ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2020年9月16日更新マチネの終わりに

 どうも~アラフィフおやじです。

 皆さんは「マチネの終わりに」という映画をご存知ですか?

 

 「マチネの終わりに」は芥川賞作家・平野啓一郎が書いた大人のためのラブストーリーです(図1)。20164月に出版され、201911月に映画が公開されました。主人公が福山雅治と石田ゆり子という同世代(どう見ても同世代には見えんが…)であること、そして「クラシック・ギター」がストーリーのもう一つの主役になっているということで、アラフィフおやじは映画の公開前から少々この映画が気になっていました。残念ながら公開期間中に映画館で見ることはできなかったのですが、たまたま今年の3月にヘルシンキ(フィンランド)・ユトレヒト(オランダ)に出張する機会があり、往路のJALの機内で「マチネの終わりに」を無事見ることができたので…今日はその映画のお話を。

図1. 「マチネの終わりに」原作

 「マチネの終わりに」は、若き天才クラシック・ギタリスト蒔野聡史(福山雅治)と、フランス・RFP通信社でジャーナリストとして活躍する記者の小峰洋子(石田ゆり子)が、演奏会で初めて出会った時からお互いに強く惹かれあい、様々な困難に翻弄されながら東京・パリ・ニューヨークを舞台に繰り広げられる上質な大人のラブストーリーです。

 世界的なギタリストの蒔野聡史は、自らの20周年記念公演の際、パリの通信社に勤務するフランス人ハーフのジャーナリスト・小峰洋子に出会います。出会った瞬間から、強く惹かれ合い、映画や音楽の話を通じて心を通わせる二人。洋子には婚約者がいることを知りながらも、高まる想いを抑えきれない蒔野は、パリに住んでいる洋子の許を訪れ、洋子に自分の気持ちを伝えます。しかし、それぞれをとりまく現実に向き合う中で、蒔野と洋子の間に様々な障害が生じ、二人はなかなか一緒になれずにすれ違ってしまう、という何とも切ないお話です。ラブストーリーとしても十分良い内容なのですが、今回はアラフィフおやじ的な「ギター」目線でこの映画について語りたいと思います(映画のネタバレもあるので、これから見ようと思っている方はご注意を)。

 映画の中では、「幸福の硬貨」という架空の楽曲がこの物語におけるキーワードのような存在になっています。「幸福の硬貨」は小峰洋子の父であるフランス人映画監督、イェルコ・ソリッチを代表する映画なのですが、その映画のファンであった蒔野が自身のデビューコンサートで主題曲を演奏したことがあり…その時に実は小峰洋子はそれを母親と聴いていた、と…いう、いわば二人を結びつける重要な位置づけ。映画のラストでは、ニューヨークで開かれたマチネの終わりに、予定されていなかったこの曲を蒔野は観客席に来ていた小峰洋子に向けて演奏します。そしてマチネが終わった後、セントラルパークで二人は再会し、微笑む二人のアップで映画はエンディングを迎えるのです。

 映画を見た人であれば分かると思うのですが、この「幸福の硬貨」という曲が非常に素晴らしい!シンプルなメロディで、飾り気のない楚々とした曲なのですが、映画の世界と一体化して、メロディを聴いただけであの映画の世界に再び入ってしまうような…いわば、あの有名な映画「ニューシネマパラダイス」のエンニオ・モリコーネの主題曲のように、映画自体を体現しているような曲なのです。

 機上で映画を見たあと、ヘルシンキに到着したアラフィフおやじは早速ホテルでApple Musicで映画のサントラをチェックしてみました。すると、映画のサントラ以外に、作家である平野啓一郎とクラシック・ギタリストの福田進一(図2)による小説のタイアップCD2枚(図3)発売されており、映画のサントラCD(図4)も含めると計3枚の「マチネの終わりに」関連のCDが発売されている事を知りました。タイアップCDの中にも「幸福の硬貨」が入っていたので、早速聴いてみたのですが…あれ、なんか映画と曲が違う…?

図2. クラシックギタリスト福田進一氏

図3A. タイアップCDその1

図3B. タイアップCDその2

図4. サントラ盤CD

 実は、「幸福の硬貨」はタイアップCDバージョン(作曲:林そよか)と、サントラバージョン(作曲:菅野祐悟)の2バージョンあることを知りました。曲名は同じですが違う曲で、サントラの曲は映画用に新たに書き起こしたとのことです。どちらも素晴らしい曲ですが、タイアップ版は福田進一氏が、サントラ版はなんと福山雅治本人が演奏しているとのこと。福山さんはもちろんプロのミュージシャンなのでギターを弾けて何の不思議もないのですが、クラシック・ギターは初挑戦という割には…かなりお上手。映画の中でも、バリオスの「大聖堂」の第三楽章など、高速フレーズが連続する楽曲を弾くシーンを本人が吹替なしで演じていたので、おそらく相当な努力をされたのだと思います。

