ピルツジャパンのブログ「裏ピルツ新聞」

2022年3月16日更新ナイフ

どうも~ アラフィフおやじです。

今日は音楽と全く関係のない、「ナイフ」についての話です。

 

 アラフィフおやじの「おやじ」、つまり、父親は7年前に78歳で他界しておりますが、現役時代は某鉄鋼会社で長いこと海外営業を担当していました。海外のビル建設会社等に建材としての鉄骨を売り込むために、年に何回か海外に出張していましたので、子供のころのアラフィフおやじは、父親が海外出張先から持ち帰ってくるお土産をいつも楽しみにしていました。

 出張先はアメリカとかヨーロッパより、むしろアジアやアフリカなどが多かったので、お土産は木を彫って作った木偶(でく)人形や、水牛の角で作った置物、蛇やワニの剥製(!)など、変わったモノが多かったように思います。アラフィフおやじはそういった変わったモノが大好きだったので、父が出張に行くたびに買ってくるお土産をいつも楽しみにしていました。

 しかしアラフィフおやじも中学、高校生ぐらいになると徐々に音楽に目覚め、洋楽なども聴くようになっていたので、おやじが海外に出張に行くときは、置物よりむしろレコードをお土産にねだる事が多くなってきました。当時の日本は輸入盤を扱っているお店も少なかったので、当時のアラフィフおやじにとっては、日本語のライナーノーツが入っていない、外国の匂いのするレコードはとても魅力的なお土産の一つでした。

 アラフィフおやじが学生の頃は、輸入品は総じて日本よりも海外で買ったほうが安く買うことができたため、父親は出張に行くと自分用にマフラー、コート、財布、万年筆などもちょくちょく買ってきていました。今思うと割と身につけるものや持ち物にはこだわりを持ったお洒落な父親であったと思います。まあ、長年営業で海外を飛び回っていたので、その影響もあったのかもしれませんが…そんな父が晩年になってハマったのが、前述した万年筆をはじめとした「筆記具」や、一眼レフの「カメラ」、そしてこれから話をしようとしている「ナイフ」です。

 アラフィフおやじがまだ学生だった頃のある日、父親が突然折り畳みナイフを買って帰ってきました。普段ナイフを使う機会などないのに何故?と思ったのですが、単純に「欲しかった」というのが正解だったようです。そのナイフは、アメリカのカンザス州で1902年から続いている「Buck Knives(バック・ナイフ)」というメーカーの製品で、グリップは木と真鍮でできたシンプルなものでした(図1,2)。

図1. バック・ナイフ(その1)

図2. バック・ナイフ(その2)

 父親はたまにこのナイフを取り出してはちょっとしたものを切ったり、シャープナーで刃先を研いで手入れをしたり、とても大切に使っていました。当然普段の生活の中で、そんなにナイフが活躍するような場面など少ないのですが、持っているだけでなんとなく満足、という感じだったのではないかと思います。

 そのうち父親は、ナイフが載っている雑誌などを見ながら、次に買うのはどれにしようか…と物色し始めました。今持っているナイフはどちらかというと武骨なデザインだったので、もう少し洗練されたデザインのナイフが欲しくなったようでした。しばらくして父親が手にいれたのは「JACQUES MONGIN(ジャック・モンジャン)」というブランドのとてもコンパクトな折り畳みナイフでした。手のひらに収まるほど小さく、ブレードは鏡のようにピカピカで、柄の部分は水牛の角でできていて、フランス製にふさわしく洗練されたデザインでした(図3)。こちらはバック・ナイフと比べるとあまり実用的なデザインとは言えませんが、ブレードをリリースするための大きなリングがついていたので、キーホルダー的な使い方もでき、そんなところが父親は気に入っていたようです。

図3. JACQUES MONGIN(ジャック・モンジャン)

 7年前に父親が亡くなった際に、家族で遺品を形見分けしたのですが、前述したバック・ナイフはアラフィフおやじの手元にやってきました。真鍮の部分が少し錆びたようにくすんだ色になっていたので、アラフィフおやじがコンパウンドを付けて磨いたところ、見事にくすみが取れて真鍮本来の輝きを取り戻しました。40年近く前の製品ですが、見た目的にも、機能的にも劣化した様子は見られず、おそらく100年経ってもそのまま使えるのではないかと思います。正に「質実剛健」という言葉がぴったりとハマる、そんなナイフだと思います。

 アラフィフおやじも、父親の血を引いたのか、いわゆる小物類やガジェット類は割と好きなほうで、以前こちらのコラムで紹介した万年筆などはまさにその一例かと思います。実は、アラフィフおやじの義兄(姉の夫)も偶然にもいわゆる小物系・ガジェット系が大好きな人なのですが、なんとナイフを自分で作ってしまう(!)という大変器用な人で、以前父にプレゼントした義兄自作のナイフも現在遺品として私の手元に置いてあります(図4,5)。大まかなデザインは父がしたとのことで、柄の部分が長くてブレード部分が短いというユニークなデザインです。厚い革でできた「シース(さや)」も義兄の自作との事で、こんな風に自分の好きなデザインのナイフを作る事ができたらさぞ楽しいだろうなと思います。

図4. 義兄が製作したナイフ(その1)

図5. 義兄が製作したナイフ(その2)

 アラフィフおやじは、自分でナイフを買ったり、作ったりという趣味はないのですが、ナイフ自体にはそこそこ興味があって、御徒町のアメ横に行った際などはナイフの専門店を覗くこともありました。そんなある日、たまたま書店をブラブラしていたところ「ナイフ・メイキング読本」というムック本に出会いました(図6)。自分でナイフを作っているワケでも、作る予定があるワケでもないのですが、中に掲載されているナイフの美しさに惹かれて思わずレジに持って行ってしまいました。

図6. ナイフ・メイキング読本

 家に帰ってペラペラとページをめくってみると…なんと俳優の「宇津井健」がナイフビルダー(もちろん趣味として、ですが)として特集されていました。宇津井健と言えば、あの「渡る世間は鬼ばかり」に登場するお食事処「おかくら」の主人(岡倉家の父親)役の印象が強いですが、まさかこんな才能を持っていたなんて…紙面に紹介されている彼の製作した美しいナイフの数々を見て、アラフィフおやじはその才能に軽い嫉妬を感じたほどでした。紙面を飾る数々のナイフは、形・色・質感など、どれも一流のナイフビルダーが製作したものと比べても全く遜色なく、技術力に加えて確かなセンスを持っている事が感じられました(図7,8,9)。さらにムック本には、ナイフ製作に必要な手順が分かりやすく図解されているとともに、必要となる工具や使用する素材類の紹介、初心者でもとっつきやすいキットの紹介などもされており、非常に充実した内容となっていました。アラフィフおやじはまだ今のところ、ナイフ熱のスイッチが入っておりませんが、定年退職後など時間ができたあかつきには、趣味でナイフを作ったりするのもいいかなと思っているので、その時まではこのムック本を大事に持っておこうと思っています。

図7. 特集(その1)

図8. 特集(その2)

図9. 特集(その3)

 今回このコラムを書くにあたって、父親の遺品のナイフを引っ張り出してみたり、改めてこのムック本をペラペラとめくってみたりしたことで、久しぶりに父親との懐かしい思い出に浸ることができたと同時に、自分の中のナイフ熱が少しだけ高くなったような気がします。コロナ禍の中で出かける予定もないし、週末は都内のナイフショップ巡りでもしてみようかな…と考えているアラフィフおやじでした。

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