2018年8月22日更新”環境”の大切さと人の行動 ~“命を脅かす”気候変動~
“命を脅かす”高温の日が続いています。名古屋では連日40℃を超える日が続き、マスコミでは「気をつけよう」と連呼(?)しています。熱中症で多くの方が亡くなるという異常な状態が続いている今、改めて「環境の大切さと人の行動」について考えてみましょう。
1.人はどのような環境で生きていけるのか?
① 難しい課題への一歩、何ができるか?
豪雨、地震、台風そして灼熱の夏と、人間がいかに小さい生き物か自然に思い知らされている気がします。「危険な気温」と言う言葉は、今まで聞いたことがありません。体温が40℃になったら人は動くことができませんし、命の危険が伴います。気温が40℃などとは考えもしませんでした。「気をつけて下さい」ではなく「外出禁止」にすべきと思うほどです。人がどのくらいの気温・環境で生きていけるのか、試されているようにも思いたくなります。
「30年に一度、50年に一度の‥」という言葉も、もう新鮮に聞こえなくなりました。地球が悲鳴を上げていて、このままでは、地球が破滅するのだろうという危機感さえ抱いてしまいます。地球環境は、私たち人間が壊しつつあるように思います。後戻りできないことかもしれませんが、このままではきっと破滅に向かうのでしょう。
一人ひとりができることは限られていますが、熱エネルギーを少しでも減少していかねばと思います。しかし、家の中でも35℃を超えると冷房なしではとても生きていられない気がして、冷房のお世話になっています。難しい問題ですね。
② 作業環境と作業性
私が社会人になった頃は、事務所にも冷房はなく、扇風機が主流でした。工場も空調などはなく入口に「氷柱」を立てて少しでも”涼しい感じ”を出していたし、食事には梅干しはつきものでした。最近は、さすがに作業環境も改善されていますが、6〜7月の現場観察指導では、外気は体温以上の暑さに加え、工場によっては灼熱の工場もあり、作業服まで汗びっしょりでした。夏の現場指導はやめたいという気持ちにもなりました。
また、騒音レベルが90〜100dbもある工場にも行きました。会話ができないレベルです。耳栓をして作業している人たちとのコミュニケーションを大切にしようと言っても、他人事にしか聞こえない状況も目の当たりにします。
こういう環境で一日中働く人は、とても大変です。集中力が途切れて、行動にも影響が出てしまいます。ケガにも直結する可能性が増加し、離職率にも影響してきます。
労働安全活動と労働環境活動の違いは?と良く聞くことがあります。安全は、一人ひとりの参画が大切ですが、環境は一人ひとりではどうすることもできないのです。つまり、「与える側の仕事である事」です。空調や騒音の改善は、経営者・管理者の仕事だということです。
環境測定をして「管理区分Ⅲ」と表示することが測定士の仕事ではありません。快適環境を目ざして経営者へ提言・実践する事が仕事であることを忘れてはなりません。
2.言葉の明確化
① 「しばらくお待ち下さい」は何分?
地震や事故で鉄道が止まります。安全のためですから仕方ありません。テレビで駅の混雑状況をよく見ますがラジオでこのことを取り上げていました。駅員が開通までの時間を問われ、「しばらくお待ち下さい」と言っています。私も多くの人に問いかけてみました。
「”しばらく”とは何分まで待てる?」
ほぼ10分とか20分といった回答が返ってきました。ところがJRの人たちの「安全確認のためにしばらく‥」は4〜5時間と言っていました(状況によって違いますが、全線の安全確認ですからこれ位かかる可能性はありますね)。
ある駅員は「経験によると4〜5時間かかるかもしれません」と言っていたそうです。そう言ってもらえれば駅構内で待とうと思わず、次の行動を考えるでしょう。そうすれば駅構内の混雑も緩和されることにもなるし、良いと思います。こんな話があり、納得してしまいました。
② 「関係者以外立入禁止」の関係者とは?
