ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2021年6月16日更新ギターの録音

どうも~アラフィフおやじです。

今日はギターの録音に関する話です。

 

 ギターを弾く人であれば、大抵の人は自分のギターの演奏を何らかの形で録音した経験をお持ちなのではないかと思います。アラフィフおやじも御多分にもれず、今まで何回か自分のギターの演奏を録音する機会がありました。

 ギターの演奏を録音する目的は、曲を練習する際のバッキング代わりだったり、デモテープのためだったり…用途は様々だとは思うのですが、中学生のころからギターをやっているアラフィフおやじからするとホント、この「録音」を取り巻く環境に関しては今の若い人たちは恵まれているな~と思います。アラフィフおやじの息子も、iPhone付属のマイクを使ってアプリでギターや歌を録音し、更にアプリ上でリバーブ等のエフェクターをかけ、SNSなどに気楽に投稿しているようです。音質も結構良く、デモテープ等の録音であればこれでもう十分では?と思ってしまいます。

 ちなみにアラフィフおやじがまだ中学生のころ、ギターを録音する手段は当然のことながら「ラジカセ」でした。ラジカセ内蔵のマイクは、当然のことながら安物のコンデンサマイクでノイズ乗りまくり。サウンドもペコペコで高音だとか低音だとかそういった次元を超えたチープな音。今だったら聴くに堪えないクオリティだったと思います。

 高校生になると、親に買ってもらったテクニクスのコンポがダブルデッキ仕様だったこともあり、音質は多少劣化するもののピンポン録音(もはや死語)で多重録音のまねごと的な事も出来るようになりました。マイクも安物ながら本体内蔵ではなく、外付けのダイナミックマイク(カラオケ用)になったので、音質はラジカセ時代よりかなり改善されました。

 そして大学生になると、4チャンネル分の音を重ねてカセットテープに録音することができる「MTR(マルチトラッカー)」を持っている友人がいたので、それを拝借してバンドのデモテープなどを録音していました。ちゃんとした楽器用のマイク(SHUREのSM57)を使ってMTRで録音すると(当時としては)とてもいい音で録音でき、感動したことを覚えています。

 アラフィフおやじが社会人になってしばらくすると、レコードではなくCD全盛の世の中になり、いよいよデジタル方式のMTRが登場するようになりました。カセットテープの代わりにハードディスクに録音できるという優れもの。トラック数が多いと大きさも値段も高くなるのですが…アラフィフおやじも確か8トラックぐらい録音ができる大きなMTRを10万円ぐらいで買った記憶があります。もっとも、大枚はたいて買ったにもかかわらず、ほとんど使うこともなく、そのまま廃棄処分にしてしまいましたが…。

 10数年くらい前からはMTRのような専用のハードウェアを使用せず、PCにオーディオI/Fを差し込んで、ソフトウェアで録音するという方式が主流になりました。録音用のDAW(Digital Audio Workstation)ソフトも、以前はかなり高かったのですが、最近は大分値段もこなれてきて、フリーのDAWソフトなどもチラホラ。いちおうアラフィフおやじも時代の波に乗って、DAWソフトとかオーディオI/Fを手に入れ、録音の真似事をするようになりました。

 DAWソフトを使用する時は、PCにオーディオI/Fをつないで、それにコンデンサマイクを突っ込んで録音するのですが…結構これが面倒臭いんですよね。いちいちこれらの機材を引っ張りだして、それぞれの機材の間をケーブルでつないで、マイクをスタンドに立てて音量調節して…。何かの拍子に音が出なかったり、ノイズが盛大に乗ってしまったりすることもあるので、その原因を探ったりすることも。録音しようと思い立ってから実際に録音を開始できるまで最低でも5~10分ぐらいかかってしまうので、録音すること自体がだんだん億劫になってしまうんですよね…。そんなこともあって、一時は自分の演奏を頑張ってPCに録音して残していたのですが最近はめっきりその機会も減ってしまっていたのですが…実はいいモノが登場したのです。

 それは、日本の老舗音響機材メーカーである「TASCAM(タスカム)」から2019年1月に発売された「TASCAM – USB オーディオインターフェース搭載 ステレオ リニアPCMレコーダー DR-07X」(長っ!)という商品です(図1)。読んで字のごとし、ステレオでPCM録音ができて、オーディオI/Fも搭載しているという優れモノです。以前からこのTASCAMのレコーダーは音質が良いと定評があり、少々気にはなっていたのですが、大抵この手のレコーダーは本体内蔵のSDカードに記録する機能しか持っていないので、本体に録音して再生、というシンプルな使い方しかできませんでした。ところがこのDR-07Xは、オーディオI/Fを内蔵しているので、そのままPCにUSBで接続することができます。つまり、このレコーダーを取り出してPCにつなぐだけで、そのまま録音作業に入れるのです。 

