ピルツジャパンのブログ「裏ピルツ新聞」

2021年9月15日更新スーパーツイーター

どうも~アラフィフおやじです。

 

今日は、オーディオに関する話です。

皆さんは「スーパーツイーター」という製品をご存知でしょうか。

 

 自宅にホームシアターを作ったり、テレビにサラウンドスピーカーを加えたりして映画のDVDなどを見たことのある方であれば「スーパーウーファー」(和製英語。近年ではサブウーファーと呼ぶらしい)という製品はご存知かと思います。

 通常のスピーカーは、おおよそ人間の可聴周波数帯域である20Hz~20kHz付近をカバーするように設計されています。ただ、例えばフルレンジのように、1つのスピーカーユニットで全帯域をカバーするスピーカーの場合、これらの帯域全域にわたってフラットな音響特性を持たせることはなかなか困難で、特に口径の小さなスピーカーの場合、大体100Hzくらいから下の帯域については特性が悪くなってきて、低音に行くにつれダラダラとレベルが低下していってしまうというのが実態です。2ウェイや3ウェイのスピーカーであれば帯域毎に使用するスピーカーユニットが変わるので多少条件は良くなってくるものの…普通のスピーカーであれば大体似たような傾向になると思います。

 実はバスドラムの「ドスっ」という音や、ベースの最低音の「ドゥーン」という音は、100Hzあたりの音がしっかりとしていればそれなりの低音として感じる事が出来ます。なので、通常のロックやポップスをBGM的に楽しむのであればこれでも十分なのですが、アクション映画での爆発シーンの地響きや、フルオーケストラのティンパニやグランカッサのような下腹に「ズシン」と響く超低音を味わう事は困難です。そこで、100Hz付近から下の帯域をカバーする目的で前述した「サブウーファー」が登場するのです。低音「だけ」をしっかり出すためにサブウーファーの口径は大きく、耳を近づけてもモコモコとした低音しか聞こえません。ただ、本体のスピーカーと一緒にサブウーファーを鳴らすと、トータルとして超低音から高音までフラットなイイ感じの音になるのです。

 ここまで書くと、皆さん当然のごとく「超高音の方はどうなのか」という話が気になるのではないかと思います。一般的なオーディオ用のスピーカーは高音の方に関してはおおよそ20kHz付近までカバーしているケースが多く、特に高音専用の「ツイーター」という小口径のユニットを使っているスピーカーであれば20kHzまではしっかりとフラットな特性を持たせる事が可能です。そもそもCDというメディアそのものが、サンプリング周波数が44.1kHz、量子化bit数が16bitですので、可聴周波数は20kHz付近までしか想定していないという事になります(昔勉強した「標本化定理」によると、原音の最高周波数の2倍以上の周波数でサンプリングした標本は原音を再現できるとあります。逆に言うと、サンプリング周波数の半分の周波数、22.05kHzがCDの最高周波数としての限界となります)。

 ところが近年、「ハイレゾ音源」と言われる、従来のCDのスペックである44.1kHz/16bitをはるかに超えた、まさに「High-Resolution(高分解音質・高解像度音質)」な音源が登場し、対応したPCやスマホ、デジタルオーディオプレーヤー等で聴くことができるようになりました。最近では比較的安価なハイレゾ対応製品が出てきたこともあり、ハイレゾ音源の裾野がどんどん広がりつつあることを実感しています。

 ちなみに(社)日本オーディオ協会が発表している「ハイレゾ」の定義は以下の通りです。

 

<アナログ系>

 (1)録音マイクの高域周波数性能:40kHz以上が再生可能であること。

 (2)アンプ高域再生性能:40kHz以上が再生可能であること。

 (3)スピーカー・ヘッドホン高域再生性能:40kHz以上が再生可能であること。

 <デジタル系>

 (1)録音フォーマット:FLACもしくはWAV 96kHz/24bit以上が可能であること。

 (2)入出力I/F:96kHz/24bit以上が可能であること。

 (3)ファイル再生:FLAC/WAV 96kHz/24bit以上に対応可能であること(レコーダーはFLAC/WAVどちらかのみで可)

