2024年9月18日更新日本の明日は大丈夫?
大きなタイトルにしてしまいましたが、勝手な思い込みで書いてみたいと思います。結論から言えば「大丈夫」だと思います。課題が明確であれば対処は可能と言う前提で考えてと言うことです。これまでの長い歴史の中でも困難とされたことも何とかしてきたわけですから‧‧‧。
今、自然現象や人々の考え方など大きく変化しています。そして課題はますます重く、並大抵のことでは解決しそうもない内容になっていると思いますが、人間の英知を信じたいと思います。皆さんも気づいたことから行動に移してほしいと思います。
1.自然災害の多さ
“停滞”台風10号で多くの被害が出ました。報道では、温暖化により偏西風の位置が北にあり、また、二つの高気圧に挟まれる形となったことが“ノロノロ”台風になったと言っています。台風から離れた東海・関東・東北などで大雨が続き、東海道新幹線が3日も運休すると言うかつてない現象も起こりました。ただ、台風被害による死者数は、6人(行方不明1人)と報道されました。西日本豪雨(2018年)では、300人以上でしたので数値の比較では大きく減少しています。これは、準備時間があったこと、それぞれの意識が高まり早めの行動(未然防止)が実を結び、まさに減災につながったと言えます。激甚化する気象への対応も全くできないと言うことはないと思います。
8/8には「日向灘地震」が発生しました。私が四国で講義中に受講者の携帯が一斉に鳴り響きました。そして政府から初の「南海トラフ地震臨時情報・巨大地震注意」が発表され、地域によっては、
7日間の水・食料・携帯トイレ等の備蓄(ローリングストック)を続ける呼びかけがなされました。
今年は、1/1能登半島地震に始まりました。半島での地震発生時の避難経路や災害復旧対応策などに多くの課題が見えています。自然には勝てませんが、やれることはたくさんあります。「小さな事からコツコツと‧‧‧」は、私が研修でよく使うカイゼンの肝の一つです。阪神淡路大震災の教訓、3.11(東北地方太平洋沖地震)による原発事故の教訓などを忘れずに日々の生活に落とし込んでいくことが大切だと考えさせられます。それにしても注意報・警報が出たときに何をすれば良いのかのアナウンスが足りないように思います。
2.パリオリンピック・雑感
パリ五輪が開催されました。現在、パラリンピックが開催されています。スポーツ好きの私としては、一度に多くの種目が見られるこの大会は楽しみでもあります。しかし、コロナ禍の東京大会後の汚職事件で一気に冷めてしまいました。それまでも「ぼったくり○○」や「商業主義化」等と言われることも多くあり、スポーツ選手の努力を利益・利権のために活用する人たちの行動に違和感が増幅して少し興ざめしています。確かに練習や運営などにお金がかかりすぎ、昔のアマチュアスポーツの祭典という思想は、プロが参加できるようになってからはなくなり、予算がないと何もできない状態になっていることは理解できます。スポンサーが必要なことも分かりますが、あまりにも表沙汰になると冷めてしまうのも事実です。フランスと言うこともありますが、見たい競技が放映されないとか、パラリンピックの報道の少なさからも違和感を覚えます。あの汚職事件はどうなったのでしょうか?
