ピルツジャパンのブログ「裏ピルツ新聞」

2019年3月26日更新オーディオ

 どうも、アラフィフおやじです。

 今日は「オーディオ」について書きたいと思います。

 

 アラフィフ世代にとって、オーディオという言葉は、どこか重厚なイメージがあります。毛足の長い絨毯が敷き詰められ、重厚な革のソファが置いてある居間の中に、エラそうにデーンと鎮座しているイメージ。PCやスマホに入った音源をアンプ内蔵スピーカーで聴くことがフツーになった昨今では、所謂「オーディオ」という言葉の持つイメージは、もう少しライトな感じになりつつあるんでしょうね。

 アラフィフおやじにとって初めての「本格オーディオ体験」は高校1年の時に父親に買ってもらったミニコンポでした。テクニクス製で、レコードプレーヤーとAM/FMラジオチューナー、アンプ、ダブルカセットデッキ、スピーカーがセットになった「コンサイスサラウンド」という機種でした(図1)。よくこのコンポでFMをエアチェック(懐かしい…)し、レコードレンタル店の「友&愛」(これも懐かしい…)で借りたレコードから好きな曲をテープにダビングして「My Favorite Songs」的なものをちょくちょく作っていたような気がします。カセットテープケースの背面のタイトルをわざわざレタリングシール(もはや死語)を使って綺麗に仕上げたり…きっと、たっぷり時間があったんでしょうね…。

図1.テクニクス「コンサイスサラウンド」

 アラフィフおやじが社会人になって最初の数年はそのミニコンポを使って音楽を聴いていたのですが…場所を取るので結婚したのをきっかけに捨ててしまい、しばらくはまともなオーディオが無い状態が続きました。しかし、やはりいい音で音楽を聴きたい!ということで、10年ほど前、アラフォー時代のアラフィフおやじは一念発起してちゃんとしたオーディオをそろえることにしました。

 一念発起したのはいいですが、当時のアラフィフおやじはオーディオに関する知識がほとんど無かったため、とにかくオーディオショップに行っていろんな機種を聞かせてもらうところから始めました。ヨドバシカメラやビックカメラなどの一般的な家電量販店のオーディオコーナーから、オーディオしか扱っていないディープな専門店まで…行ける範囲のお店は片っ端から覗いてみて、気になる機種を見つけては視聴させてもらうという行為を繰り返していました。すると、なんとなくですが、メーカー毎の音の傾向や、メーカー同士の相性、自分が好む音の傾向みたいなモノが分かってくるようになりました。

 オーディオは一般的に、音源の再生をする「CDプレーヤー」または「レコードプレーヤー」、その再生音を増幅する「アンプ」、増幅した音を人間の耳に届ける「スピーカー」の3つから構成されていますが、アラフィフおやじが最初に購入を決めたのは「スピーカー」でした。

 スピーカーとの出会いはオーディオショップ巡りを始めてすぐの時でした。ある家電量販店のオーディオコーナーで店員におすすめのスピーカーは無いか聞いたところ「是非聞かせたいスピーカーがある」ということで聴かせてもらったのですが…しっとりとした高音、タイトに締まった低音が素晴らしく、一発で気に入ってしまいました。沢山スピーカーが並んでいるコーナーで聴いたので最初はどのスピーカーが鳴っているのか正直分かりませんでしたが、店員さんが指さした先にあったのは…なんと、掌に乗るぐらいの小さな小さなスピーカー(図2)。店員さんによると「PIEGA(ピエガ)」というスイス製のブランドの「TS-3」という人気モデルとのこと。PIEGAは主にクラシックを聴く方に好まれるブランドとのことでしたが、TS-3は意外にもJAZZもロックも違和感なく再生してくれるオールラウンドなスピーカーでした。感心しながら聴いているアラフィフおやじに、定員さんは「実はこのスピーカー、私も家で使っているんです」とニコニコしながら教えてくれました。