 (4)信号処理:96kHz/24bit以上の信号処理性能が可能であること。

 (5)デジタル・アナログ変換:96kHz/24bit以上の信号処理性能が可能であること。

 

 …うーん「よく分からん」、という方もいらっしゃると思いますが、簡単に言うと、可聴周波数である20kHzを大きく超えた40kHzにまで対応した音源、という事になります。

 ちなみに以前こちらのコラムでも触れた「アナログレコード」も、ハイテクとは程遠いイメージがありますが、CD以上に高音質です。そもそもデジタル音源のように「サンプリング」などする必要すらないので、周波数の上限の制約は実質ありませんが、実質10kHz~70kHzぐらいの帯域であれば再生可能なようで、なにげにアナログレコードが一番「ハイレゾ」な音源であるようです(もちろん再生機器の実力に依存しますが…)。

 …と、長々とここまで話をしてきましたが、この辺までくると冒頭触れた「スーパーツイーター」の必要性について、説明せずともご理解いただけるのではないかと思います。スーパーツイーターとは、ハイレゾ音源やアナログ音源の20kHzを超える(人間の耳で直接聞くことができない)周波数帯をカバーするツイーター、という事になります。

 そもそも人間の耳に聴こえない20kHz以上の音を頑張って出す意味は?と誰もが疑問を持つのではないかと思います。もちろん20kHz以上のサイン波を出しても人間の耳には聴こえないし、何の意味もないのですが…これが楽器やヒトの声となると話は変わってくるようです。

 楽器や人間の声には「倍音」と呼ばれる、本来出したい音以外の成分が多く含まれています。例えば、ギターの5弦、「ラ」の音は440kHzなのですが、サイン波のような綺麗な波形にはならず、様々な周波数を含んだ複雑な波形になっています。そしてこの複雑な形をした波形こそが、その楽器固有の「音色」になります。例えば、アコースティックギターで前述の「ラ」の音を出すと、440kHzに加えてその2倍、3倍、4倍…と言った「整数倍」の倍音が山のように含まれ、可聴周波数を超える周波数帯域までその倍音は続きます。そして、可聴周波数を超える周波数も含めた全帯域を体に浴びた結果、我々は「あ、アコギの音だな」と認識するのです。

 CDでは、20kHz以上の音は無条件にカットされてしまうのですが、その加工を施すと倍音を含んだアコギの波形そのものが微妙に変わってしまい、その変化は不思議なことに、(耳の良い)人間には分かってしまうのです。つまり、可聴周波数帯を超える音も、元の音と一緒に「倍音」として発せられた場合、「可聴周波数帯域」の音に何かしらの影響を与えているという事になろうかと思います。ネットを見ると、スーパーツイーターを既存のスピーカーに加えたら「超高音の伸びが良くなった」という意見に加え、「ベース等の低音楽器の音の伸びも良くなった」という意見が良く見られます。ちょっとオカルト的ですが、超高音域の音が加わったことで、可聴周波数帯域に何かしらの影響を与えているのでしょう。

 オーディオの世界は、電気工学や物理学と言った古典的な理論で説明できる「ハズ」なのですが、「ケーブルの種類を変えたら音が良くなった」「スピーカーの足のゴム(インシュレータ)の素材を変えたら音が良くなった」などの「ほんまかいな」と思うようなことが普通に起こる世界です。

 アラフィフおやじも、スピーカーケーブルや、インシュレーターについてはとっかえひっかえしながら試してみた結果、確かに「ほんまかいな」と思うような変化が音に生じる経験をしています。多少のプラシーボ効果については否定しないものの、ブラインドチェックをしても分かるぐらいの音の差が生じるので、この辺は「オカルト」ではなく、何らかの科学的な説明ができる「電気的・物理的現象」の一つではないかと思います。ただ、音に影響を与えているファクターが多すぎて簡単に説明がしにくいということではないかと思います。

