ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2020年12月11日更新安全衛生方針の重要項目と展開ポイント ~絞り込みと運用マニュアルの活用~

 3年前に一度方針づくりの課題と活用方法について書きました。会社によって1月スタートと4月スタートに分かれています。1月スタートの会社はこのブログが届くことには、既に方針は完成して決済を受けていると思います。4月スタートは、2月頃の決済と思います。今も安全衛生スタッフの皆さんが頭を悩ましつつ作成し提案(準備)をしていることと思います。多くの会社と仕事をさせていただき、方針のあり方について議論をしてきました。総じて多くの項目をあげすぎていること、具体性に欠け、管理者に質問しても具体的な展開について言えない等の課題は今もあまり変わっていないと思います。もう一度考える機会にしていただけると嬉しいです。

1.安全衛生方針づくりのポイント

⑴ 現状の課題のおさらい

全国の災害発生状況は、死亡災害は2019年に初めて900人をきったものの、5-6年の推移を見ると下げ止まり感があります。また、休業災害は増加傾向にあります。このことは、労働形態の変容や設備の老朽化、極端な利益至上主義、社会環境の変化などから従来効果を上げてきた活動であってもそれだけやっているだけでは、進展しないことを示していると考えて良いでしょう。だからといって目新しい活動をする必要はなく、今までの活動をいかに”深化”していけるかが重要と思います。そのためにも、安全衛生方針が従来以上に重要になってくると考えます。

しかし、前書きで触れたように多くの会社では、「危険予知活動・ヒヤリハット活動の推進」に代表される人に頼った安全活動を方針としています。(良い活動である事は理解していますが形骸化して腹落ちしない、実効性が無い活動になっていることが多いと感じています)また、リスクアセスメントが活動の柱であり、一つの方法であるにもかかわらず目的化していて表づくりで終わっていて、改善活動に結びついていない現状を目の当たりにしています。管理者や現場の人たちが安全衛生方針を具体化して共有化出来ているか、同じ職場の人が同じ目標を言える状況になっているかというと、そうではないという課題を感じています。言葉に表現できて初めて方針が生きていると感じられるのですが、皆さん会社ではいかがでしょうか?

⑵ 重要な項目に絞る(製造業中心の表現になりますので、読者の立場で置き換えてください)

 災害は、不安全状態と不安全行動の掛け合わせと、それらの課題を管理者が率先して環境改善していないことから発生します。よって次のような分類と項目を提案したいと思います。

① 重篤災害の未然防止活動の推進(リスクアセスメントの実施と設備・環境改善活動の推進)

  • 無くしたい重篤災害の設定(過去災の教訓=原因別分類と対策)による職場単位での洗い出しと対策活動の充実
  • 機械・設備横断的な機械安全基準の制定と新設設備の本質安全化の推進
  • 機械安全基準の既設設備への適用‥隔離対策の推進、停止状態の保障(動力遮断など)と停止状態の維持(ロックアウト)の整備 など

② 管理者の率先垂範によるテーマ別、リスクの洗い出しと改善活動の推進

  • 非定常作業・やりにくい・無理な作業、止められない作業・止めにくい作業 など
  • 無くしたい重篤災害に特化した洗い出しと小集団による改善活動
  • 予算化と具体的な目標設定(3カ年計画など)

③ 管理者、監督者など階層別教育・訓練のしくみづくりと実践

  • 教材づくり(わかり易い機械安全基準マニュアル、防ぎたい災害の原因別パターンと兆候、

リスクアセスメント推進マニュアル、安全衛生法のポイント集 職長教育社内版テキストなど)

  • 教育のカリキュラムづくり(管理者教育二日間コース、監督者教育二日間コース、現場観察の実践教育3時間コース など)
  • 非定常作業教育・訓練のしくみづくりと資格化
  • 理解し易い作業標準書(要領書)の作成推進(例:絵で見る正常異常の見える化標準書)