この表示は現場観察で、必ず目にします。そして必ず「関係者って誰?」と聞きます。危険なゾーンに入っては駄目と言っている表示なのに、平気で出入りしている姿を見るからです。
私は、「入るときは◯◯に確認せよ」と具体的に書くように改めてきました。これもラジオでやっていましたが、ある会議室の前に「関係者立入禁止」という表示があったそうです。単純な間違いのようですが、それでも”関係者”は出入りしていたそうです。私は、いっそのこと「関係者以外立入禁止」より、「関係者立入禁止」の方が安全上良いのではないかなどと思ってしまいました。
③ 「“こまめに”水分補給を」
熱中症予防のためには、「水分補給をこまめにしましょう」と言われています。ところが、”こまめに”が5分間隔なのか、10分間隔なのか、30分間隔なのか、受け止め方で違うので、もっと具体的に「水分を手元に置き、”5分~10分”間隔で」と言った方が良いのでは、と言う意見がありました。個人差もありますので最後は、個々人が「喉が渇いた段階では遅いので早め早めを意識しましょう」となります。
また、”水分補給”は水だけを取り過ぎては「水中毒」(私は今年初めて聞きました)になると言うことも発信されています。水だけではなく、塩分と一緒にとりましょう。「目安として、1ℓの水に対して1~2g の食塩を加え食塩水とすることが良い」とも、スポーツ飲料なども良いとされています。
ゴルフをする人が「ビールを飲む!これが楽しみでやっている」という人もいると思いますが、これが危ない!アルコールが水分を吸収するので脱水症状になる事があると言われています。プレー中のビールは禁止にして、終わってからゆっくり飲むようにしましょう。
このように、言葉は大切です。一つひとつできるだけ具体的な表現をしていくことでもっと具体的な行動につながるのではないかという提案です。
3.「安全・品質・環境は企業活動の根幹」
この言葉は、私が安全活動をする基本的な考え方としている言葉です。安全活動は「人の命を守る活動」であり、「企業の命を守る活動」でもあると思います。酷暑の今年は特に、「環境」と言うキーワードをもっと深く掘り下げていかねばならないと感じました。
まさに「人の命」を考えさせられる夏です。今年もまだまだこの暑さは続きますし、今後も続くと思います。「出勤停止」にできない皆様の安全と健康を祈ります。
記事一覧
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- “話す力・伝える力”と“言葉の意味”を考えてみる
- 安全活動は足し算?引き算?
- コミュニケーション力向上の心構え
- 最近の関心事から“雑感”
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- 先人の偉業と教訓そして実践
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- 安全衛生法制定50周年と今後のあり方考察
- 水の大切さと恐ろしさ
- 冬季オリンピックと平和を考える
- コロナ禍の教訓を労働安全活動に活かす ~2021全国産業安全大会・講演要旨~
- モノの見方・考え方を一考する ~本:“どうせ死ぬから言わせてもらう”から~
- 正直に生きる・語ることの大切さ ~“生き様”を振り返る~
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- “新型コロナ禍”から考える教訓-2 ~行動の変化~
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- “人間性(心の持ち方)”について考える~ラグビーワールドカップと“故・平尾誠二氏”の生き方~
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- チームワークとリーダーの役割
~“大坂なおみ”全豪オープン優勝~ - ポジティブシンキングの実践 ~“箱根駅伝”の教訓~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その4(最終回) 「足:踏み込む」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その3「口:問う」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その2「目:観る」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その1「耳:聴く」について~
- ”環境”の大切さと人の行動 ~“命を脅かす”気候変動~
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- 作業標準書・作業手順書の作り方と活用法 ~“守・破・離”の心~
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- 気づかい・個のレベルアップとチームワーク ~平昌オリンピックの感動からの教訓~
- 後継者・人の育成を考える ~人の成長をどのようしてサポートするのか~
- 気づき・気がかり粗末にするな 気づいたらすぐ行動に移せ!
- 安全活動と品質活動の“根っこ”は同じである ~安全活動から“本音の活動”を深掘りしよう~
- 機械安全基準の制定と進め方 その2 ~安全・品質・環境は企業活動の根幹である~
- 機械安全基準の制定と進め方 その1 ~激しい向かい風の中を”航行”~
- 「そうだ、古澤先生に聞いてみよう」コーナーへのご投稿について
- 実践的なリスクアセスメントの進め方
~隔離対策のポイント~ - 新コーナー【そうだ、古澤先生に聞いてみよう!】いよいよスタート!
- 実践的なリスクアセスメントの進め方
~「現場リスクアセスメント」の進め方~ - 実践的なリスクアセスメントの進め方 ~重篤な災害に的を絞った洗い出し~
- 安全衛生方針の作り方・活用の仕方
~もっとわかり易く~ - 1年間を振り返って ~現場目線からの提案と報告~
- 非定常作業に特化した活動‥その4 ~重要な柱「ソフト対策」の進め方~
- 非定常作業に特化した活動‥その3 ~真の要因に対するハード対策の推進~
- 非定常作業に特化した活動‥その2 ~洗い出しのキーワードとカイゼンの実践~
- 非定常作業に特化した活動 その1 ~定義付けと洗い出しのポイント~
- 管理者研修の実践 ~第75回全国産業安全衛生大会(in 仙台)講演骨子~
- “新しい安全”「Safety 2.0」と言う考え方
- 重篤災害に的を絞った活動の勧め
- 人を育てる安全巡視の進め方
- 「みる」と「みえる」の違い
- 安全活動はカイゼンの入口と捉えてみよう
- 腹落ちした活動とするには「具体化」と「共有化」
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- 古澤 登(ふるさわ のぼる)プロフィール