 アラフィフおやじが現在使用しているオーディオは、ひとつずつ単品で揃えていったのですが、システムを構築してしばらく経ったらスピーカーの低音域に物足りなさを感じるようになってしまいました。その後サブウーファーを追加購入したので、低音側についてはそこそこ満足していたハズのですが…最近アナログプレーヤーを新調したのをきっかけに、高音側の方も気になるようになってきたのです。

 ネットで色々と調べてみたところ、比較的リーズナブルで評価も高いスーパーツイーター(図1)を見つけることができました。正直効果がほんとにあるのかどうか疑問でしたが、最近は新型コロナの関係で飲み会も激減しており、お小遣いで買える範囲だったので…数週間悩んだ末購入してしまいました。

図1. スーパーツイーター

 購入したスーパーツイーターは、プラスチックの筐体で割と軽く、そんなに高級感もありませんが、一応しっかりとした製品のようでした。セッティングは既存のスピーカーに伸びているケーブルからスピーカー端子のところでパラレル(並列)に分岐させ接続するだけなので非常に簡単です。たまたま持っていたBelden(8460)のスピーカーケーブルをニッパで切断し、スピーカー端子にバナナプラグをつなぎ込んで接続してみました(図2)が…当然のことながらスーパーツイーターからは特に何も聞こえてきません。主に20kHzより上を主に受け持つスピーカーなので、そこからバンバン音が出てきたらそりゃおかしいですよね…。

図2. スピーカーに接続したスーパーツイーター

 その後、いろんな音源を片っ端から再生して視聴してみましたが…非常に微妙ではありますが「音の変化」に気づくようになりました。高音成分が増えたとか、分かり易い変化ではなく、イメージ的に言うと「本物感」が増したというか…例えばパーカッションやギター、シンバルなどが「そこにあるような感じ」で聴こえるようになった、という感じでしょうか。

 ちなみに先日、YouTubeで「モスキート音(超高音のサイン波)」を再生して自分の耳の可聴周波数帯域を確認してみたところ、私の耳の限界は16kHz当たりのようでした。超高音域が気になる割には、自分の耳が「そんなにハイレゾじゃない」という事実にショックを受けましたが…そういう意味でも、スーパーツイーターを設置して、それなりに効果を感じているということは、思ったよりスーパーツイーターが影響を与える帯域は広い、という事なんだろうと思います。

 なお、スーパーツイーターを追加したおかげで、より楽しくオーディオライフを満喫できるようになったのですが、逆に気になるようになったのは「録音の良し悪し」です。いくらスーパーツイーターでも、元々は録音されていない音は再生しようがないので、超高音域成分があまり入っていない音源と、きちんと入っている音源だと、これまで以上に音質の差が広がってしまうという事です。まあ、これはしょうがない副作用ですが…。

 オーディオの楽しみ方は様々で、以前こちらのコラムでも紹介させていただいた真空管アンプの達人、佐久間さんのように古いスピーカーと真空管アンプで「ナローレンジ」の再生をあえて楽しむというやり方もあれば、超ハイファイな最新の機器をそろえてリアルな再生音を楽しむというやり方もあります。どれが正解ということはありませんが、最終的な「到達点」にたどり着くまでの間、色々と試行錯誤を繰り返す中で、自分の好みの音を見つけていく、という「過程」を楽しんでいるのだと思えば、無駄な出費や余計な事に手を出して失敗する等の経験も愛おしく感じられるのではないでしょうか。

 ちなみにアラフィフオヤジは、スマホの音源をBluetooth受信機経由でオーディオセットのアンプに繋ぎ、スピーカーから再生して楽しんでいるのですが、今回スーパーツイーターを購入したことで音質がアップしたのをキッカケに、Bluetooth受信機の音質が気になるようになってしまいました。…で、最近は音質に定評のあるBluetooth受信機をいくつか物色しているのですが、おそらくこの原稿が掲載される頃には間違いなく購入しているのではないかと思います。

 コロナで出費が減った分、オーディオがらみの(無駄な?)出費が続きそうです…。

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