図1. TASCAM – USB オーディオインターフェース搭載 ステレオ リニアPCMレコーダー DR-07X

 単にマイクとオーディオI/Fを一体にしただけじゃん、と皆さんお思いかもしれませんが、「PCにレコーダーをつなぐ」、という1ステップの手間と「PCにオーディオI/Fつなぎ、それにマイクをつなぐ」という2ステップの手間の差は、やってみると実はかなり大きいのです。時間にするとたった数分の差かもしれませんが、この数分の手間の差が、録音作業に入る際の心理的なハードルをグッと下げてくれます。

 このレコーダー、軽くて小さい上に更に音質はかなり良く、CDレベルの音質での録音が手軽にできてしまうので非常に重宝しています。実際、アラフィフおやじはこのレコーダーを購入してから、自分のギターを録音する機会が増えました。録音の目的はバンドのアレンジを決定するための音源作成や、ボーカリストのための自宅練習用の音源(要はカラオケ)作成、また、単純に自分の演奏を記録として残しておくため等、様々なのですが、音源ファイルをクラウド上でバンドメンバーと共有するといったやり取りも簡単にできるので、非常に重宝しています。

 コロナの非常事態宣言があった際には、外出自粛の関係で土日は一日中家に籠っているような日が続いたのですが、せっかくの機会なのでいろんな曲(アコギ2~3本使ったインストがメイン)を演奏して録音するということを繰り返していました。アラフィフおやじは少々オタク気質なところがあるので、この録音作業にはかなりどっぷりとハマってしまいました。

 アコギの音をいい音で録音するのは、簡単なように見えて実はそう単純ではありません。ギターのサウンドホール、つまり真ん中に空いた丸い穴にマイクを向けて録音すると、低音がボワボワの音になってしまいます。そもそもギターのサウンドホールからはかなりの低音(数10Hz)の音が出ているので、レコーダー側でまず低音カットのフィルタ機能をオンにします。

 そして、マイクをギターの正面ではなく、ネックよりの位置から、サウンドホールに向けて斜めにセットすることで低音のボワつきを防止します(図2)。こうすると左手のフィンガリングノイズ(「キュッ」という音)も適度に拾ってくれます。

図2. マイクをサウンドホールに向けて斜めにセットする

 

 録音時の注意としては、レコーダーのマイクの性能が高く周囲の音を何でも拾ってしまうため、空調やファンなどの電源は切っておくこと。PCのファンの音なんかも結構拾ってしまうので注意が必要です。あと、自分の鼻息とかもちゃんと録音されてしまうので、鼻息を出さない努力をするとか(笑)、そういった注意も必要です。周囲からのノイズが多そうだと思ったら、マイクの周りをスポンジのように吸音性のある素材で覆うことで少しは状況が改善されると思います。

 あと、大事なのは録音レベルの設定です。自分の演奏する音量のピークに合わせ、歪むか歪まないかのギリギリの線あたりに録音レベルを設定すれば、ノイズも少なく、迫力のある音で録音ができます。

 録音するときに個人的に一番気を付けているのは「リズム」です。DAWソフトが出すクリック音に合わせて録音をするのですが、普段メトロノーム等に合わせて練習をしていないとなかなかリズムにドンピシャ合わせることができません。普段からメトロノームを使った練習をしておくことが大事かと思います。

 不思議な事に、普段だったらミスなく演奏できる曲も、録音だと思うと肩に力が入るせいかミスする確率が高くなる傾向があります。しかしDAWソフトの場合、演奏を失敗した場合は「失敗したところだけ」録音し直して差し替えることができますし、ちょっと入るタイミングが早かった/遅かった、みたいなミスは波形をダイレクトに編集してしまうことで解消することも可能です。録音時に気が付かなかったようなミスを録音後に修正することもそこそこ可能なので本当に重宝します。

 多くの人は、録音が無事終了すると、8割方の作業が終了したと感じるかもしれません。…が、アラフィフおやじ的にはあえて「録音終了は2割の作業が終わったにすぎず、最終的な仕上がりとしての良し悪しは残り8割の音の編集作業にかかっている」と断言したい。そのぐらい編集作業は大事なモノです。自分が納得できるまで、あーでもないこーでもないと悩み、出っ張ったところを叩き、不足するところをつぎ足し、全体のバランスを眺めてはまた悩む…といったプロセスこそがモノづくりにおいて共通かつ一番重要なファクターであるように思います。

