ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2020年3月16日更新はさまれ・巻き込まれ事故のその後

 2018年に、当時、製造業で最も死亡災害発生件数の多かった「はさまれ・巻き込まれ事故」の特集記事を連載しました。あれから2年、状況はどのように変わったのでしょうか。厚生労働省の「職場の安全サイト」で1月中旬に発表になった災害発生状況のデータを確認したところ、残念な結果に愕然としました。製造業における昨年(平成31年1月1日~令和元年12月31日まで)の死亡災害件数は125件で、一昨年(平成30年1月1日~同年12月31日)の162件に比べ、全体で22.8%も減少しているのに、はさまれ・巻き込まれ事故による死亡災害は48件も発生し、前年比6件増えていたのです。これに対し、製造業の死亡災害原因の第二位である墜落・転落事故は、前年度の29件から11件も減り、18件まで減少しています。その他のどのカテゴリーもほとんど前年度より減っているのに、はさまれ・巻き込まれ事故は減るどころか増えて、相変わらず死亡災害原因の第一位を他を圧倒する数字でキープしています。

 昨年度、はさまれ・まきこまれによる死亡事故はどのような状況で発生したのでしょうか。労働局の発行している資料で関東で発生した事故事例を調べてみました。埼玉県の紙加工工場では、2月に不良品段ボールの切れ端をシュレッダーで裁断していた作業者が、機械の歯車に手から頭部を巻き込まれました。茨城県の冷凍加工工場では、5月に外国人労働者がパレットを自動で積み上げる機械の電源を切らずに清掃作業していたところ、急に機械が動き出し、頭部をはさまれました。同じく茨城県で同月、パンを焼き上げる機械の清掃をしていた作業者が、安全装置を切った状態でトレーの清掃をしていたところ、別の作業者が機械を稼働させたため、頭部を挟まれました。東京都では、8月に機械修理工の男性がコンベアに詰まったものを除去しようとしていたところ、コンベアに胸部を挟まれました。同じく東京都で、12月にフライス盤の金属部品を調整していたところ、回転中の切削刃の取り付け箇所に身体が接触し巻き込まれました。

 これらの事例は全体のごく一部であり、全容を示すものではありませんが、事故はやはり以前から指摘されているような原因で発生していることがわかります。機械の調整や清掃などの非定常作業中に事故は多発しています。電源を切らずに行う作業、安全装置が取り付けられていない、あるいは無効化された状態での作業でも発生しています。このような危険とわかっている作業で死亡事故が減らないのは、大変残念です。このような事故を機械の設計段階で防止する方策については、以前の記事で①安全柵などによる人と機械の隔離、②インターロック機能によって安全が確保できない場合、機械を止める、また③速度監視装置によって、機械を安全な速度で運転するという方法を紹介しました。今お読みいただいている「そうだ!ピルツに相談だ!」コーナーで紹介されていますので、これらの安全対策について知りたい方は過去の記事をお読みください。

 はさまれ・巻き込まれ自己防止に効果的なもう1つの対策として、ロックアウト・タグアウトがあります。清掃やメンテナンスなどの作業のため、機械を止めて作業している場合、中に人がいるのを知らずに他の作業者が機械の電源を入れて事故が発生した事例がありました。ロックアウト・タグアウトを導入すれば、このような事故は防げます。専用の鍵を持っている作業者本人でなければ機械の電源を入れることができず、タグをつけることで、誰が見ても中で作業者が作業中であることがわかります。アメリカや欧州では広く使用されている安全対策です。日本でも今後普及して、このような悲惨な事故がなくなることを望みます。

 人は危険な機械での作業に慣れてしまうと、事故は他人事で自分は大丈夫、と言う根拠のない自信を持ち、不安全な行動をしてしまいがちです。可能な限りの安全対策を施しても、作業者が安全装置を故意に無効化して作業を行えば、何の意味もありません。安全対策と同時に、不安全行動を行わないための意識改革を行っていく必要もあるでしょう。はさまれ・巻き込まれ事故が減らない現状から目をそらさず、事業者や労働安全衛生に携わる方、またこれらの作業に携わるすべての作業者が、これを機に基本に立ち返り、安全第一で作業を行える環境を整えていただければ幸いです。

ロックアウト・タグアウト

 

記事一覧

ページの先頭へ戻る