2023年9月20日更新最近の関心事から“雑感”
今年は、WBCで、みごと優勝を飾るという嬉しい出来事がありました。もうかなり前にあった出来事のように感ずるのは私だけでしょうか?大谷選手、ダルビッシュ選手など選抜された人全員が栗山監督を中心に戦い抜いたことで「個の力の大切さとチームワークそして先を読んだ采配:リーダーシップ」等を強く印象づけられました。今回は、最近の関心事に対して私が感じた事を書きたいと思います。
1.甲子園(全国高等学校野球選手権大会)から
(1)主張すべきは主張して良い。しかし、謙虚に!
今年は、“新型コロナが五類へ移行”になり声出し応援や楽器演奏などもOKとなりました。今年は、慶応高校(神奈川)の107年ぶり2度目の優勝で幕を閉じました。“応援のあり方”“自主性”“猛暑日の甲子園のあり方”など話題もにぎやかでした。昨年、仙台育英に2回戦で負けたことから、仙台育英に勝って日本一になるという目標をたて、一人ひとりが「何が足りなかったか」を考えレベルアップを図った結果として、決勝戦でその目標チームを破って優勝を果たすという漫画のようなストーリーとなりました(WBCもそうでしたがスポーツは面白いですね)。選手の活躍する姿は素晴らしかったと思います。キャプテンが「日本一になって自分たちの正しさを証明できた。高校野球を変えたかった」と言っていました。「監督の言うことだけを聞いてやる野球は楽しいくない」など今までならこうしたことは思っても言わなかったことなのでしょうが、堂々と話せる若者達が頼もしくも感じました。が、反面、「自分たちができたのだからみんなもそうすれば‧‧‧」と聞こえ、表現の仕方ですが、少し謙虚さが必要かなとも思いました(慶応の関係者の皆さんには申し訳ないですが‧‧‧)。全国で約3,500校の高校球児達がそれぞれ目標に向かってみんな頑張り、負けても得るものがあったと思います。まさに青春の形は違います。環境もそれぞれ大きく違います。「できるところからみんなで変えていきましょう」位で良かったと思います。昨年の仙台育英の須江監督が優勝インタビューで「青春は密です」「コロナ禍で苦しい中頑張ったすべての高校生に拍手を」と言ったことばが浮かびました。相手を思いやる気持ちを大切にして成長していってほしいと思います。
(2)自主性の大切さ。その奥にあるものを見ることの大切さ
両校とも自主性を大切にしているところは共通しているなと思いました。安全活動でも「自主性を重視した活動」など親会社や本社の人がよく方針として使っています。使い方が少し違うのではないかと思う点があります。現状を把握して(全体を見る、流れを読むなど)今自分が何をすべきか瞬時に判断できることは、スポーツのみならず、何事にも欠かせない能力だと思います。求めることは良いのですが、知識や経験が無い人たちに丸投げするだけでは実現しません。昨年、仙台育英の須江監督が言った言葉(昨年9月のこのコラムに紹介)に、「一軍に入るための目標を全員に示した。例えば、投手は135km以上の球速、走力は50m7秒以下とか。そして個々人ごとにどのようにトレーニングしていくかを話し合い、そして個々人が納得して努力していく。さらには、組織(チーム)なので協調性や判断力などを総合的に考え最終的に選手を決めてきた。」と言っていました。ここが大切なのです。それぞれのポジションや経験値などから、もっと「具体的」に目標とプロセスを示し、「目の前の課題・何が足りないか」を話し合い「納得性」をもって活動を進めてこそ、自主性が実現していくのだと思っています。「災害ゼロ達成」とか「日本一」とか「売り上げを200%up」などと言っているだけでは自主性どころか従業員を追い詰め、悪事を働く(ウソをつかせる)事になってしまうのだと思っています。
2. バスケット パリ五輪出場権獲得
日本代表チームが「カーボベルデ」(初めて聞く国名でした)との戦いを勝ち抜き、パリ五輪出場権を自力で決めました。TV観戦をしていましたが第4Qでは、18点差があったのに3点差まで詰め寄られドキドキしてみていました(それまでの日本の戦い方を逆にやられてしまい負けるのではと思いました)。優勝したのでもなく、決勝トーナメント進出でもない順位決定戦でありながらすごい盛り上りでした。難しい目標を達成した喜びを共有できたのです。背の高さが優劣をつけるといっても良いスポーツなのに、キャプテン富樫選手は167cm、ポイントガードの河村選手は169cmと小さいですが動きの速さで相手を攪乱してスペースをつくり3ポイントシュートを呼び込むというすごさ。比江島選手や富永選手の連続3ポイントシュートもすごかった。トムヘッドコーチの作戦が日本チームに合うと選手が「腹落ち」して、どのチームにも負けない練習をしたとありました。試合中「自信を持ちなさい。自分を信じなさい」と言う声を常に出していたように思います(勿論、練習では厳しいことを言っていると思いますが、本番では細かいことを言っても仕方ないのです)。私の妻(ソフトボール日本一の投手でした。)もよく言っていましたが「練習は試合のように、試合は練習のように出来るチームが強い」「1点差で勝っていて、最終回2アウト満塁、3ボール2ストライクの場面で、真ん中に投げても打たれない練習を重ねた。自信をつけるため」と。安全活動や人づくりにも共通の考え方「目標は高く、目の前の課題から一歩ずつ」ですね。
