ピルツジャパンのブログ「裏ピルツ新聞」

2018年5月23日更新ジャズ喫茶

 どーも、アラフィフおやじです。

 今日はジャズ喫茶の話です。

 

 ジャズ喫茶というモノを初めて知ったのは、社会人になったばかりの頃、半年近い見習い期間を過ごした新潟にいる時だったと記憶しています。ご存知の通り、新潟には美味しい日本酒がそろっているので、それこそ毎日のように新潟一の繁華街である「古町(ふるまち)」に繰り出して同僚と美味しいお酒を楽しんでいました。

 ある日、ちょっと趣向を変えたくなって、繁華街から少し離れたところにある「ジャズ喫茶」に行ってみることにしました(お店の名前は忘れました)。当時はジャズに関する知識もほとんどなく、当然「ジャズ喫茶」なるものがどういうものかもほとんど理解していませんでした。でも、社会人になって少し背伸びをしたかったということもあり、システムも良く理解していない「ジャズ喫茶」に同僚と2人で乗り込んでいくこととしたのです。

 初めて入ったジャズ喫茶は、なんとなくイメージしていたジャズ喫茶そのものでした。ウッディな感じの内装、ウルサイ大型スピーカー、愛想のないマスター、サブカル的な雑誌の山…排他的というか、フレンドリーな雰囲気はみじんも感じないそのスペースで、大音量でジャズのレコード(CDではない)を聴きながら、我々はなんとなく居心地の悪さを感じていました。そもそもジャズが好きで来たわけでもなく、半分怖いもの見たさで来たようなものだったので…。でもリクエストを聴かれたのでとりあえず知っているアーチストの名前をテキトーに言って、しばらくはそのアーチストのレコードを聴きながらビールを飲んでいましたが…雰囲気も十分わかったしもういいや、という感じで早々に会計をすることにしました。ところが愛想の悪いマスターから真顔で「リクエストしたのに全部聴かないで帰るワケ?」的な追い打ちをかけられ…そんな訳で、ジャズ喫茶の第一印象はあまり良いものとは言えませんでした。

 …しかしその後、会社生活ウン十年の長い年月を経てアラフォーになった当時のアラフィフおやじは、暇を見つけては新宿や御茶ノ水のDISK UNIONのJAZZ館やレコード館などをウロウロしながら中古CDやレコードを物色するようなレッキとしたジャズファンになっていました。ジャズを好きになったキッカケは何だったのか良く覚えていないのですが…もともとフュージョンをバンドで演奏していたので、そのつながりでボサノバなんかは聞いていて、その辺が入り口になったのかな?あとはリー・リトナーのウェス・モンゴメリのトリビュートアルバムつながりで本家本元のウェスを聴いたり、たまたま家にあったビル・エバンスのピアノトリオのアルバムなんかを聴いたりしているうちに「なんとなくジャズ全般が好きになってきた」という感じかと思います。 

 ジャズ(クラシックもですが)のファンは、結構な確率でオーディオにも興味を示すことが多いようですが、私も御多分にもれず一時期オーディオにハマりました。オーディオのことを書き始めると話が長くなるので次回以降に回すとして…特にアコースティックなジャズの場合、ドラムのトップシンバルの金属感や、ウッドベースの低音が空気を震わす感じが小さなPC用のスピーカーでは表現しにくいので、ちゃんとしたオーディオで聴きたいという願望が徐々に頭をもたげてくるんですよね…そこで、奥さんからの冷たい視線を感じながら、秋葉原のマニアックなオーディオショップで単品のコンポを買い揃えて寝室にオーディオセットを組み、それなりの音質でジャズを聴きながら悦に入っていたのですが…やっぱり自宅では出せる音量に限界があり、JBLやアルテックのスピーカーで大音量でJAZZが聴きたくなってくるのです。

