ピルツジャパンのブログ「裏ピルツ新聞」

2019年12月13日更新Allen Hinds

 ど~もアラフィフおやじです。

 今日は、アラフィフおやじが大好きな「Allen Hinds(アレン・ハインズ)」というギタリストについて語ろうと思います。

 

 Allen Hindsはアメリカ、ロサンゼルスに拠点を置くジャズ/フュージョン系ギタリストです。バークリー音楽大学とMIMusicians Institute)で音楽を学び、MIでの講師を務める傍らナタリー・コールやボビー・コールドウェル、ロバータ・フラック等のライブサポートを行い、自らもソロアルバムを何枚か発表している一流ミュージシャンです。

 Allen Hindsのプレイを初めて見たのは確かYouTubeだったと思います。彼は派手なプレイして注目を浴びるタイプではなく、どちらかと言えば地味というか落ち着いた雰囲気のギタリストだと思います。なので、初めて彼のプレイを見た時にはあまり彼の「すごさ」みたいなものは伝わってこなかったと記憶しています。

 一般的にギタリストでない人が感じるギタリストの「すごさ」って、ピッキングの速さだったり、運指のややこしさだったり、1本のギターで同時に伴奏とリードを弾けちゃう器用さだったり、所謂「よくこんなに指が動くな~」みたいなものに対する評価のような気がするのですが、案外ギタリストがギタリストを評価するときは別な観点で評価しているような気がします。

 そこそこギターを弾く人であれば、プロの人が弾いているフレーズの一部をそのまんまコピーすることについては、割とできてしまう人も多いと思うので、そういうテクニック的な「すごさ」みたいなものはあまり評価の対象にはならないんですよね。例えば「アラン・ホールズワース(故人)」みたいに、指がバカみたいに開いて超ブッ飛びのフレーズを連発する変態的テクニシャン(失礼)がいますが、ギタリストが彼のことを「すごい」って評価するのは、結果として生まれてきたフレーズの難易度もあるんですが、むしろ「そのフレーズをクリエイトした」ことに対する尊敬の念、みたいなものだと思うんですよね。

 ヘビメタ系のギタリストの中には、以前こちらのコラムでも紹介した「イングヴェイ・マルムスティーン」のように指板から火を噴きそうなフレーズを連発する能力を持った(イングヴェイフォロワーとか言われる)人たちも多いのですが、本家のイングヴェイは別として、そのすごさっていうのはボーカルで言えばものすごく高音でシャウトすることができるとか、所謂フィジカルな面での凄さであって、音楽的な意味においてのギターの上手さみたいなものとはちょっと違うような気がします。

 譜面があって、その通りに演奏するみたいなケースは少し脇に置いておいて…例えば歌もののバックで適当にコードに合わせてギターを弾いてください、とか、割とギタリストに自由度が与えられたセッションみたいなのに参加する機会があったと想像してみてください。そこでギターを弾くときに考えるのは「どんな弾き方をしようかな」と頭の中でフレーズを考えて、さらにそれを「指さん、ちゃんと考えた通り弾いてね」と指先から出力するわけですよね。つまり、フレーズを構築するという脳内作業を経て、さらにそれをフィジカルな形でアウトプットする、という2つの行為の合算なので、どんなにフィジカル面が優れていても、脳みその中でプアなフレーズしか作れなかったらゴミみたいなプレイにしかなりません。また、その反対で脳内でどんな立派なフレーズを構築できても、指が全くそれに追いつかなければこれまたゴミみたいなプレイになってしまいます。

 フィジカルな面で優れたギタリストは世の中に山ほどいるので、まあ、指先がある程度器用に動くというのはプロとして最低条件として…ギタリストが感じるギタリストの「すごさ」は主に脳内作業の方にフォーカスしているように思います。つまり、あるコードが鳴っていると想定した時に、ボーカルのメロディラインを支え、曲のイメージを膨らませるようなフレーズやコードを瞬時に作り出し、それを紡いでいく能力。選択可能なフレーズや和音の組み合わせはほぼ無限にあると言っても良いと思うので、そこで「これしかない!」と必殺のプレイを選択する能力です。で、先ほど触れた「割と自由に弾けるセッション」みたいなものに出演した時に誰が一番「すごい」プレイをするか、と考えた場合、アラフィフおやじが真っ先に思い浮かべるギタリストがAllen Hindsなのです。

