり、普段とはまるで別世界のようになっている。のんびりやのPちゃんも、この非常事態に心細い思いをしているだろうと親心を発揮したヤス先生は、びしょぬれになりながらもPちゃん宅を訪れる。

ヤス先生「Pちゃん、Pちゃんや。おい、大丈夫か?!」

P「・・・」 返事がない。

ヤ「Pちゃん、Pちゃん! PちゃんったらPちゃん!(ドンドンドンドン)←ドアを激しくノック」

P「ふぁ〜い。今、あけま〜す」

眠そうな目をこすりながら、ドアの前に現れたPちゃん。パジャマ姿で「全力で寝てましたがなにか?」というオーラ全開だ。

ヤ「大丈夫かっ、Pちゃん!! って・・・寝て・・・・いたんだね (-_-)・・・」

P 「はい。だって、この天気じゃ外にも出られないし、テレビも台風情報ばっかりでつまんないなーっと思ったら、突如停電になっちゃって…。電気が使えないからゲームも出来ないし(←ずぼらなのでまめに充電などしない)、こんな日は寝るに限る!と思いましてね。てへ。」

ヤ「“てへっ”って・・・。怖くは・・・なかったんだ・・・ね」

P「窓がガタガタいって、さすがにちょっと怖かったですが、すぐ慣れました。つか、すぐ寝ちゃいました。あははっ。」

ヤ(うーむ。大物なのか、それとも桁外れに神経が太いのか、にぶいのか・・・)

P「せっかくなので、お茶でもどうぞ。ところでヤス先生、なんでいらっしゃったんですか? こんな暴風の中、危ないですよ」

ヤ「・・・ (〃´Д`)…  あああ・・・」

親心子知らず。師匠心弟子知らず。「俺ったら、一体何をやっていたのか…」と、心が折れそうになったその時、ふと電気がついた。停電が回復したらしい。再び目を覚ましたテレビ画面の向こうでは、必死にアナウンサーが何かを訴えている。

P「あ。電気、戻ったー。よかったですね、先生」

ヤ「そうだな。これで一安心じゃが・・・。テレビは何を言ってるんじゃ?」

P「なんか、熱いトークですね。あのアナウンサーさん」

ヤ「しっ! 静かに! 【避難指示】が発令したようだ。状況はだいぶ深刻なようじゃのう」

P「ひ、避難? でも、“指示”でしょ。指示ってことは「しなさいねー」ってことなんじゃないんですか?」

災害について、もっとちゃんと教えておくべきだったと、猛烈に反省したヤス先生だったが、もうすでに時遅し。

ヤ「いや、Pちゃん。残念ながら、すでに【避難勧告】も【避難準備情報】も出ているんじゃ。お前がスヤスヤと眠っている、真っ昼間の間にな」

P「え? 準備情報? 避難の準備なんか、何一つしてないよ。わーん、困った〜」

 

避難指示にはまったく響かないのに、なぜか「避難準備」という言葉が、寝起きのPちゃんの度肝をダイレクトに射抜いたらしい。一気に大慌てモードになり、ムダに家の中を走り回って、お気に入りのぬいぐるみや、おもちゃ類をリュックの中に詰め込んで行く。それを冷静に見ていたヤス先生が一言、

ヤ「おい、Pちゃんよ。とりあえず落ち着こうか」

ヤ「ちなみに、避難勧告って、どんなものだと思う?」

P「なんですか、この一大事に。勧告だから「した方がいいんじゃね?」くらいの、ゆる〜いお誘いって感じかな?」

ヤ「・・・そうか。じゃ、準備情報は?」

P「もっちろん、「避難する時に持っていくものを用意しましょう!」ってことですよね? うーん、もっと早く行ってくれればいいのに。心の準備もあるんだからさ(ぷんぷん)」

 

Pちゃんの言葉を聞く度に、意識があっち側に行きそうになるのを必死でこらえているヤス先生。雨の中、Pちゃんの様子を見にきて、本当に本当によかったと、心の底から思うのであった。

同時に我が弟子ながら、こんなにも「危機管理ゼロ」だったことを目の当たりにし、もはや衝撃を通り越し、冷静になっている自分を感じていた。これからゆっくり時間をかけて、この間違った認識を正していこう。そのためには安全の鬼になろう。そう心に決めるヤス先生であった。

ヤ「とにかく、荷物はそのままに。避難所に行くぞ!!」

P「えーっ、ボク、この子がいないと眠れないのにぃ〜」

ぎゅーっと小さなクマのぬいぐるみを抱きしめるPちゃん。「ウソをつけ!」と心の中で激しくツッ込みをいれつつ、わざとしかめっ面をして、Pちゃんにレインコートを着せる。