図2.PIEGAスピーカー TS-3

 その後いくつかのお店で沢山のスピーカーを視聴しましたが、TS-3のような魅力的な音を奏でるスピーカーにはなかなか出会えませんでした。もちろん、予算や大きさを度外視すればいくらでも他に候補はあると思うのですが…スピーカーにあまり場所を取られたくなかったので、スピーカーはこのTS-3に決めました。

 次にアンプですが…TS-3を薦めてくれた店員さんによると「スピーカーにつぎ込む予算の倍以上をアンプにかけた方が良い」とのことでした。つまり、スピーカーの持っている能力をフルに引き出すには「贅沢にアンプをおごってやる」ことが大事であると。TS-3を視聴させてもらった時も、安いアンプと高いアンプの両方で音を比較させてもらったのですが、やはり高いアンプだと音のリアリティが全く違い、音離れ(スピーカーの周りに音がまとわりつかず、スピーカーの間の空中から音が聞こえるような状態)も良くなります。

 TS-3の音の特徴を一言で言うのであれば「密度が高く、湿度感のある音」という感じでしょうか。決してバリバリの高解像度というワケではないのですが、音楽的で品のある音をしっとりと奏でてくれるスピーカーなので、アンプもそのキャラクターにあったもの、ということで、いろいろと聴き比べた結果、日本製の「Accuphase(アキュフェーズ)」というブランドの「E-450」というアンプを購入することにしました。ワンランク下にE-350というモデルもあって、それでも十分かと思ったのですが、同じ音源でTS-3と組み合わせて視聴するとE-450との解像度の差は歴然でした。TS-3と同様しっとりとした音のキャラクターなので、相性は抜群でした。なお、スピーカーとアンプにそこそこ予算をつぎ込んでしまったため、CDプレーヤーを買うのはあきらめ、元々持っていた古いSONYのCDプレーヤーをそのまま使うこととしました。

 アンプ購入後、家でスピーカーとアンプ、CDプレーヤーを結線して音を出してみたところ…今までと全く違う異次元の音の良さに感動しました。何よりも音を聴いていて気持ちよく、以前購入したCDを片っ端から聴いて悦に入っていました。

 しかし、音に慣れてくるといろいろなところが気になり始めました。まず、スピーカーのセッティングです。家具の上に直置きしていたのですが、どうも低音がぼわついているように感じたので、スピーカー用の木製ブロックを敷いたり、その下にソルボセイン(ゴム製の振動吸収材)を敷いたり、さらに位置や向きを調整することで何とかそれらを解消することができました。

 また、オーディオ雑誌を紐解くと、アンプとスピーカーをつなぐケーブルやCDプレーヤーとアンプをつなぐケーブルを変えると音が劇的に変わると書いてありました。雑誌やネットで調べてみると、いろいろな種類のケーブルがあり、値段も数百円から数百万円(!)とピンキリです。そこで、1万円程度の常識的な(でも普通に考えると結構高い)価格のケーブルを購入して既存の数百円のケーブルと交換してみたところ…確かに音が変わりました。説明しにくいのですが、今までうっすらとかぶっていたベールが一皮むけた感じで、高音、低音ともに弾力がある元気な音になった印象です。

 この辺でやめとけばよかったのですが、このほかにもCDプレーヤーをオーディオラックの振動から守るチタン製のインシュレーターを購入したり、低音がいまいち物足りなくなったのでサブウーファー(低音の不足を補う専用スピーカー)を買ったり、CDプレーヤーの静電気を除去して音質を向上するという怪しげなハケを買ったり…自分でも半ばあきれながらオーディオの怪しげな世界を楽しんでいました。効果があるか無いかは別として、半分は自分で「ここまでやったんだから」と納得するためにやっていたのかもしれません。