3.陸上世界選手権やり投げ 北口榛花選手 日本人初優勝
決勝の最終投てきで大逆転の勝利でした。こういう大きな大会でないとTV放送がない、言い方は悪いですがマイナーなスポーツです。コツコツと自分を信じて「自分が必ず歴史をつくる」という意気込みで大会に参加したとありました。2ヶ月前の日本選手権では3連覇を逃していたのです。「トレーニングすればするほど記録が出ると思っていた。しかし、自分の特長である体の柔らかさを生かし切れていない」事に気づき、練習方法を変えて、筋力トレーニングの負荷を7割程度にするなどの工夫をして望んだ結果が金メダルにつながったのだと(チェコのトレーナーのやり方があっていたとも言っていました)。力を抜くことができるまでには、相当な力が入った練習もしていたでしょう。ゴルフも力を抜いて軽く振れば曲がらずに、距離が出るのですがそこまでの域に達するには、目一杯力を入れた練習も必要だと言うことではないでしょうか。何事も積み重ねが大切です。
4.世界水泳選手権2023 池江璃花子選手 13レースを泳ぐ
2019年1月白血病と診断され、闘病生活に入った事は知られています。それまで、泳ぐたびに新記録・優勝という選手であり、伸び盛りでした。本人が「死にたい」と考えたこともあったと言うくらい苦しい治療を続け、世界選手権に戻ってきたことだけでもすごいことだと思います。TVを見つつ「もう無理しなくていいよ。また、再発したら大変だから」と親のような気持ちで見ていました。池江選手が闘病から復帰し練習を始めたころ、以前できていたことができない、まったく思うように動けない自分と向き合い、「一つひとつ目の前のことができるようになる喜び」を感じつつオリンピックへ出たいという気持ちで練習をしていたと言っていました。
労働災害防止で考えれば、「カイゼン活動は、まず小さな事からコツコツと。そして達成感を感じてこそ次への挑戦意欲が湧く」といつも話しています。ノーベル賞を受賞した先生方も「失敗の中から見つけた発見」が対象となったと言っていました。「失敗は活かせば教訓、失敗を活かさずそのままにするから失敗なのだ」と言う言葉もよく使います。常にポジティブに考える習慣を身につけたいものです。
5.組織(チーム)は、リーダーの器で決まる
中古車販売を巡るパワハラや環境破壊などがマスコミに取り上げられています。従業員(ES)や顧客(CS)を大切にしない経営ではいつか破綻するという教訓がいまだ活かされていません。どうすることもできない人間の性なのでしょうか。挙げ句の果てに問題が顕在化した途端「トップは身を隠して」何ら責任をとろうとしません。芸能事務所のセクハラ問題も世界的ニュースになっています。また、品質の不祥事なども続いています。「会社は私利私欲のためでなく、公器と考えよ」と言った人もいます。「会社(組織)はリーダーの器以上にはならない」とも言われています。
円安になっている日本の状況は、国民の生活を苦しめています。電気代は上がるが電力8社の利益は過去最高とか、物価高の中、企業の利益が向上とか、海外への援助資金は潤沢に、国民からはとれるものはとろうとか、ガソリンの2重課税の解消すらできない政治など、私たちの生活感とは全く違う違和感だらけの出来事が多すぎます。皆さんも感じていることでしょう。でも、行動に移さない日本人になってしまっています。慶応野球部の選手のように声を上げて“日本を変えていこう”と言い続けなければいけないのだと思います。「リーダーとは」「一人ひとりの責任とは」ということを改めて考えさせられます。
私は、安全活動の進め方を指導させていただいていますが、「安全はマネジメントそのもの」と考え、「元気な人と職場づくり」「モノづくりは人づくり」「人の幸せにつながるためのカイゼン活動」など安全活動とは直接関係の無いような(実は大ありなのですが‧‧‧)話しを織り交ぜつつ「経営層には厳しく、現場には優しく」実践をさせてもらっています。
- 時事ネタを取り上げつつ、あくまでも私個人としての考え方を書かせてもらいました。事実とずれていることがあったら修整していただければと思います。元気をもらえる出来事も多いですが、怒りを覚えるような出来事も多いです。将来の日本が、子供や孫達が少しでも安心して過ごせていける世の中になっていく、いや、していくことを皆さんと共有したいです。
記事一覧
- ヒューマンエラーは原因でなく結果
- 日本の明日は大丈夫?