 アラフィフおやじが録音する素材はアコースティックギターやパーカッション等、所謂アナログ的な楽器ばかりで、キーボードなどのデジタル音源を使ったりすることは無かったので、DAW上で使うエフェクトはイコライザーとリバーブぐらいしかありません。しかし、この二つのエフェクトどう使うかで仕上がりが全く変わってきます。人の耳が聞くことができる周波数帯域はおよそ20Hz~20kHzの間、と言われていますが、アコースティックギターの場合、この帯域の中のどこを強調するか、あるいはどこを削るかで音の印象が全く変わってきますし、バッキングでコードを弾く場合と、リードでメロディを弾く場合ではイコライジングをあえて変えた方がいい場合もあります。

 前述したように、低域が響きすぎるとボワボワしてしまうので60Hz以下はスパッと思い切ってカットした上で、更にまだモコモコしているように感じたら200Hz付近を少し下げ、音階がはっきりしないと感じたら800~1kHzあたりを軽く上げ、音に芯がないと感じたら6~8kHzぐらいをブーストし、空気感を出したいと思えば12kHz付近を軽く上げ、15kHzより上の帯域はなるべくカットしてノイズを減らし…と、プロではないのであくまでも耳で聴いた感じに基づいてテキトーにやっているだけなのですが、イコライザーを駆使して演奏全体が「イイ感じのバランス」に収まるように音質調整・バランス調整を繰り返します。イコライザーの目盛り1つ動かしただけで結構音の印象は変わるので、作業はけっこう神経を使います。

 続いてリバーブですが…アラフィフオヤジ的にはリバーブは音に「色気」を与えるエフェクターであると認識しています。あんまリバーブをかけすぎると、お風呂や大聖堂の中で演奏しているようになってしまうので、控えめが基本。ただ、アラフィフおやじの好みで「リバーブ音は少し長め」にすることが多いです。特にガットギターのリードなどでは、長めのリバーブが音と音の間を綺麗に埋めてくれるので、「リバーブ音大きめで短め」よりも「リバーブ音控えめで長め」のほうが良いのではないかと思います。カラオケに行くと、リバーブの音量と長さを別々にコントロールできないことが多いのですが、アラフィフおやじ的には「うっすら長め」のリバーブに調整できればいいのになぁといつも思ってしまいます。

 イコライジングもリバーブも基本的には「薄化粧」のように、原音の良さを引き立てるような使い方を心がけていますが、何度もプレイバックしながら試行錯誤を繰り返すことで確実に音源の魅力は増してゆきますが、ここで注意したいのは録音したその日のうちにミキシング作業を終了してしまわないことです。とりあえず納得できるミキシングが出来たら、一旦その音源をiPhone等に入れ、繰り返し聴いているといろいろと改良のポイントが見えてきます。楽器の音量や低音と高音のバランス、リバーブのかかり方や2つのスピーカー間の音像の位置関係(パン)など、チェックすべきポイントは非常に沢山あるのですが、何回も音源を聴くことで問題となる箇所は「不自然さ」として耳に引っかかってくるので、そういった箇所を覚えておいて後で一括して修正します。一旦PCの前を離れることで客観的に音源をチェックできるようになるので、「一晩寝かす」ことは効果があるのではないかと思います。

 ただ、一旦そうやって作った音源も1週間もするとまた直したいところがテンコ盛りになってしまうのが、正直なところです。でも、そういう音源はすぐにリミックスせず、その場では反省するだけにとどめるよう心がけています。そうしないと納得するまで延々とリミックスを繰り返す「リミックス地獄」に陥ってしまうからです(今まで何回か陥っています…)。ただ、過去の録音における反省は次の録音に極力活かすようにはしていますので、不満に感じるポイントはゆっくりとではありますがだんだん減ってきている、というのが現状です。録音の世界も理論だけでなく「場数(ばかず)」が重要なポイントなんだと思います。

 録音された自分の演奏を聴くことは、卒業アルバムの中の自分の写真を眺めるような感じで、なんとなく恥ずかしい所があるのも正直なところです。が、自分の演奏を客観的に見つめるためには「録音」という行為が一番!もちろんギターを実際に練習すること自体も大事ですが、録音をするようになってから、自分のプレイスタイルのどこが課題なのか、以前にも増してハッキリと認識できるようになったので、練習の仕方もそれによって弱点を補強するようなやり方に自然に変わってきたように思います。

 このコラムの読者の皆さんも、音楽好きの方が多いのでないかと思われますが、皆さんも一度自分の歌っている声や楽器の音を録音してみるのはいかがでしょう?ちょっと恥ずかしいですが、改善のポイントに気づく良いチャンスになるかと思いますし、ひょっとしたら思っていた以上にイケてる(?)自分に気が付けるかもしれませんよ。

 

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