 しかしある日、余計な事に気づいてしまったというか、気になりだしたというか…「この古いCDプレーヤーを変えたらもっと良くなるのではないか」という思いが頭の中をぐるぐる回転し始めたのです。当時使っていたのは、10ン年以上前に買った、そんなに高くないCDプレーヤーですので、最新のプレーヤーに交換すればそれなりに効果はあるハズ…そこで、今度はCDプレーヤーを探すためにまたオーディオショップ巡りをすることになりました。

 最新のCDプレーヤーは電子回路や回転部品の技術革新で、どれもアラフィフおやじのCDプレーヤーとは比べ物にならないほど密度が高い音がするのですが…良く聞き比べてみるとやはりメーカー毎に個性がありました。あるオーディオショップで、自宅と全く同じスピーカーとアンプをセッティングしてもらい、いろんなメーカーのCDプレーヤーをとっかえひっかえして比較させてもらいました。音の傾向が気に入ったのは「マランツ」というブランドのCDプレーヤーだったので、マランツのCDプレーヤーを安い機種から順に聞かせてもらいました。すると、機種が変わるたびにどんどん音のレベルが向上し、正直最初は10万円代のモノを購入する予定だったのですが…最終的には当初予算の3倍以上の30万円超の機種を購入するハメになってしまいました。仮にもしこのまま視聴を続け、50万円超のプレーヤーを聴いていたらと思うとゾッとします。オーディオ機器を購入するときは、下から順に聞いて、それなりに納得できたところでストップをかける勇気(?)を持たないとなりません。一度上位機種の音を聴いたら最後、下位の機種を買って帰るのは相当にツライと思うので…。

 マランツのCD/SACDプレーヤー(SA-11S2)は、すでに購入済みのアンプ(E-450)やスピーカー(TS-3)との相性も良く、艶やかで密度の高い音がしました(図3)。特に生ギターの弦と指がこすれる「キュッ」という音や、ウッドベースの弦が指盤に当たる「バチッ」という音のリアリティが素晴らしく、アコースティックなジャズを聴くのがとても楽しくなります。購入時は高いと感じましたが、部屋で音楽を聴いている時間が長くなるとその分外に出かけて無駄にお金を使うことも無くなる(?)し…20~30年使うことを考えれば十分に元が取れるように思います。 

図3.Accuphase E-450(下段)とマランツ SA-11S2(上段)

 

 アラフィフおやじの知り合いには、オーディオにそれこそ高級外車以上のお金をかけているリッチなオジサマもいますが、当然フツーのサラリーマンであるアラフィフおやじはそこまでお金をかけることができません。ホンモノのオーディオマニアから言わせればアラフィフおやじのオーディオセットはエントリーレベルかもしれませんが、アラフィフおやじにとっては聴いていて「心地よい」と思えるようなオーディオセットをそろえることで、音楽を聴くのが楽しくなり、音楽にきちんと向き合おうという気持ちになれたことが大きな収穫であったように思います。

 何千・何万曲も保存できるPCやスマホ、Bluetoothでつながるアンプ内蔵の高性能小型スピーカー等で気軽に音楽を楽しんでいる若者世代から見ると、大きくて場所を取るオーディオセットは前時代的なのかもしれません。アラフィフおやじのようにメカメカしさにもグッときちゃう世代にとっては隔世の感があります。音楽との付き合い方も、テクノロジーの進化によって徐々に変化してゆくのでしょうが、「いいお音楽をいい音で聴く」ことに積極的に関われる部分というか…あーでもないこーでもないと試行錯誤する余地もどっかに残しておいてもらえるといいなぁ。

 以前こちらのコラムでも紹介させていただいた、一関のジャズ喫茶ベイシーのマスター、菅原正二さんの書かれた「聴く鏡」というエッセイ集には、こんな一節がありました。

「…趣味は面倒なものに限る。面倒は楽しみを持続させ、楽はアクビを誘うだけだからである。」

 さすが面倒なオーディオの世界を極めた男。けだし名言ですね。

 アラフィフおやじも、趣味とそんな付き合い方ができればいいな、と思います。

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