ピルツジャパンのブログ「裏ピルツ新聞」

2018年11月19日更新ギターのメンテナンスについて(その2)

 ども、アラフィフおやじです。

 今日も、先月に引き続きギターのメンテナンスについてお話をしようと思います。

 先月は主に「湿気」や「乾燥」に起因したギターのトラブル事例を取り上げ、湿度管理の重要性について触れましたので、今月はギターのメンテナンスに関する「その他の視点」ついていくつか取り上げ、お話をさせていただきたいと思います。

【弦のメンテナンス】

 ギターという楽器の中で、唯一の消耗品である弦。アラフィフおやじが使用している弦は以下の5種類に大別されます。

 (1) エレキギター弦(スチール)

 (2) アコースティックギター弦(スチール)

 (3) アコースティックギター弦(ナイロン)

 (4) エレキギター弦(フラットワウンド:スチール)

 (5) アコースティックギター弦(ジプシーギター用:スチール)

 (1)~(3)はどこの楽器屋でも簡単に手に入るごくごくフツーのモノを使っています。(4)はJAZZギター用にフィンガリングノイズが入らないよう弦の表面を平らに加工した弦で、普通のエレキギター弦に比べると1.5倍から2倍の価格となります。(5)は…エレキギター弦とアコギ(スチール)弦のちょうど間ぐらいのイメージの柔らかい弦で、巻弦の内側にナイロンや絹をブレンドした所謂コンパウンド弦です。マニアックな楽器屋さんでしか売っていないので、アラフィフおやじは通常ネットで購入しています。

 現在アラフィフおやじが保有している楽器はエレキギター4本、アコースティックギター6本なのですが、仮に3ヶ月に1回ぐらいの割合で各ギターの弦を張り替えるとなると…年4回なので、4回×10本=40回、ということでなんと年に40回も弦を張り替えなくてはなりません。これだとほぼ毎週のようにどれかのギターの弦を張り替えなければならないということになり、仮に弦ワンセットで平均1000円と考えた場合、年間4万円もの出費となってしまいます。

 弦が劣化する原因は人が演奏する時に指先から付着する水分、塩分、油等ですが、長い間張りっ放しにしているとさらに空気中のホコリや水分などもどんどん加わるためさらに劣化が進みます。

 無精なギタリストの場合弾いたあとに弦をクロス等で拭くこともせず、そのまま放置するようなケースも多いですが、これは弦にとって最悪で、アッという間に弦は錆びてきます。まあ、無精なギタリストは多少弦が錆びていても気にならないのかもしれませんが…。

 ちなみにアラフィフおやじは、錆びたり汚れたりした弦でギターを弾くのはとっても苦手なので、ギターを弾いた後は必ずクロスで拭いています。ギタリストなら、10人中10人が使っていると思われる「Finger-ease」(図1)という商品がありまして、これをクロスに吹き付けて、弦を拭くのです。

図1.「Finger-ease」

 「Tone(トーン)」というメーカーが出しているこの製品は、1963年(なんとアラフィフおやじが生まれる5年前!)から世界中で使用されており、アラフィフおやじもそれこそギターを始めたばかりの中学生のころから愛用しておりました。手が汗をかくと弦が錆びて演奏時に引っかかるので、Finger-easeを指板やネックに直接吹き付けたり、指に直接吹き付けたりするのですが…ちょっとツルツルしすぎでは?感じることも正直あるんですよね…。そんなこともあり、他にもっと良い製品が無いかな…と思っていましたが…ありましたよ、良い製品が。

 GHS社の「Fast Fret」(図2)という製品をご存知でしょうか?アラフィフおやじの知り合いのギタリストでは使っている人は皆無でしたし、聞いたことも無いという感じで非常にマイナーな製品のようです。Fast FretはFinger-easeのように潤滑剤を「吹き付ける」のではなく「塗る」製品です。フェルトのような固い布に潤滑剤が沁み込んでいて、その油を弦に塗り付けるだけ、という極めてシンプルな仕組みなのですが…これが秀逸なのです。

図2.GHS社「Fast Fret」

 まず、Finger-easeと違っていちいちクロスにスプレーして、それから弦を拭くという必要がなく、ワンアクションで弦に潤滑剤を塗布することができます。また、この潤滑剤が非常に秀逸で、Finger-easeのように必要以上にツルツルになることもなく、極めて自然な「滑り感」を実現するのです。さらに、効果が長続きするとともに、弦自体が潤滑剤で守られることによって、弦の寿命が驚くほど伸びるのです。しかも、張り替えた後の気持ち良い「新品感」がかなり長く続くのが驚きです。

 アラフィフおやじの感触からすると、毎回ギターを弾いた後にFast Fretをしておけば、半年ぐらいは弦を張りっ放しでも大丈夫な感じ。下手すると1年くらい大丈夫かもしれません。おかげで弦を張り替える周期が圧倒的に長くなりました。Fast Fret自体の寿命も長く、数年は平気で使えそうな感じです。ただ、フェルトの表面が徐々に黒ずんでくるので、アラフィフおやじは数か月に1回の割合でこのフェルトの表面をカッターで1㎜位スライスしてリフレッシュするようにしています。こうすればまた新品同様になります。(こういう使い方が推奨されているワケではなく、アラフィフおやじが勝手にやっているだけなのでご注意ください)