ヤ「ほら、ちゃんとボタンを閉じて」

P 「えー、カッコわるいなぁ〜、レインコートなんか着なくても大丈夫でしょ〜」

しのごの言うPちゃんを秒殺で黙らせたのは、ヤス先生が開けたドアの向こうに広がる景色であった。

飛ばされる看板。根こそぎ倒れている街路樹。水たまりになっている道路・・・。

その尋常ではない様子に、ぐぅの音も出なくなるPちゃん。

P「こ、こわいよぅ〜」

たちどころに神妙な面持ちとなり、ヤス先生の手をぎゅっと握り、おとなしくその後あとをついていくのであった。

arashi_Pchan

●この機会に正しく理解しておこう「注意報」と「警告」の違い

はい。ということで、思いっきりすっとこどっこいぶりを披露してしまったPちゃんですが、「平和と安全」がデフォルトな日本です。Pちゃん同様、有事に対するアンテナがだいぶ鈍ってしまっている人は意外と多いのかもしれません。さらに台風や地震が多いので、「○○注意報」などの発令に慣れっこになっているということも理由のひとつなのでしょう。皮肉なものですね。

では、まずはお天気に関する情報から説明していきましょう。天気予報でもよく見かける「波浪注意報」や「大雨警報」などの発表。これらは気象庁が地域ごとの基準値に基づいて発令しています。

注意報

対象となる自然現象は、大雨、洪水、大雪、強風、風雪、波浪(いわゆる高波)、高潮(海面上昇)、濃霧、雷、乾燥、なだれなど全16種類。「今はまだ大丈夫だけど、災害に発展する可能性があるので注意してね」と、注意勧告する意味で発令されています。このときは実際にすぐに動かずに「心の準備をしておく」と理解しておきましょう。

警報

さらに状況が深刻になると「注意報」から「警報」に切り替わります。対象となる自然現象は、大雨、洪水、大雪、暴風、波浪、高潮の7種類。注意報のときは「災害になる可能性」でしたが、警報では「大災害になる可能性がある」と判断した時に、警戒を呼びかけて行う予報です。

特別警報

現代の日本で最強の警報が「特別警報」です。「警報」の発表基準をはるかに超える“数十年に一度の大災害”が起こると予想される場合に発表され、対象地域の住民の方々に対して最大限の警戒を呼びかけるものです。平成25年8月30日から気象庁が開始しました。

対象は、大雨・暴風・高潮・波浪・大雪・暴風雪チームと、地震・津波・噴火チームの2パターンあり、どんな基準で発令されるかは、気象庁のホームページをご覧ください。

特別警報の発表基準について

 

●じゃぁ、避難に関する情報は?

気象庁が発令する各種の警報は、該当する地域住民に「最大限の警戒」を呼びかけても、実際に「逃げてぇ〜」という行動を指示することはできません。では、誰がそれを行なうのかというと、各自治体から発令するのが原則となっています。もちろん発令する基準は設けられており、災害対策基本法に基づいて、地方自治体の長である市町村長の判断を元に発令されます。状況によって3つのレベルが用意されています。

準備情報(逃げろ度:弱)

地域住民に対して「自主避難の呼びかけ」をするもので、文字通り「避難に向けた準備をしておく必要がある」場合に発令されます。

ただし、移動に時間がかかる高齢者や障がい者など、災害時に要援護者がいるご家庭に関しては、この段階で避難を「開始」してください。

避難勧告(逃げろ度:中)

強制力こそありませんが、居住者に立ち退きを勧め促するものです。「避難勧告」が発令された該当地域の住民は、自治体が指定する場所へ速やかに避難してください。特に要援護者(乳幼児・妊婦・高齢者・傷病者・障害者など)や、外国人がいる家庭の場合は、速やかに避難を始めましょう。

もちろん避難所などへの移動に際して危険が伴う場合などには、あえて避難しないという判断も必要になりますが、さらに災害が大きくなると移動不能になることも考えられます。単なる「おススメ」ではなく、できるだけこの段階で移動を開始してください。

避難指示(全力で逃げろ!:最強)

「避難勧告」よりもさらに緊急かつ深刻な状況下で発令されるもので、これが出た時点で「のっぴきならない状況」であることを瞬時に理解し、指定された避難所へ移動をしてください。すでに避難ができる状態でない場合は、自宅のできるだけ安全な所で危険をやり過ごします。

避難勧告同様、避難指示にも強制力がなく罰則規定はありませんが、人命に関わることなので、全力で指示に従ってください。

3つの発令いずれも判断は市町村長が行いますが、被害等により市町村長が行えない場合は都道府県知事が代行します。それも難しい場合は、警察官と海上保安官が避難を指示できるようになっています。

現代はテレビ・ラジオはだけでなく、インターネットから様々なカタチで情報を入手できますが、ポイントは、いつ「実行に移すか」をどこで判断するかです。とかく非常時には認知バイアスが働き、「今回は大丈夫だろう」という根拠の無い安全願望がよぎるものですが、後悔先に立たず。避難した後で「何も無くてよかったね」と思うのと、悠長に構えていて「避難すれば良かった」と思うのとどちらがよいか、平穏な日にこそシュミレーションしておきたいものです。

貴方の判断が、あなたの家族、大事な人の命を守るのですから。

参考までに気象庁の「特別警報」ページにある「気象警報等と、とるべき行動」のリンクを貼っておきます。この機会にぜひご一読されることをおススメしておきます。

気象警報等と、とるべき行動

 

 

 

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