その中でも「やり投げ・北口選手のフィールド種目初の女性金メダリスト誕生」は嬉しかったです。単身チェコに渡り、練習をしてきた事は知られています。オリンピック後に日本に帰国せず、チェコへ帰り大歓迎されている記事を見ると人柄を含めすごいことだなと思います。国代表ではなく、個人が戦っているんだと考えさせられました。
そして「フェンシグ」の躍進です。北京五輪(2008年)でフェンシング初のメダル(銀)確保した「太田雄貴選手」をはじめ関係者が底辺を広げる努力を継続した結果だと思います。マイナー競技をなんとしても広めたいという執念と、そこに憧れる人たちの努力で得た今回の大会の成果です。今後もチームとして更なる進化を遂げていくことでしょう。
それに引き換え、水泳は、メダル一つという残念な結果になりました。ロンドン五輪(2012年)では、「康介を手ぶらで帰すわけにはいかない」と発憤したメンバーが銀メダルを獲得(400mメドレーリレー)しました。この頃は、個人競技である水泳がチームとして練習をして、お互い切磋琢磨して成果を出したと記憶しています。
体操団体は、、最後の鉄棒まで、中国にリードを許していましたが、「諦めるな」と声を掛け合い、背中を押し合った結果として大逆転で金メダルを獲得しました。まさに「チーム・ジャパン」の底力をみせてくれました。ここに明日への明るさが見えてきます。日本の強みはこうしたチームとしての活動が互いを高め合って成果につなげていく特長が他国に勝のではないでしょうか。
企業には、派遣社員や請負社員が増加する現場(その必然性は理解しているが)が多くなってきました。果たして、チームワークの向上や人づくりができるのでしょうか?9/6の新聞に「福島第一原発のデブリ採取 下請け任せ。東電・現場確認せずミス」と一面の見出しにありました。元請け会社も確認していないという、大事な仕事を協力企業に丸投げしていて、本当に廃炉作業を真剣にやっているのかと言いたくなります。こうしたことから日本は、大丈夫なのかと思いますし、大丈夫であって欲しいと願わずにはいられません。リーダーと言われる人たちの奮起が問われています。
3.トップの発言と行動
「極端な利益至上主義」が日本の大企業の多くの不祥事につながっています。そして内部告発でしかものが言えない組織も多くなっていることがとても悲しいです。私が現場指導で感じることの一つに「指示待ち人間」が多くなっていることです。個々人の価値観の変化、社会風土の変化もあるでしょうが、管理者を含め「言われたらやる。言ってくれればやる」といった受け身の人たちが多くなっています。責任をとりたくないと言う気持ちも強くなっている気がします。与えられた情報を、自分なりに咀嚼して付加価値をつけていく、その結果として達成感を味わうと言うことがなされなくなった組織は死にます。
ある県知事の問題が日々クローズアップされています。真実は分かりませんが、トップに立つと人が変わったと言われる場合があります(その地位にあった言動は必要ですが‧‧‧)。変わり方が問題なのです。自分中心の考え方を押しつけるだけでは絶対人はついてきません。トップダウンで方向付けを示しつつ、みんなの意見を聞き、一緒になって考え、行動する姿勢が必要なのです。言葉で「県民のため(現場目線)」と言うだけでは空々しく聞こえます。行動が伴わなければならないのです。自分に意見を言ってくれる人、耳の痛い話をしてくれる人を大切にしていくトップが一層必要になっています。部下を死に至らしめることなど論外です。
自民党総裁選や野党の党首選もマスコミを賑わせています。しかし、明日の日本をどうしたいのか少なくとも私には何ら響く言葉が聞こえてきません。目先の、自分たちのための論戦だけでは、国民には届きません。国民もこうした人を選んだ責任もあります。裏金やキャッシュバック等お金にまつわる課題はどうしたいのか、国民から税を取ることしか考えない議員はいらないと思います。国民一人ひとりが、いろいろな活動に積極的に参画していかねば何も変わりません。
4.嬉しかった言葉
先日、ハイブリッドで講演をしました。会場以外でも、数百人の方々がオンライン聴講をしてくれました。その中の一人が終了後、メールで感想を述べてくれました。真意をくみ取ってくれたことが嬉しかったのでメールの一部(ほぼ原文で))を紹介させていただきます。(文責:古澤)
・「今までの各種研修や講演会は、人の言葉の引用であったり、理論だけで現場実践につながらなかったり、私の考えに全く響かなかった(仲間の死亡災害を経験している)。今回は、講演内容が、自己発信力が高く、内容が濃く、正論で非常によい刺激になりました。今回は、響きました。」
・「力のある経営者のもとで従うことだけでなく、自分の意見を持ち→意見(陳情)され→その熱意を認められ「それならやってみろ」と実行に移せたことが想像できます。」
・「古澤さんの、冗談トークにノリの悪い企業ではありましたが、直接安全指導頂き、大幅改善に取り組んでいくべきと感じました。」
・「“死ねない職場環境、ケガをしない職場”が構築できればヒューマンエラーや、無知による横着行為、不安全行動があっても死なせない!が確立でき不慮の事故により、“誰も悲しまずにすむ”が叶うことになります。それを構築するには、力(行動力、説得力)が必要です。」
・「“安全活動は経営そのものを変える”の考えで、日本企業の安全環境の向上に益々のご活躍を。」
等です。私が「現場目線」でやってきた実践論が、悩みを持った人たちには特に響くのだと改めて思わせてくれました。教育・講演は講師側と受け側との波長があってこそ成り立つものだと言うことも改めて思いました。先回も触れましたが、「相手に届く言葉・話し方・考え方」をもっと養っていかねばと考えさせられました。
小さな改善・改革の積み重ねが、結果として日本全体を良い方向に導くものと信じてやまないです。それぞれの持ち場立場で、今日より明日、明日より明後日と良くしていく努力が、もっともっと良い日本へ向かっていく原動力になると思います。
記事一覧
- ヒューマンエラーは原因でなく結果
- 日本の明日は大丈夫?