 Finger-easeしか使ったことない、というギタリストにも是非おススメしたい逸品です。

【ボディのメンテナンス】

 ギターを弾く人であればだれでも、誤ってどこかにギターを「ガツン!」とぶつけて傷をつけてしまったという経験があるのではないでしょうか?ぶつけたのがピカピカの新品だったりするとショックが大きく、数日間(または数ケ月間)落ち込むことになります。でも、本当にガッツリとやってしまった場合はリペアショップ等でないと治せないと思いますが、ちょっとした傷であれば素人でも直すことができるんです。

 最近は長年使いこんだように見せるため、わざと傷だらけに加工した新品のギターがあるぐらいなので、ちょっとした傷ぐらい放っておいてもギターの機能としては何ら問題はなく、逆にカッコいいぐらい…なのですが、アラフィフおやじはギターのお手入れが好きな「お手入れフェチ」ですので、DIY的にギターの傷を修復するのも「楽しみの一つ」と考えています。塗装の下の木材が見えてしまうような大きな傷は別として、塗装上にできた浅い傷であれば素人であってもおよそ以下の2つの方法で解消できてしまうことが多いと思います。

 (1) コンパウンドによる傷の消去

 コンパウンド(図3)とは研磨剤を含んだ液体やペーストにより傷の周囲を削り、傷を目立たなくする方法です。作業効率を上げるには、研磨剤を「普通・細かい・超細かい」の3段階ぐらい準備して普通のコンパウンドから超細かいコンパウンドの順で徐々に粒度を細かくしていくのがコツです。いきなり「超細かい」コンパウンドで磨いてもいつまでたっても大きな傷は消えないので注意が必要です。

図3.コンパウンド

 複数のコンパウンドを上手に段階的に使い、塗装面を綺麗に仕上げるのはそれなりに経験と勘が必要になりますが、簡易な方法として研磨剤を含んだワックスを使うという手もあります。有名なのは「TURTLE WAX ( タートルワックス )  / Scratch & Swirl Remover」(図4)という製品で、細かいピックの弾き傷程度であればきれいに落とすことができ、ついでにワックスもかけられるという優れものです。コンパウンドのように段階的に磨いていくワケではないので、修復できるのは浅い傷に限定されますが、Gibsonなどのギターメーカーが出荷時に使っているといううわさもあるぐらいなので、安心して使えるのもいいですね。

図4.「TURTLE WAX / Scratch & Swirl Remover」

  (2)タッチアップ補修材による傷の消去

 傷が深く、研磨だけでは補修が難しい場合は、タッチアップ補修材の使用が効果的です。「Freedom Custom Guitar Research」(図5)という日本を代表するハンドメイドのエレキギターメーカーが出している「タッチアップラッカー」は、素人でも使いやすい補修材として人気があります。(注:あくまでも塗装面上にできた傷が対象で、下地の木目が見えてしまっているような場合は使用不可)

図5.「Freedom Custom Guitar Research」

 小さなビンに透明なラッカーが入っており、キャップにはハケが付属しています。知らない人が見たらマニキュアのように見えますが…これがなかなか使えます。傷口に少し多めに補修材を盛り、乾いたら剃刀やカッターの刃等を利用して盛り上がった補修材を削り、補修面を平面にしてからコンパウンドで地道に磨いていくのです。艶消し塗装のギターなど、一部のギターには使えませんが、下地の色が何であれ、トップがグロスフィニッシュのギターであれば大抵使うことができると思います。アラフィフおやじは過去に何回かこの方法で塗装面に生じたダメージを回復させた経験がありますが、ギターが綺麗に復活するのに加えて、リペアマンになった気分で「作業をする」こと自体の楽しさも味わえ、DIY好きの方にはおススメです。

 

 ギターのメンテナンスを面倒に思う人もいるかと思いますが、アラフィフおやじはメンテナンスが嫌いではありません。メンテナンスすることで愛着がわきますし、ギターのように経年によって音がだんだん良くなるような楽器の場合は、長く使えば使うほど(市場価格は別として)楽器としての価値は向上するので、メンテナンスせずにギターをダメにして新しいモノに買い替えてしまうのはもったいないことだと思うのです。

 もちろん、お金を出してプロに直してもらった方がキレイに治せると思います。でも、いろいろと失敗をしながら自分なりにメンテナンスの技術を磨いていくこともギターを通した楽しみの一つであるように思います。大丈夫、最初はだれでも上手くいかないものです。それに万一失敗したって、優秀なリペアマンが世の中には沢山いますので…ちゃんとキレイに直してくれます。

 調子が悪くなったまま押し入れに入れっぱなし、みたいなギターをお持ちの方…いませんか?せっかくなので、久々に引っ張り出して自力でのメンテナンスにトライしてみてはいかがでしょうか?手をかけてやれば、きっとギターもあなたの期待に応えてくれると思いますよ。

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