 世の中で評価が高いギタリストはそれこそ山ほどいます。クラプトンとか、BBキングとかカールトンとかリトナーとか…そういう人たちは当然そういう「割と自由に弾けるセッション」みたいなものに参加したらおそらく皆さんそれぞれ素晴らしいプレイをするでしょう。BBキングとかは普通に「クイーン」ってチョーキングしただけでも皆「ヒュー」って絶賛してしまうと思いますが…「この人が弾くと全部この人の味になってしまう」みたいなギタースタイルも確かにあるでしょう。でもAllen Hindsの「すごさ」はあくまでも楽曲が主体、ボーカルが主体で、「いえいえ僕は皆さんのお手伝いができれば…(笑顔)」みたいな控え目なフリをして控え目な音量でセンス全開のバッキングを繰り出しまくる、みたいな凄さなのです。BBキングのように「やっぱBBキングは違うな~(…でも完全に原曲関係なく全部BBキングの世界になっちゃってるじゃん!)」的な存在感ではなく、Allen Hindsがメンバーに入ることによって、バンド演奏がなんかツーランクかスリーランクぐらいいい感じになっちゃった、みたいな「ダシ」とか「隠し味」のすごいヤツ、みたいな感じなのです。…Allen Hinds愛が強すぎてちょっと日本語がおかしくなっちゃってるかもしれませんが、サイドマンとしての自分の立ち位置を忘れず、浮かれることなく、でも歌のバックに埋もれることの無いセンス抜群の「ハッ」とするようなプレイを、緩急自在に、しかも控え目な好感度抜群の絶妙のさじ加減で繰り出す職人のような彼を、アラフィフおやじは心底尊敬しています。そうです、彼こそ抜群の脳内作業のセンスと、指先のフィジカルなコントロール能力の双方を兼ね備えた、ギタリストが惚れるギタリスト、「ミュージシャンズミュージシャン」なのです。

 アラフィフおやじは彼名義のCDはもちろん全部聴いているのですが、彼のすごさはYouTubeの動画を見ると良く分かります。所属事務所が撮らせているのか、彼が個人的に撮っているのか分かりませんが、Allenが自宅の書斎?みたいな少しゴチャゴチャした空間でギターを弾く動画が沢山アップされています。そこで自分の使っているギターの紹介や、フレーズの解説みたいなことを熱心にやっています。自宅なのでとてもリラックスして、首がよれよれになったTシャツみたいのを着て、ニコニコしながらデモ演奏をしているのですが、どの演奏も素晴らしい!ギターの音色も最高だし、フレーズはセンスにあふれていて時にワイルド、時にセクシーと緩急自在。映像を見たら、ああ、ギターが上手いっていうのはこういう人のことを言うんだろうな…と誰もがじわじわと納得していただけるのではないかと思います。(というか、納得してもらわないと困ります)

 また、Allen Hindsというギタリストの魅力は、そのまま彼の人間としての魅力であるように思います。これだけギターが上手いのに、ルックスも抜群(図1)で俳優になってもやって行けそうな感じです。さらにこれだけイケメンなのに「俺が俺が」とならずに職人に徹し、あくまでもバンドアンサンブルを重視しているところも好感度高いです。数年前に最愛の娘さんを亡くされたようなのですが、その時はなんだか急に老け込んでしまった感じで、相当精神的なショックが大きかったのではと推察します。アラフィフおやじは彼のFacebookをフォローしているのですが、たまに寂しくなるのか娘さんの写真をアップしています。フォロワーや友人たちは「可哀そうなアレン!元気を出してね!」とか「きっと彼女は天国で笑っているわ!」みたいなメッセージを送って彼を励ましています。きっとみんなそんなAllen Hindsのことが大好きなのでしょう。

図1. Allen Hinds

 おそらくAllen Hindsのことを知らない方はなんでアラフィフおやじがここまでAllen Hindsを絶賛するのかピンとこないのではないかと思います。もし時間に猶予があれば、YouTubeで「Allen Hinds」と入力してリターンキーを押してみてください。なにぶん控え目なギタリストだけに、少し理解に時間はかかるかもしれませんが、きっとギタリストAllen Hindsの素晴らしさに目覚め、彼のファンになってしまうことでしょう。

 以上、Allen Hinds愛が強すぎてちょっとおかしくなっちゃったアラフィフおやじでした。

 

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