ピルツジャパンのブログ「裏ピルツ新聞」

2023年3月14日更新レコード(その2)

  ど~も、アラフィフおやじです。

今日は以前こちらのコラムでも一度触れた「レコード」に関する話の第2弾です。

 

  アラフィフおやじのコラムは2018年の2月にスタートしたので、スタートしてからはや5年が過ぎたことになります。コラムをスタートした時は49歳だったのですが、今年で55歳になるので、四捨五入すると(したくないですが)「アラシックスおやじ」になってしまう、ということに気づきました。今後コラムのタイトルを変更すべきかどうかについて裏ピルツ事務局に相談しなければ…と思っている今日この頃です。

  5年間もコラムの連載をやっていると、過去取り上げた話題であっても、時が経過して情報をアップデートしたくなることがあります。…ということで、今回のコラムは2019年8月に掲載された「レコード」に関するコラムに関するその後の経過報告をさせていただきたいと思います。

  以前のコラムでは、実家に置きっぱなしになっていたロック/ヘビメタ系のレコードを自宅に持ち帰り、レコードプレーヤーを購入して聴いてみたら音に満足できず、レコード針を純正品のサファイヤからダイヤモンドに変えてみたら非常に良かった、という主旨の話でした。その後は楽しくレコードライフをおくる事ができてメデタシメデタシ…となるはずだったのですが、欲が出て「もっといい音で聴きたい」という思いが徐々に鎌首をもたげてきました。まあ、1万円もしないレコードプレーヤーなのでそれもしょうがないかな、と思うのですが…。ちょうどタイミングの良いことに(悪いことに)コロナ禍で飲み会の機会も激減して可処分所得も増えていたので、これを機にレコードプレーヤー自体をグレードアップしよう、と思い立ちネット上で色々と物色することにしました。

  レコードプレーヤーも他のオーディオ製品同様ピンキリで、上を見ればキリがないのですが、価格と音質のバランスで考えると5~6万円台で十分でないかと考えました。そして、その価格帯で一番気になったのはTEAC(ティアック)というブランドの「TN-4D-WA」(図1)というモデルでした。ダイレクトドライブ採用でベルトの交換が不要な事、オーディオ関連パーツで有名なブランド「SAEC(サエク)」とコラボした精度の高いナイフエッジアーム(図2)を採用している事、単品で購入すると1万円を超える「Sumiko(スミコ)」製の「Oyster」という定評のあるMMカートリッジ(図3)を標準搭載している事、フォノイコライザーを内蔵している事、それなのにボディが薄く見た目もスタイリッシュな事…等々、魅力的なポイントが満載なのに加え、YouTubeでの商品紹介動画などを見ても非常に良さげだったので、あまり迷うこと無くAmazonでポチっとしてしまいました。

図1 TEACのレコードプレーヤー

図2 SAECのナイフエッジアーム

図3 Sumiko製カートリッジ

  レコードプレーヤーは数日で届きましたが、なにせ初めて購入する本格的なレコードプレーヤーだったので、トーンアームの「針圧(しんあつ:レコードにかかる針の重さ)」や、「アンチスケーティング(針がレコードの内側に引っ張られる力をキャンセルするツマミ)」などを調整するのに少し手間どりましたが、何とか無事セッティングを終了しました。

  スマホもCDもレコードも、出てくる音にさほど違いは無いハズなのですが、レコードを聴く時って、なんとなくワクワクするんですよね。アナログなのでノイズは避けられないし、ちょっとしたことで傷はできるし、取り扱いは面倒だし…サブスクのApple Musicなんかと比べるとほとんど物理的なメリットは無いように感じるのですが、聴くときのワクワク感で言うと他のメディアを圧倒しているように思います。レコードをジャケットから出して、ホコリを払って、ターンテーブルに載せて針を置いて音が出る瞬間を待つまでの時間って本当に楽しいんですよね。

  もともとは学生時代買ったレコードを聴く目的で購入したはずのレコードプレーヤーなのですが、プレーヤーをグレードアップしたのをきっかけにいろんなソースをアナログで聴いてみたい!という欲求が出てきて…アラフィフおやじは時折DISK UNIONをはじめとする中古レコード屋で中古盤を漁っている訳ですが、たまたま自分が欲しかったレコードがドンピシャ見つかったり、ついでにその価格が安かったりすると、とても幸せな気持ちになります(時々運命を感じる時もあります)。さほど珍しいレコードでなければそれこそ牛丼1杯分ぐらいの値段で買えるので、大量に購入したり、高価なプレミアム盤に手を出したりしなければ、レコードはとても健全な趣味だと思います。