- “話す力・伝える力”と“言葉の意味”を考えてみる
- 安全活動は足し算?引き算?
- コミュニケーション力向上の心構え
- 最近の関心事から“雑感”
- 安全教育を充実させていく“肝”
- 先人の偉業と教訓そして実践
- サッカーワールドカップと俯瞰力
- 安全衛生法制定50周年と今後のあり方考察
- 水の大切さと恐ろしさ
- 冬季オリンピックと平和を考える
- コロナ禍の教訓を労働安全活動に活かす ~2021全国産業安全大会・講演要旨~
- モノの見方・考え方を一考する ~本:“どうせ死ぬから言わせてもらう”から~
- 正直に生きる・語ることの大切さ ~“生き様”を振り返る~
- 新型コロナ禍の更なる課題・再考 ~件数・パフォーマンスより内容重視の活動へ~
- 安全衛生方針の重要項目と展開ポイント ~絞り込みと運用マニュアルの活用~
- “新型コロナ禍”から考える教訓-2 ~行動の変化~
- 思い込みの怖さと正しい判断・行動 ~ “新型コロナ禍”から考える教訓~
- “野村克也元監督”の教え・あれこれ ~人を育て残す事の大切さ~
- “ラグビーロス”とその後~“ラグビーワールドカップの感想と実践の大切さ“~
- “人間性(心の持ち方)”について考える~ラグビーワールドカップと“故・平尾誠二氏”の生き方~
- より・安全で、安心な時代“令和”をつくろう~“平成”を考えつつ~
- 継続と深掘り・“不断”の努力の大切さ~“東日本大震災”から丸8年~
- チームワークとリーダーの役割
~“大坂なおみ”全豪オープン優勝~ - ポジティブシンキングの実践 ~“箱根駅伝”の教訓~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その4(最終回) 「足:踏み込む」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その3「口:問う」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その2「目:観る」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その1「耳:聴く」について~
- ”環境”の大切さと人の行動 ~“命を脅かす”気候変動~
- まず”減災” 目ざせ”ゼロ災” ~大阪北部地震の教訓~
- “危険なタックル問題”から人の育て方を考える
- 作業標準書・作業手順書の作り方と活用法 ~“守・破・離”の心~
- 薬傷災害から活かし方・つなぎ方を再考する ~事後の百策より事前の一策~
- 気づかい・個のレベルアップとチームワーク ~平昌オリンピックの感動からの教訓~
- 後継者・人の育成を考える ~人の成長をどのようしてサポートするのか~
- 気づき・気がかり粗末にするな 気づいたらすぐ行動に移せ!
- 安全活動と品質活動の“根っこ”は同じである ~安全活動から“本音の活動”を深掘りしよう~
- 機械安全基準の制定と進め方 その2 ~安全・品質・環境は企業活動の根幹である~
- 機械安全基準の制定と進め方 その1 ~激しい向かい風の中を”航行”~
- 「そうだ、古澤先生に聞いてみよう」コーナーへのご投稿について
- 実践的なリスクアセスメントの進め方
~隔離対策のポイント~ - 新コーナー【そうだ、古澤先生に聞いてみよう!】いよいよスタート!
- 実践的なリスクアセスメントの進め方
~「現場リスクアセスメント」の進め方~ - 実践的なリスクアセスメントの進め方 ~重篤な災害に的を絞った洗い出し~
- 安全衛生方針の作り方・活用の仕方
~もっとわかり易く~ - 1年間を振り返って ~現場目線からの提案と報告~
- 非定常作業に特化した活動‥その4 ~重要な柱「ソフト対策」の進め方~
- 非定常作業に特化した活動‥その3 ~真の要因に対するハード対策の推進~
- 非定常作業に特化した活動‥その2 ~洗い出しのキーワードとカイゼンの実践~
- 非定常作業に特化した活動 その1 ~定義付けと洗い出しのポイント~
- 管理者研修の実践 ~第75回全国産業安全衛生大会(in 仙台)講演骨子~
- “新しい安全”「Safety 2.0」と言う考え方
- 重篤災害に的を絞った活動の勧め
- 人を育てる安全巡視の進め方
- 「みる」と「みえる」の違い
- 安全活動はカイゼンの入口と捉えてみよう
- 腹落ちした活動とするには「具体化」と「共有化」
- 産業現場で起きている災害の現状と課題
- 古澤 登(ふるさわ のぼる)プロフィール