 ちなみに「ジャズ喫茶」とは、完全に日本独特の文化のようです。BGMとしてジャズが流れている喫茶店やバーは世界中どこにでもあると思いますが、ジャズを聴くことに特化して、マスターこだわりのオーディオで大音量のジャズを流し、店によっては「私語厳禁」などの貼り紙がしてあったりするような経営形態は確かにガラパゴス感がありますよね…。ちなみに、ジャズ喫茶は60年代のジャズのブームとともにカウンターカルチャーのシンボルとして脚光を浴びたものの、70年代以降ジャズのブームが過ぎ去ると、店舗数も大幅に減ってしまったとのこと。

 …しかし、それから40年以上経った今なお元気に続いているジャズ喫茶もあります。

 横浜には、京浜東北線の石川町の近くに「MINTON HOUSE」という老舗のジャズ喫茶があります。店の奥には大きなアルテックのスピーカーがデン!と置いてあります。家庭用のオーディオでは出せないような古くて太い音がたまりません。オーナーは崎陽軒のシウマイ(シュウマイでなくシウマイね)のCMにも出たことがある有名人ですが、ジャズ喫茶のマスターらしからぬ腰が低い人です。サンドイッチ等の食べ物メニューも結構美味しいですが、カウンターの椅子が少々座りにくくあまり長居できないのがちょっと残念。

 同じく京浜東北線の桜木町には、「ダウンビート」というこれまた老舗のジャズ喫茶があります。このお店もアルテックのスピーカーを使っていて、大音量でレコードを楽しむことができます。天井には店名の由来にもなっているアメリカの音楽雑誌である「ダウンビート」の表紙がびっしりと貼り付けられており、長年積み重ねられたタバコのヤニによりアメ色のコーティングがされていて何とも言えない雰囲気を醸し出しています。火事になったら良く燃えそうでちょっと怖いです。

 また、東北岩手の一関には「ベイシー」というとても有名なジャズ喫茶があります。マスターの菅原さんは早稲田のジャズ研出身でタモリの1年先輩。プロのドラマーとして活躍していた時期もありますが、自作のJBLのスピーカーを使って生音より良い音でジャズを奏でる「オーディオの魔術師」として有名な方です。ベイシーには2回しか行ったことないですが、大音量にも関わらず、居眠りができるほど心地良い音。正直今までビッグバンドってあまり興味なかったのですが、この店のスピーカーでビッグバンドを聴くとスゴク魅力的に聴こえるから不思議です。

 ベイシーは、カウント・ベイシーご本人(名前の由来にもなっている)や、JBLの本社から社長以下幹部がたびたび訪問するなど、グローバルな知名度を持ったジャズ喫茶で、ある意味「聖地」のようなお店になっています。前述したタモリをはじめ、作家の村松友視(30年前のサントリーオールドの「ワンフィンガー・・・」のCMで有名なお方)やサックス奏者の渡辺貞夫など、数多くの著名人が訪れる店としても有名で、おそらく日本のジャズ喫茶の最高峰ということになろうかと思います。ちなみにアラフィフおやじが最初にベイシーを訪れたのは10年ほど前ですが、訪れた記念に菅原さんと一緒に写真を撮らせてもらったのも良い思い出です(図1)。

図1「ベイシー」マスター菅原さん(左)と記念撮影

 ジャズ喫茶には、ジャズという音楽の魅力に加え、マスターの人柄やそのマスターがセレクトしたオーディオによる音の魅力、さらに、そのお店と常連客達が作り上げてきた「空気」が唯一無二の魅力として存在していると思います。

 でも、私も過去そうだったように、ジャズ初心者にとっては「そもそもどこに行ったらジャズ喫茶があるのか分からない」というのが本音かと思います。そこでおススメしたいのが、交通新聞社から出版されている「東京JAZZ地図」という本です(図2)。東京を中心にしてジャズ喫茶やジャズバー、ライブハウス、レコード店などの情報が満載の本で、お店の雰囲気が伝わる写真や思い入れたっぷりの文章はペラペラめくっているだけでも楽しくなります。僕が持っている本はちょっと古い版なのですが、改訂版がAmazon等で手に入るようなので、興味のある方はぜひこの本片手にジャズ喫茶巡りを楽しんでみてはいかがでしょうか?

図2「東京JAZZ地図」

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