ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2017年8月25日更新シンガポールは「ヤバい」国です

代表の川久保です。アジア地区の責任者が集まる会議があり、7月の4日間シンガポールに出張しました。

最近は日本人が訪ねたい国のベスト5にランクされるほど人気のシンガポール。今までに何度か訪れた同国ですが、何度訪ねても違和感がぬぐえない国です。
行ったことのある方も多いと思いますが、旅行者ではない立場でしか行ったことのない私から見た「妙な」ところをご紹介します。

1. 虫がいない

シンガポールは赤道直下の熱帯にあり、日本のような季節はありません。一年を通して最高気温は30℃近辺。毎日7時に日が昇り、19時に日が暮れます。
熱帯のジャングルをイメージして頂ければお分かりのように、本当ならシンガポールは高温多湿であらゆる虫の天国のはずなのに、私は蚊に刺されたことがありません。それどころか、昼夜を通してハエなど虫自体を見かけませんし、あの「G」も見かけません。香港やタイではそこらじゅうハエや蚊がブンブン飛んでいるのに。

写真は昨年シンガポールへ行った際に夕食を取ったイーストコーストパークウェイ沿いにある有名なシーフードレストラン”Jumbo”ですが、夕暮れ時の海沿いなのに鳥も虫も見当たりません。おかげで、外のテーブルでも快適です。

仕事でしか行かないので公園など緑豊かな環境には行ったことがありませんが、行った人によると公園でもほとんど見ないそうです。これは政府やマンション管理会社が毎週のように殺虫剤をまいて、徹底的に駆除しまくっているからとのこと。蚊は水たまりがあれば繁殖するため、水たまりも作らないよう工事に余念がないという徹底ぶり。

2. カラスもいない

というか、鳥が飛んでいません・・・。虫がいないからカラスもいないのかと思ったら、なんと定期的に射殺しているそうです。特にカラスは、全然料理をせず外食だけのシンガポーリアンの食事を脅かす害鳥として猛烈に嫌われており、毎年何千羽と撃ち落としているそう。
虫もカラスも自然の生き物で、むしろ人間のほうが邪魔者に近いのと思うのですが、住環境のクオリティを上げて、全世界から有能なビジネスパーソンを惹きつけることに血道を上げるシンガポール政府にとっては、トリなんてどうでもいいのでしょう。

3. 何でも管理&制御

交通信号は渋滞に応じて機敏に待ち時間を修正。自動車一台一台にRFIDタグ装備が義務付けられており、都心部への侵入も制限されます。駐車場のゲートもRFID。時間によって細かく料金変更可能であり、実際にきめ細かく運用されています。ドイツなどと同様に、どの駐車場に何台空きがあるかを示す標識も至る所にあり利便性が高いです。

街中にもMRTなどの電車内にも監視カメラだらけ。プライバシーより安全優先、妥協はありません。

4. 日本のモノがたくさん

量販店なら高島屋、伊勢丹、紀伊国屋書店。東急ハンズは3店舗。ファミリーマート、セブンイレブンはそこらじゅう。一風堂、ユニクロ、サイゼリヤ、ココイチ、ペッパーランチ、洋麺屋五右衛門、吉野家、大戸屋、モスバーガー、銀だこ。これら全てがシンガポールに店を持つ企業です。日本の地方都市どころか政令指定都市でさえ東急ハンズがないところもたくさんあるのに・・・。地下鉄であるMRT車両は川重製。正直、外国にいる感じがしないほどです。

一方で、シンガポール人が「親日」かというと、一概にそうとも言い切れません。やはり戦時中に英国軍を追い出して「昭南」として占領したことは、シンガポール人にとっては暗黒の時代として記憶されており、実際に博物館でもそのように展示されています。「憎悪はないが、忘れない」ということだと思います。

5. 病的なまでに清潔

会社のトイレに政府の「手を洗おう」ポスターが必ずあります。やはり赤道直下の熱帯気候ですから、先述の鳥や虫と同様に、衛生管理には人一倍気を使っている印象です。

6. 厳罰国家

ムチ打ち。麻薬即死刑。ポイ捨て禁止。ガムは持ち込みも所持も禁止。鳩に餌やり罰金。公共トイレ流さないと罰金。かけこみ乗車も罰金。ペットの飼い方も規制、違反したら罰金。人から見えるところで裸になるの禁止。ツバ吐き禁止。落書き禁止。選挙の投票しないの禁止。

建国の父であるリー・クアンユーは日経新聞「私の履歴書」で「シンガポールは他国のように数百年に及ぶ文化的生活の蓄積がなく振る舞いは先進国に劣る。そもそも人間は生まれつき性悪だと思っているので、法で律する必要がある」と述べています。建国52年の若い国を短期間で安定化させ、飛躍するために採った方法ですが、結果的に彼の正しさは証明されている、とシンガポール人も皆言います。

「シンガポールでは刑務所に行くのは大変」だと、かつての同僚が言っていました。いわく、「少しの罪でも罰金&厳罰だし、重罪はすぐ死刑。受刑者として服役させるのはコストがかかるため、政府も意図的にそうしているんだ」と。実に合理的です。裁判が正当に行われているならば、ですが。

7. 独裁国家

あまり知られていませんが、シンガポールは建国以来人民行動党(PAP)の一党独裁です。一応選挙はやりますが、多分に海外からの批判かわし目的だと思われ、もし与党が負けそうになると、選挙区分けを変更(ゲリマンダー)して勝つようにしたり、野党が勝った地区には報復するなど、かなり露骨に独裁です。前述の通り投票は権利ではなく義務なので、投票率は9割以上。デモは禁止。治安維持法があり、被疑者は裁判なしで逮捕、拘禁できる。ということは、つまり言論の自由はないということ。ネットも絶賛監視中。例外として、スピーカーズ・コーナーというホン・リム公園内の一角だけ、何を言ってもいいところがあり、政府に対する不満や批判も述べることができるのですが、そこも複数の監視カメラが睨んでいます・・・。なお、スピーカーズ・コーナー自体は元々ロンドンのハイドパークに設けられているもので、現・旧英連邦の国々では一般的。どこで何を叫んでも、少なくとも反政府ネタで連行されることはほとんどない日本から見ると、結構不自由です。

一方で、シンガポール人によれば、政府は市民の声をかなり神経質に聴いているということです。一方通行ではなく、問題があればすぐに対応するスピード感は小回りの利く小国ならではのメリットだと言っていました。公務員の質も高く、一般的な国と比べてもいわゆる「インチキ」や「汚職」は厳しく取り締まられるため、ほとんど見当たらないそうで、市民の不満も少ないとのこと。

 

シンガポールは完全統制を旨とする開発独裁都市国家で、政治的な安定感は抜群、その管理レベルが生む利便性と数々の税制優遇措置を切り札に多くの外資、特に金融企業を誘致してきた結果、「シンガポール株式会社」とも呼ぶべき独特の商売文化を生み出したアジアの雄になりました。有名なマリーナベイ・サンズに代表される多くのカジノや、高いサービスで知られるシンガポール航空などはその代表的成功例です。

淡路島、あるいは東京23区と同じくらいの面積しかありませんが、SmallなのにSmall-mindedでないシンガポール。海上交通の要衝であるマラッカ海峡など地政学的にも重要な位置にあり、徴兵制と強力な近代的軍備で防衛にも怠りはありません。小国ながら世界を相手に渡り合い、付加価値を高めるために日々知恵を絞る姿勢は、日本も見習うところが多いと思います。あらゆることに「やりすぎ」感が漂うのも、そのくらいでないとやっていけない危機感の表れかもしれませんね。

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