ピルツジャパンのブログ「裏ピルツ新聞」

2016年9月21日更新人を育てる安全巡視の進め方

1.何事も「考え方」が大切

京セラの稲盛氏が「考え方」×「情熱」×「能力」=結果 という方程式を使って考え方の大切さを説いています。この3つの要素は個人によって「バラツキ」がありますが、稲盛氏は情熱や能力は「0〜100」で表し、考え方は「-100〜+100」で表せるとあります。つまり、考え方だけがプラスにもマイナスにも振れ、考え方や取り組む前の姿勢がマイナスだと結果はマイナスにしかならないと言う意味です。

安全活動で考えてみると、「一生懸命やったって災害が発生すればどうせ怒られるのだから、やってもやらなくても同じ」とか、「安全活動なんか言われたことだけやっておけば良い」などのマイナス思考を持っていたら楽しくないし、結果も伴いません。遊びでも「付き合いだから仕方ない」「順番の役回りだから仕方ない」などと考えると楽しくない時間を過ごすことになります。つまり、仕事でも、遊びでも前向きに考えること、そのように考える習慣を身につけなければ人生が楽しくなくなってしまうということだと思います。

 

2.安全巡視の指摘合戦はやめよう

それでは、安全巡視の進め方について考えてみましょう。私の経験では、ほとんどの会社が指摘合戦、指摘件数競争をやっていました。確かに、現場の人たちが不安全行動をしていた場合、指摘して修正しなければならないと思います。

しかし、一生懸命やっている人たちが安全巡視(私はパトロールと言う言葉が嫌いなので巡視と言っている)で指摘され、それも何件も一度に言われて言い返すことも出来ず、暗い気持ちで作業する方がよほど悪影響を与えてしまうと思います。

かつて工事実施中に安全巡視がある場合、その時間帯だけ休憩にするといった現象もありました。また、巡視当番者が「次は自職場が巡視対象なので、しっぺ返しを恐れて不具合に気づいたが黙っている」という悪影響まででていることもありました。良くしたい気持ちは一緒だと思いますが、結果が全く伴いません。巡視は何のために誰のためにやるのかという「考え方」の持ち方の差だと思います。

 

3.まず褒めて、そして課題を与えよう

現場では、初めからルールを破って仕事をしようと考えている人はいません。ルールを守っていこうと考えています。99%守っていても「守りにくいケース」や「守れないケース」が必ず生じてきます。ここを指摘されては「ルールは守れ」と言われているので反論できません。

大切なことは、一生懸命正しい作業をしていたらそのことを認め、「いつもキチッとやってくれてありがとう」とまず褒めることではないでしょうか。そしてナゼ守れなかったのか、ナゼそのルールが決まってきたのかなどの背景やねらいと共に、一緒になって考える姿勢が大切ではないでしょうか。

私の経験でも、「巡視の前日にルール集をしっかり読んできた」という役員と巡視をしたことがありました。ルールの勉強は良いのですが、そのルールから外れていることだけを探そうとしているのです。私は、重篤な災害になるかならないかという視点で観察し良くやっていれば「いいね!」と褒めます。そして「更に良くするためには」という視点で課題を一つ提案します。

そうすると受けた人たちは、「ありがとうございます。考えてみます」と前向きな答えが返ってきます。一緒に回った役員の感想は、そういうやり方だったら「ルールを勉強しなくてもできる」という言葉でした。

そうでしょうか? 巡視は、より良くしていくための活動であり、ケガをしないでほしい・人として成長してほしいという気持ちから出た言葉でなければ、相手の心に響かないと思います。

私の巡視は、現場から”ウエルカム巡視”で、相手から「ここをみてほしい。どうしたらよいかアドバイスをほしい」という言葉になってかえってきました。相手の立場に立って考えること、指摘より指導がいかに大切かと言うことだと思います。心のつながりがない指摘ほどむなしいことはありません。

 

4. 「定点観察」と「相互観察」をやろう

 巡視の方法として、決められたコースをさーっと通り過ぎるような巡視はやらない方が良いと思います。これこそ形式的な活動と言わざるを得ません。観察場所をいろいろな要素から決めて、重点的に巡視することをお勧めします。

一カ所で最低30分は観察してください。そうすれば作業者全員に一声掛けることができます。どうしたらケガをする事が出来るか」「一つだけ手を打つとしたら」「呼称のワンポイントは」など相手に考えさせるよう問いかけてほしいと思います。

問われれば誰でも考えます。考える視点を提起することによって、どのようにすればケガをする事が出来るか、どうすれば防ぐことができるか、自らそして仲間と考える習慣ができてきます。これを「問いかけ育成」と名付けています。

さらに大切なことは、出来るだけ名前を呼んでから声を掛けることです。名前を呼ばれると嬉しいし、真剣に応えなければと言う気持ちになります。このようなやり方を「定点観察」と呼んでいます。

また、人は、自らの経験値を判断基準にしています。毎日同じことをしていると「当たり前」と言う意識が強くなり、危険に対しての感受性が弱くなることがあります。そのためにも外部の人から見てもらうことが大切になってきます。

同じ社内の人でも異職種・異職場の人と現場観察をすると「目から鱗」のような違った視点が得られることがあります。作業者を観察者にして職制が作業をしてみせると言う方法もあります。工事業者間でやることも効果的です。これを「相互観察」と呼んでいます。海外の工事関係者間でこの活動を取り入れたところ、災害の減少に大きな成果をだすことができた事例もあります。安全巡視の目的は何?という考え方の部分です。

 

5.自慢大会をやろう

巡視で得たカイゼンのヒントを全員で考え、対策をとっていく。その結果に対して職制やスタッフは褒めてから、さらにカイゼンが進むためのアドバイス・課題を与えることが重要になります。答えを全て言ってしまわず、30%程度の方向性を示すと良いでしょう。

相手に考えてもらい、現場の人たちの知恵で現場にあったカイゼン案を出してもらうことが、次のカイゼンに向かう大きな原動力になります。まさに、小集団活動の目的でもある達成感を味わってもらい個のレベルを上げ、チームワーク力の向上につながっていくように仕かけていくことが大切になります。

そしてカイゼン結果を発表する場として「自慢大会」を開催していくようにすれば成果の横展開もできます。巡視をどのように活用して人を育てていくことにつなげられるかは、企画するあなた次第です。

褒めて育てる安全巡視

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