 上記は、私自身がやってきた活動の代表的な項目を羅列してみました。大項目は3-5年変えなくても良いので中分類(具体的な実施項目)に何を選定していくかが重要になります。現在までの活動の課題と照らし合わせて、できるだけ目標が具体的に表現できると良いと思います。改善対象設備と改善件数とか、予算など3カ年計画など少なくとも3-5年先のあるべき姿を示せると良いと思います。

 新型コロナ新規感染者が急増しています。この1年で大分解明できたこともありますが、マスク・手洗い・3密回避・マスク会食・自粛など人の行動・自助に頼った活動を言い続けても防ぐことができない状況になっています。国民の大多数は守るべきことをやっているので、これ以上どうしたら良いのかと言う気持ちだと思います。ワクチンの開発ができていない段階では、正解は無いのかもしれませんが、もっと大きな視点(国・県レベル)でリーダーが組織横断的に人の行動や守るべきことなどを具現化して提示しなければ感染拡大を防止することは難しいと感じます。経済(利益)も大事なことですが、人の命を守ることはもっと大事だと思います。この事例と安全衛生活動の実態と似ていませんか?

2.安全衛生方針・展開マニュアルの作成

 方針は、A-3一枚程度にまとめて提案することが必然でした。よって、大ぐくりした表現にならざるを得ませんでしたが、その中でも特徴をださなければならないので頭が痛かった記憶があります。スローガンをうまく使ったこともありました。「安全・品質・環境は企業活動の根幹」「安全はマネジメントそのもの」は代表的なもので、今でも私の安全活動のスローガンでもあります。

 また、方針の主旨と進め方を、フローとかで表現したり、わかり易くより具体的にイメージできるような解説書を作成しました。手引き書、補足資料のような代物です。「無くしたい重篤災害の設定(過去災の教訓=原因別分類と対策)、職場単位での洗い出し」などはこれだけで推進マニュアルを作成しました。従来のアレモコレモの活動から脱却して、自職場で無くしたい災害を特定して一つずつ洗い出しと改善を全員で進めることや、管理者の行動についてもまとめました。結果として過去5年間で下がらなかった労働災害が、3年間でほぼ半減する事につながりました。やらされ感の大きい活動から自信と達成感を感ずる安全活動の推進につながりました。基本となる活動であり、その後も工夫を重ねつつ活動の柱として残っています(現在のリスクアセスメントそのものと言っても良いでしょう)。そして、非定常作業の洗い出しや改善活動や、管理者教育などにつながり、方向性がしっかりした活動の展開が出来るようになりました。現在は一年や二年と言う短期で成果につながるような生やさしい環境ではありません。富士登山に例えれば9合目まで来たけれどあと一合を登るためには、今までにはない急で過酷な坂道への挑戦や、天候(環境)の急変などへ対応しなくてはなりません。9合目までの来たと同じくらいの努力や時間が必要になるかもしれません。安全衛生方針は、会社・職場の3年後、5年後、いや10年後を描いて提案をしていかねばならないと思います。環境変化も早い時代で見直しも必要になることも多いと思います。ただし、「安全活動は従業員の命を守る普遍的な活動」です。0災害を目ざすためにもまず重篤災害の未然防止であり、“減災”を進めていかねばならないと思います。重篤災害の未然防止活動は誰も反対しないし、全員参加の活動にとって最もやりやすいテーマであると言っても良いでしょう。災害は、職場の問題の代表特性でもあります。全ての仕事の領域に対してアプローチできる唯一と言っても良い領域です。その重要性と意義・役割を担っているという自負をもって会社方針作成にあたってほしいと思います。

 企業に呼んでいただくと、必ず方針の内容と方向性から確認させていただき、トップの方々と意見交換をさせていただきます。方向性について強い信念で語れなければ、従業員一人ひとりに活動を浸透させ命を守ることにつながらないし、企業体質の向上、人づくりなど成し得ないと思うからです。時には、相当厳しい言い方をさせていただき気づきを得てもらうこともあります。”慣れすぎ”は、安全活動に禁物だと思います。トップにものが言えるスタッフになって欲しい、将来に向かう姿を提案して欲しいと思います。安全衛生スタッフのご健闘を祈ります。

 

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