  ちなみに「日本レコード協会」のデータによると、レコードの生産数はここ10年で4倍近く増えているのに対し、CDの生産数はここ10年で約半分になってしまっています。アメリカのようにストリーミング音源を取り入れるのが早かった国では、2020年の段階でレコードの売り上げがCDの売り上げを超えると同時に、ストリーミング音源による収入が音楽メディア全体の8割を越える状況になっているとのこと。音楽を楽しむ手段は全体としてはストリーミング音源に移行しつつも、レコードはむしろ市場を拡大しつつあるようです。

  最近では、アーチストが新譜を出す際に、CDやストリーミング音源に加えてレコードもリリースするケースがチラホラ見受けられます。新譜のレコードについてはロット数の関係か分かりませんが4000円を超えるような強気な値段設定がされているものが多く、音質にこだわった重量盤(通常のレコードは120g程度の重さだが、180g程度の重さのぶ厚いレコードをこう呼びます)に至っては1万円近い価格のモノも珍しくありません。

  前回のこちらのコラムの「オンラインセッション」の中でも触れたのですが、「アル・ディ・メオラ」と「パコ・デ・ルシア」、「ジョン・マクラフリン」という世界最高峰の超絶技巧ギタリスト3名による「スーパー・ギター・トリオ」名義の「Friday Night in San Francisco」(1981年)という名盤があります(図4)。実はこのアルバム、翌日の土曜日にサンフランシスコの同じ会場で録音した16トラックのマスターテープが存在し、長らくアル・ディ・メオラ氏の自宅のかび臭い地下室に眠っていたらしいのですが…なんと40年以上の時を経て「Saturday Night in San Francisco」として発売されたのです(図5)!サブスクのApple Musicでも聴くことはできるのですが、アラフィフおやじとしてはこの幻の演奏をぜひレコードで聴きたい!と思い、6000円近くかけて180gの重量盤を取り寄せることとしました。数日後、レコードが届いたのでさっそく聴いてみたのですが…なんとも素晴らしい音で、重量盤のアナログレコードならではの密度の濃いサウンドを十分に堪能することができました。なお、このレコードが届く2日前、新宿のDISK UNIONで中古盤を漁っていたところなんと偶然に「Friday Night in San Francisco」のレコード、しかもレアもののデジタルマスタリングの高音質盤を見つけてしまったので、こちらのレコードも即決で購入してしまいました。いやーこれって運命ですかね?

図4 Friday Night in San Francisco

図5 Saturday Night in San Francisco

  ちなみに中古レコード屋でレコードを購入する前には、通常お店側から「盤面の確認をしますか?」と聞かれるので中のレコードをジャケットから引っ張り出しチェックしてから購入することが多いのですが、運命のはずだったこのレコード、実は盤面の状況が悪く、外から見ても問題がないのに、レコードの溝に一杯汚れが詰まっていてパチパチ・ザラザラと盛大なノイズを発生させるのです。ウウム…はずれを引いてしまったか…。

  アラフィフおやじはレコードをキレイにするのに、「ナガオカ」のレコードクリーナーセット(図6)というおそらく一番ポピュラーな製品を使っていて、大抵の盤面の汚れはこれで落とすことができるのですが…この「Friday Night in San Francisco」の場合、何度スプレーしてクリーナーで拭き取っても、油膜のようなものがうっすらとレコードの表面を覆ったままで、片面の演奏が終わるとレコード針の先に埃っぽい汚れがモコモコ…いう状況。そこで、アラフィフおやじは「オーディオテクニカ」(図7)の「湿式対応」のレコードクリーナーセットを購入して試してみることにしました。このクリーナーはあらかじめクリーニング液でクリーナー面を十分湿らせてから拭き取る方式なのですが、こちらのクリーナーを使ったら油膜のようなガンコな汚れはスッキリと落とす事ができ、パチパチノイズも消えました。いや~オーディオテクニカ優秀ですね~。

図6 ナガオカのクリーナー

図7 オーディオテクニカのクリーナー

  レコードはCDやサブスクに比べて色々と手がかかる存在であることは間違いありませんが、音楽に対する愛着を実感できる貴重なパッケージメディアであると思います。サブスクは聴きたい音楽にすぐアクセスできますが、レコードは利便性とは全くちがった所で音楽を聴く楽しさを提供してくれる存在であるように思います。音楽を聴きながらレコードジャケットの美しさを堪能(アラフィフおやじは額に入れて何枚か壁に飾っています)できますし、盤面のクリーニング等しながらゆっくりと音楽の世界に入り込む事ができます。サブスクの音楽を気軽に楽しむ事を、ペットボトルのお茶を飲む行為に例えるとしたら、レコードを聴くことは、「茶道」の様にゆっくりとお茶の世界を堪能する行為に例える事ができるのかもしれません(我ながら良い事言うなぁ…)。音楽ともっとじっくり向き合いたいと思っている方、是非レコードを聴くことをおススメします!

  アラフィフおやじも、今後も中古レコードとの「運命の出会い」を求めてレコード屋巡りを楽しみたいと思います。

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