 ちなみに、「現代ギター」という雑誌をご存知でしょうか?クラシック・ギタリストやクラシック・ギター愛好家のためのコアな雑誌ですが、2019年の11月号では福山雅治さんが表紙になり、映画「マチネの終わりに」特集が組まれていました(図5)。アラフィフおやじも早速手に入れて読んでみたところ、福田進一さんのロングインタビューが載っていました。福田進一さんは映画化に当たり福山雅治さんの演奏指導も担当(図6)されていたのですが、福山雅治さんのクラシック・ギターの上達ぶりに驚き、「非常に努力家で、レッスンしているときの集中力も素晴らしく、今の学生たちにも見習って欲しいくらい。」という内容のコメントされていました。アーチストとして才能豊かなだけでなく、やっぱり「努力の人」なんですね~。

図5. 「現代ギター」表紙

図6. 福山さん指導中の福田氏

 アラフィフおやじはギターに関しては完全な独学なので、当然のことながらクラシック・ギターも含めて一切習った経験はありません。ただ、学生の頃に教則本を買ってきてちょっとだけ真面目にクラシックの楽曲(アルハンブラ宮殿の想い出等々)を練習していたこともあったので、今回サントラ版「幸福の硬貨」(福山バージョン)のコピーにチャレンジしてみました。ネットで調べてみると、YouTubeとかに「弾いてみました!」的な動画がいくつもアップされていたため、そういった情報を頼りに少し頑張ってみたところ、1週間ほどで何とか弾けるようになりました。せっかくなので、もう少しちゃんと細部をブラッシュアップして、次回のSNJ総会の懇親会の席あたりで披露しようかな?とか考えています(笑)。

 ちなみに、今回の出張先のヘルシンキ(図7)・ユトレヒト(図8)は、映画の舞台となったパリとは若干趣が異なりますが、いずれも欧州らしい歴史を感じさせる素敵な街でした。海外出張に行くと、ホテルで早めの朝食を取った後、打ち合わせの時間までホテルの周りをぶらぶら散歩することが多く、今回は「マチネの終わりに」のサントラをiPhoneで聴きながらそれぞれの街の中を歩いてみたのですが…これがすごく良い!古い石畳・石造りの建物が並んでいるクラシカルな雰囲気の風景にクラシック・ギターの音色は完全にマッチしていて、楽曲自体の魅力も倍増するように感じました。

図7. ヘルシンキ

図8. ユトレヒト

 そういえば以前アメリカのワシントンD.C.に出張した時にも、ホワイトハウス周辺を散歩しながらたまたまiPhoneで聴いていたパット・メセニーのスローなバラード(アコースティックギターを使ったちょっとフォーク調の楽曲)がものすごく良く風景に合って、いままで感じたことの無かった楽曲の魅力に気づかされたことがあります。日本では正直その曲をそんなにイイと感じたことは無かった(というか、中央線の中で聴いていただけでは良さに気づけなかった)ので…音楽って単独で存在してもそれはそれで魅力ですが、目の前の風景と上手く一体化すると、より説得力を持って感情を揺さぶる効果があるということを今回改めて実感した次第です。

 以前ギタリストのChar(チャー)さんが、テレビのインタビューで「曲を作るときはいつも頭の中で映像をイメージしている」といった内容のコトをおっしゃっていました。音楽と映像が上手くマッチすると、映像は音楽によって魅力を増し、音楽は映像によって魅力を増すという相互補完の関係にあると思うので、明確なビジュアルイメージを楽曲に持たせることができればそれだけで強力な武器になるんでしょうね。

 ちなみに、石田ゆり子さんは、この映画の出演がきっかけとなり本格的にクラシック・ギターを習い始めたそうです。福山雅治さんも、この映画に出てから何本か本格的なクラシック・ギターを購入し、ライブ等でも演奏を披露しているとのこと。クラシック・ギター界は割と地味な業界なので、この映画をキッカケに若い人の間でクラシック・ギターブームなんぞ起こればいいなとアラフィフおやじは願っています。

 最近家庭内において、何度かこのマチネ関係の話を話題に出していたのですが、どうやら家族の中では私は石田ゆり子のファンであると誤った認識をされてしまっているようです。もちろん石田ゆり子さんはステキな方なので、ファンと言われてムキになって否定するようなステータスでは無いのですが、あくまでもギターつながりでというコトでこの映画を紹介させていただいたので、誤解の無いように…とはいえ彼女のインスタをチェックしたついでにフォローしたりしてしまっているのも事実なので、今後仮にアラフィフおやじが石田ゆり子系の話題をちょいちょい入れこんでくるようなことがあっても、全てを察した上で水に流していただければと思います。

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