- “話す力・伝える力”と“言葉の意味”を考えてみる
- 安全活動は足し算?引き算?
- コミュニケーション力向上の心構え
- 最近の関心事から“雑感”
- 安全教育を充実させていく“肝”
- 先人の偉業と教訓そして実践
- サッカーワールドカップと俯瞰力
- 安全衛生法制定50周年と今後のあり方考察
- 水の大切さと恐ろしさ
- 冬季オリンピックと平和を考える
- コロナ禍の教訓を労働安全活動に活かす ~2021全国産業安全大会・講演要旨~
- モノの見方・考え方を一考する ~本:“どうせ死ぬから言わせてもらう”から~
- 正直に生きる・語ることの大切さ ~“生き様”を振り返る~
- 新型コロナ禍の更なる課題・再考 ~件数・パフォーマンスより内容重視の活動へ~
- 安全衛生方針の重要項目と展開ポイント ~絞り込みと運用マニュアルの活用~
- “新型コロナ禍”から考える教訓-2 ~行動の変化~
- 思い込みの怖さと正しい判断・行動 ~ “新型コロナ禍”から考える教訓~
- “野村克也元監督”の教え・あれこれ ~人を育て残す事の大切さ~
- “ラグビーロス”とその後~“ラグビーワールドカップの感想と実践の大切さ“~
- “人間性(心の持ち方)”について考える~ラグビーワールドカップと“故・平尾誠二氏”の生き方~
- より・安全で、安心な時代“令和”をつくろう~“平成”を考えつつ~
- 継続と深掘り・“不断”の努力の大切さ~“東日本大震災”から丸8年~
- チームワークとリーダーの役割
~“大坂なおみ”全豪オープン優勝~ - ポジティブシンキングの実践 ~“箱根駅伝”の教訓~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その4(最終回) 「足:踏み込む」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その3「口:問う」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その2「目:観る」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その1「耳:聴く」について~
- ”環境”の大切さと人の行動 ~“命を脅かす”気候変動~
- まず”減災” 目ざせ”ゼロ災” ~大阪北部地震の教訓~
- “危険なタックル問題”から人の育て方を考える
- 作業標準書・作業手順書の作り方と活用法 ~“守・破・離”の心~
- 薬傷災害から活かし方・つなぎ方を再考する ~事後の百策より事前の一策~
- 気づかい・個のレベルアップとチームワーク ~平昌オリンピックの感動からの教訓~
- 後継者・人の育成を考える ~人の成長をどのようしてサポートするのか~
- 気づき・気がかり粗末にするな 気づいたらすぐ行動に移せ!
- 安全活動と品質活動の“根っこ”は同じである ~安全活動から“本音の活動”を深掘りしよう~
- 機械安全基準の制定と進め方 その2 ~安全・品質・環境は企業活動の根幹である~
- 機械安全基準の制定と進め方 その1 ~激しい向かい風の中を”航行”~
- 「そうだ、古澤先生に聞いてみよう」コーナーへのご投稿について
- 実践的なリスクアセスメントの進め方
~隔離対策のポイント~ - 新コーナー【そうだ、古澤先生に聞いてみよう!】いよいよスタート!
- 実践的なリスクアセスメントの進め方
~「現場リスクアセスメント」の進め方~ - 実践的なリスクアセスメントの進め方 ~重篤な災害に的を絞った洗い出し~
- 安全衛生方針の作り方・活用の仕方
~もっとわかり易く~ - 1年間を振り返って ~現場目線からの提案と報告~
- 非定常作業に特化した活動‥その4 ~重要な柱「ソフト対策」の進め方~
- 非定常作業に特化した活動‥その3 ~真の要因に対するハード対策の推進~
- 非定常作業に特化した活動‥その2 ~洗い出しのキーワードとカイゼンの実践~
- 非定常作業に特化した活動 その1 ~定義付けと洗い出しのポイント~
- 管理者研修の実践 ~第75回全国産業安全衛生大会(in 仙台)講演骨子~
- “新しい安全”「Safety 2.0」と言う考え方
- 重篤災害に的を絞った活動の勧め
- 人を育てる安全巡視の進め方
- 「みる」と「みえる」の違い
- 安全活動はカイゼンの入口と捉えてみよう
- 腹落ちした活動とするには「具体化」と「共有化」
- 産業現場で起きている災害の現状と課題
- 古澤 登(ふるさわ のぼる)プロフィール