ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2017年8月25日更新恩師との再会

先月号の編集後記で予告しましたように、私(杉原)は7月末に故郷高知で故高崎元尚先生の個展を見てきました。高知竜馬空港に降り立った時の感想は「あ つ い]。南国土佐の日差しは本州とは比べ物になりません。気温が同じでもなぜか高知の方が暑く感じます。

会場の高知県立美術館は何度か車で前を通り過ぎたことはありましたが、中に入ったのは今回が初めてでした。「破壊」を中心とする先生の作品や、先生が立体作品制作中の様子を収録したビデオをじっくりと見ることができて、先生の世界に浸ることができました。

今回の個展「破壊 COLLAPSE」で、高崎先生が「破壊」という作品に至った過程も知ることができました。先生が活動の拠点とされていた高知県展の会場が、1970年より別会場に移されたばかりか、立体作品は野外に押し出され、大変冷遇された結果、多くの作家が志気をくじかれました。そのとき先生は「一か八か、生き延びる道はこれしかないと断念して、ハンマーを振るって、目的のない土木作業を始めていた」そうです。先生と同世代である三島由紀夫の衝撃的な自決からインスピレーションを受け、「自分を壊すかわりに物を壊し、これを作品とする」ことにしたそうです。正に逆境から生まれた芸術だったのですね。

今回の個展は写真撮影自由だったので、写真をたくさん撮って来ました。ビデオの写真も撮り続けたので、終わる頃には腕が痛くなりました。

今回の「破壊」シリーズの作品の中に、鑑賞者が作品の上を自由に歩いてよい作品がありました。ハンマーで無秩序に砕かれたコンクリートブロックが、長方形の床に秩序正しく敷き詰められ、その上を歩くことが許されているのです。鑑賞者も作品の一部ということでしょうか。そして、コンクリートブロックが敷き詰められた床の全景を階段を上った高い位置からも見渡せるようになっており、見る場所によって姿を変える作品となっていました。

9月頃、今回の個展の図録が発売されるそうで、地元の書店に通信販売の予約をしてきました。現場で撮影をしているプロのカメラマンらしき人がいたので、もしかしたら私も映っているかもしれません。おそらくカットされるとは思いますが。

1979年、ハンマーを振るい製作中の高崎元尚

作品を撮影中のカメラマン

高い位置から作品を眺めるための階段

作品の上を歩行中

音大時代にジョン・ケージ(アメリカの実験音楽家)などの実験音楽を勉強しましたが、そのとき、音楽と美術の深いつながりを知りました。上記の先生の作品は60年代のハプニングやフルクサスなどの芸術にも関連があるように思います。当時使用していた教科書でオノ・ヨーコさんなどの日本人がこれらの活動に参加していることを知り、びっくりしました。

高崎先生が所属されていた「具体美術協会」も、大まかに言うと固定観念から脱却し、新しいものを生み出す、という意味では同じ路線だと思います。「具体美術協会」は欧米人が日本の芸術から影響を受けると「インスピレーションを受けた」と言われるのに、日本人が欧米の芸術の影響を受けると模倣(モノマネ)と言われる不公平な当時の風潮に逆らうべく、日本から新しい芸術を世界に発信しよう、と言う崇高な精神で前衛作家が結集したグループです。この当時の先生の代表作「装置」はニューヨークのグッゲンハイム美術館に展示されています。

先生の作品を目で見て、また自らがその作品の一部となってみて感じたこと、それは、これこそが先生が一生をかけて作り上げたかった世界ではないか、ということです。どれも見た目が同じコンクリートブロックをハンマーで壊して、それぞれを2つと同じもののないユニークなピースとし、その1つ1つを秩序ある空間に収めて美しい調和を生み出す。その景色を見ず知らずの人がいろいろな角度から眺め、また空間を共有して一体となる。

先生は母校でも生徒に「好きなことをやりなさい。」と教えていらっしゃいました。人が自分らしく生きられる世界、違いを乗り越えて互いに認め合い、共存できる、そんな理想の世界の象徴として、この作品を作られたのではないでしょうか。素人の私の勝手な解釈ですが、私にはそのように思えました。そして、一生現役で作品を作り続けた先生を心より敬愛します。

じっくりと作品を堪能した後、美術館のショップで先生の昨年の回顧展「誰もやらないことをやる」の図録や「具体美術協会」の本なども手に入れ、本当に充実した昼下がりでした。そして、もちろん、夜は高校の同級生と居酒屋で女子会です。お店閉店近くまで、尽きないよもやま話に花が咲きました。

2日目は別の同級生と高崎先生に出会った母校を訪れ、高校時代時々通ったジャズ喫茶「木馬」にも行きました。「木馬」は見た目どおり昭和のジャズ喫茶です。2階には小さなステージがあり、高崎先生の息子さん高崎元宏さんが、毎月第3土曜日にレギュラーでピアニストとして出演されているそうです。また1つ楽しみが増えました。いつになるかわかりませんが、ぜひまたライブのレポートさせていただきます。

土佐名物、カツオのたたき(地元の人はたっぷりの
ネギとニンニクが必須。観光客向け?)

ジャズ喫茶「木馬」

「木馬」店内

「木馬」2Fステージ

 

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