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2016年8月15日更新ニューアプローチ指令って何ですか?

EU内で製品の販売をする際に必要なCEマーキングには”ニューアプローチ指令”というものが関わるそうですが、それはどういったものですか?

また、同様によく出てくるEC指令の仲間でしょうか?

 

ニューアプローチ指令とは、EU加盟国間の貿易における障害を無くし、EUの”一つの市場”を促進させるために、1985年より新しい手法にて導入されたEC指令の総称です。

 
過去のCEマーキングに関する記事では、「EC指令」と一括りにしておりましたが、その中はタイプの異なる指令に分けられまして、そのうちの一つがニューアプローチ指令です。

ニューアプローチ指令には原則、”必須健康安全要求事項(Essential Health and Safety Requirements)”(※以下、「必須要求事項」)という、消費者の健康と安全そして環境保全のための要求事項が定められています。

この必須要求事項に適合した製品には、最終的にCEマーキングが表示され、EU内での自由な流通と消費者の安全が保証されます。

ニューアプローチ指令には技術的な詳細が含まれていないため、製品の規格には、欧州委員会(EC = European Commission)より命じられて欧州標準化委員会(ESO = European Standards Organization → CEN・CENELEC・ETSI)が発行するEN規格がよく用いられます。

では、その他のタイプのEC指令は? といいますと、ニューアプローチが導入される前の指令、「オールドアプローチ指令」と呼ばれる指令です。

 

オールドアプローチ指令では貿易手続きや法整備が大変

ここで歴史的背景を少々・・・

ニューアプローチ指令が導入されたのは1985年。それ以前の欧州では欧州委員会が各国の法律や規格を統一するよりも先に、それぞれの国での法律や規格の導入が進んでしまい、統一が追いつきませんでした。結果、国によって異なる規格や規制が存在し、そのため許認可手続きが煩雑になって流通の妨げとなってしまっていたのです。

しかも、オールドアプローチ指令では製品ごと(例えば、自動車、化粧品、薬剤、など)に基準が定められおり、それに伴う技術的な詳細(技術基準)も事細かく示されていました。指令は法律ですので、そこに書かれている細かな基準に従い製品をその仕様にしなければなりません。このやり方では欧州内での統一に時間もかかり、また、手法が規定されているため製造側の自由は少なく、新しい技術の発展を妨げてしまう等の恐れも…。

そこで、1985年にニューアプローチ指令が登場します。
世の中に存在する数多くの製品を大きな製品郡に(例えば、機械、建造物、電気製品、医療機器といった分野別に)分けて、それぞれでの安全基準を設け、許認可手続きを簡素化させ、欧州内の市場統一とスムーズな流通を実現させました。先に述べた、製品を市場に出すための必須要求事項がそこには掲げれらていますが、具体的な技術基準の記載はありません。この点がオールドアプローチ指令と大きく異なります。

しかも、ニューアプローチ指令では、指令が求める必須要求事項を満たしていれば、どのような技術(テクノロジー)を使っても良いですし、その際にはESOが発行するEN規格を必ずしも使わなくて良いのです。製造メーカ自身で製品が必須要求事項に適合していること証明できれば良し、とのこと。製造メーカ側にかなりの柔軟性を与えているという点もニューアプローチ指令の大きな特徴です。

 
ちなみに、ESOが発行するEN規格は、整合規格とも呼ばれ、この規格を満たせばニューアプローチ指令に適合していると見なされるように作られていますので、つまりは、EN規格を用いてニューアプローチ指令の必須要求項目事項に適合 → CEマーキング表示 → EU内での自由流通が可能、ということで、EN規格はCEマーキング表示への近道だ!とも言えます。

 

すべての製品がニューアプローチ指令でカバーされるわけではありません

ところで、「オールドアプローチ指令」でカバーされる製品もあります。
自動車や食品、化粧品といった一部の分野では、現在もオールドアプローチ指令が使用されているのですが、これは、ニューアプローチ手法を導入しようとした頃には既にオールドアプローチによる立法や技術詳細などが国際的に浸透してしまっていた、もしくは同意されていたため、欧州側で一方的に変更することが出来なかったからだそうです。

またその他の、それら特定の法令が存在しない分野においては「GPSD(一般商品安全指令)」という指令が、製品の安全や品質を定めています。

各指令を比較すると・・・

EC指令のタイプ1

 

製品によっては一つ以上の指令が関係してくることも有り得ます。例えば、とある機械設備の定電圧部分に対しては低電圧指令が、機械的な部分に関しては機械指令が、というような具合です。

CEマーキング表示に関わるニューアプローチ指令。どのニューアプローチ指令の適用を受けるのか、それは製品によって異なるため、事前に調査・確認することが大事になります

ニューアプローチ指令の一覧は「欧州標準化委員会(ESO)」「欧州委員会(EC)」「欧州自由貿易連合(EFTA)」の共同運用サイトであるこちらのページからご確認いただけます。(英文のみ)

 
もともとやり方・技術・法律の異なる国同士が一つの共通の市場で自由な商売が行えるように、ニューアプローチ指令とEN規格は大きく貢献してきました。CEマーキングが表示された製品は、いまや6億人・33ヶ国が参加する市場で自由に流通できるのです。

 
尚、今回このニューアプローチ指令についての記事を書くにあたり、再度調べましたところ、EC指令の必須要求事項への適合に必ずしも「EN規格」を使用しなければならないわけではないことが分かりました。よって、「EN規格って何ですか?」「CEマーキングを表示させるために必要なこととは?」の記事の一部を訂正いたしました。

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