2018年7月17日更新まず”減災” 目ざせ”ゼロ災” ~大阪北部地震の教訓~
また自然災害による犠牲者が出てしまいました。防ぐことのできた災害です。真剣に”人の命を救う活動”を考えてみましょう。
1.ブロック塀の下敷きになって9歳の子が死亡
①なぜ活かされない教訓
大阪北部地震(震度6)が発生。計測が始まって以来、初の大きな地震とニュースで流れていました。私自身仕事で良く訪れる場所だけに心配をしました。多くの家屋・工場で被害が出てしまいました。5人の方がなくなったという悲しいニュースが流れました。その中で9歳の将来のある・夢のある女の子の命が失われました。親の気持ちを考えると辛いです。原因は、通学途中、それも学校のブロック塀が倒壊してその下敷きになったと言うことでした。私は、即座に「学校や行政や親は何をやっていたのか?」と言ってしまいました。
②未然に防ぐ機会はあった
20年位前と記憶していますが、東北の地震の教訓からブロック塀の基準ができて、私の住んでいる町では、すべての通学路のブロック塀が計測器による点検がなされています。隣人の家のブロック塀が鉄筋の数が少なく、取り壊しの指示を受け植木に代えたことをはっきり覚えています。
今回の地震の後に分かったこととして、以前にも父兄などから危険性の指摘があって今回事故を起こしたブロック塀は3回点検が行われたと報道されました。いずれも問題なしとされてしまったとのことです。無資格者が点検したとか、行政が目視で確認しただけだったとかで、気づいていながらしっかりした行動をとらなかったことで今回の悲しい事故につながってしまったのです。
何とも言いようのない怒りがこみ上げてきました。その後も、700箇所以上の違反のブロック塀があり取り壊しをはじめたとか、それ以降も全国で違反数がふくれ上がっていきました。ナゼこうなってしまうのでしょうか。
③優先順位づけも大切
事故が発生すると、全てのブロック塀を調査して全て対策をとろうという指示が出されますが、行政の事情も塀の持ち主の事情もあるでしょう。危険である事の問題の共有化は最低限必要だと思います。「子供の命を守ろう。優先的に通学路の安全確保をしよう。」など、対策の優先順位付けも必要なのではないでしょうか。
人の命を守ることは、行政や私たち安全スタッフ、管理者の最も大切な仕事のはずです。起こる前に何ができるか。100点でなくても打てる手はあったと思います。製造現場の災害の横展(水平展開などとも言う)に似ていませんか。今でも災害が発生すると全ての災害の横展をしている会社があります。例えば、100件の項目を一度に実施するような状況です。
現場は、生産活動をしています。その中で更なる上乗せの安全活動をする事は、なかなか難しいと思います。的を絞っていくしかないのです。
重篤な災害に的を絞り込んで展開することをもっと進めてほしいです。そして、100点でなくとも、10点でも20点でも何もしなかったときに比べれば、少しでもカイゼンされている訳で、災害発生確率は下がっていきます。
チーム内で課題を共有すること、全員がひとつの方向に向かってカイゼン活動をしている過程では事故は起こりにくいのです。本社や管理部署の都合だけで指示を出さないことが大事だと思います。
2.”減災”と言う考え方
ゼロ災運動を否定するものではありませんが、ゼロ災でなければならないという言葉だけを言いつづけても、現場では、腹落ちしません。休業度数率=1の場合、大ざっぱに言えば500人の職場で年間一件の発生確率です。50人ならば10年に一件、5人ならば100年に一件の確率になります。つまり、ほとんどの職場は、ゼロ災が続いているのです。
会社全体で言えばゼロ災でないとしても、ゼロの続いている職場が多くの横展をしろと言われても腹落ちしないと思います。情報は大事です。しかし、情報を受け取った側が、自分達の今までの活動と照らし合わせて、不足している点は何かを考え、何を重点に対策を進めるかを決めさせるべきだと思います。そして具体的に対策を企画・推進する形をとれば、自主的に決めたものは必ず実行するはずです。管理者は、費用と時間を確保して、アイディア提供とフォローをする事が大事な仕事ではないでしょうか。
地震対策研究会で、住民全員が一つずつ設備対策をとって地震に備え(例えば、家の中・職場で転倒する書棚や設備がないか確認して固定すること)食料と水を3〜7日間持ってくれれば何もしないときの1/10の被害になると報告をしていました。これを「減災活動」と言っていました。私は、労働災害もこういう考え方で良いのではないかと思っています。
活動の柱であるリスクアセスメントは、まさに、ランクⅣをⅢに、そしてⅡにⅠにとランクダウンする活動です。共通するのではないでしょうか。まず減災。対策を進める方も気持ちを楽にして取り組むことができ、”やったふり”はしなくてすむでしょう。管理者は、活動が前に進んでいれば、0点よりは良いので、褒めてやって欲しいです。足らざる点は、アドバイスをして次のステップに向かって行く”気づき”を与えることが役割だと思います。
大阪北部地震での死者5人の中で80歳代の男性が本棚の下敷きになり亡くなりました。”つっかえ棒”だけでもやっていたら助かった命だと思います。私は、阪神淡路大震災の教訓として家の中にある縦長のもの(書棚、食器棚など)は、全て固定をしました。設備メーカの役員の時は、避難路の周囲の設備は全てアンカーボルトなどで固定して、ガラスの飛散や落下物を無くす対策を進めました。まず、人の命を守る対策が大事だと言うことを教訓として心に刻んでいるからです。
保全マンが稼働しながら設備の不具合を見つけるために危険源に近づくこともあります。ロープ一本で自分の行動を規制していれば、あるいは固定バーを一本つけておけば身体全体が持って行かれることはないと思います。対策を進めるステップについて考えて欲しいと思います。
3.目ざせ”ゼロ災”
私たちは、労働災害ゼロを目ざして活動をしています。小集団単位で、ゼロ災を毎年365日続けていく活動が好きです。たまたまゼロではなく、この活動をやっているからゼロが続いていると言えるような活動を進めていきましょう。”アレモコレモの活動”ではなく”的を絞った活動”の積み重ねこそが大切だと思っています。
私は、5人の集団(チーム)を元気にできればどんな会社でも元気になると思ってやってきました。20チームで100人、1000チームあれば5千人の会社と考えてみたらどうでしょうか。
どの組織にもバラツキはあります。全部を一気に元気にすることが難しければ、1/3を元気にする努力をしてみてはどうでしょうか。会議でも1/3が元気に発言すれば会議全体が活発になります。発言しない人も次第に引っ張られて発言をするようになるものです。
いろいろな方法があっても良いと思います。皆さんの知恵を、そして実践した事例を是非お聞かせ下さい。
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