ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2018年9月20日更新”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その1「耳:聴く」について~

 手前味噌ですが、私の現場指導や講演を受講・聴講した多くの人が“腹落ちしました”と言ってくれます。リップサービスもあるとは思いますが、皆さんの顔を見ていると元気になっていることが分かります。どうしたら古澤さんのように説得力のある話ができるようになりますか?と聞かれますが、自分では、普通に、至極当たり前のことを自然体で話しているので、何が良いのか分かりませんし、答えられません。今回は、たまたま読んだ本にその答になるかもしれない考え方に出会いました。内容を引用させていただきつつ、自分の考えてきたことや経験をお話しして、少しでもお役に立てれば‥との思いで書いてみます。

引用した本:「なぜ、あのリーダーはチームを本気にさせるのか?」

広江朋紀(ひろえ とものり) 著 (同文舘出版 1,500円+税)

私が愛読している「TOPPOINT AUG.2018」に紹介された。

1.私を変えた災害

①“活かし”“つなぐ”活動へ

 仕事を進める上で、安全衛生活動を柱として持ち続け、実践して四半世紀が経ちます。なぜそうなったかというと、安全衛生の全社推進責任者となった年に、私の出身職場で重大な、それも悲惨な災害が発生し、大きなショックを受けました。今でもトラウマとして心に残っていて、お客様の現場指導で同種の設備の前に立つと、心臓の鼓動が乱れるくらいです。

 皆さんがこういう経験をする必要はありませんが、発生したときの管理者・上司・仲間がどれくらいのショックを受け、人生に大きな影響を与えるかを想像して欲しいです。「現場で一生懸命やっている人が、命を落としケガをする」だけでなく、どれほどの人を不幸にするかと言うことです。

 「現場目線の活動の大切さ」をこの時に強く感じました。この経験をムダにしてはいけないと、「活かし」「つなぐ」活動の重要性を強く心に刻んだ経緯・背景があることを、まず知ってほしいと思います。それから私の“執念を持った活動(戦い)”が始まりました。二度と同じ事を発生させないために、災害につながる全ての背景要因、全ての課題に対して“人を主語とした”全ての分野に対するアプローチとカイゼン活動を始めました。

②成果を感じられるまでにほぼ10

 重篤災害の未然防止に重点を置いた活動を始めてから3年で、全体の災害を半減近くにできたこと、機械安全基準の制定(約10年後にISO12100が制定された)、本質安全化の推進などによって設備のシンプル・スリム化が進んだこと‥など、大きく変化をしました。安全衛生活動から各分野へ影響を与えることができ、会社が変わったと思えるまで10年ほどかかりました。

 活動当初の、ほぼ100%に近い向かい風を跳ね返すために、管理者や職長の教育の実践や各種プロジェクト活動の企画・実践などを通じて多くの人と話し、仲間づくりをしてきました。その間、現場の人やスタッフ、役員に多くの事を教えてもらったことが今でも私の財産になっています。

 その後も、多くの活動を定着させるまでに、後輩や仲間達が継続した活動を展開して、今では、災害件数は1/10程度になり、重篤な災害はほぼゼロになっています。活動の形成にも人格の形成にも強い思いと時間がかかると言うことです。

2.「ファシリーダーシップ」の要約

(私の勝手な解釈が入ることをお断りしておきます。以下、広江氏の著書から引用した言葉には*をつけます)

 広江氏によれば「*現場のリーダーが変化に対応するには、ファシリテーター型のリーダーシップ(ファシリーダーシップ)を発揮する必要がある」「*メンバーを支援し、一人ひとりの意思やアイディアを引き出し、全体の価値に変換するリーダーシップ・スタイルである」と最初に述べています。そして「*ファシリーダーシップを発揮するには、①”耳:聴く” ②”目:観る” ③”口:問う” ④”足:踏み込む” ⑤”手:手と手をつなぐ” ⑥”頭:考える” という人の部位になぞらえた6つの機能の実践が必要」とありました。以下、一つずつ私の経験を重ねて考えたいと思います。

3.耳:聴く

 「*リーダーの役割の大半は、コミュニケーション活動に費やされる。話し方、伝え方に焦点が当たりがちだが、聴く力を高めることを忘れてはならない」とあります。全く同感です。人には、一つの口と二つの耳があります。話す前に「まず話しを2倍は聞こう」と言うことだと私は理解して心がけています。

 また、研修でグループ討議をすると結論は「コミュニケーションが重要」と言うところに落ち着くことが多くあります。そこから先が大切なのです。

①“相方向”コミュニケーション活動の展開

 ある災害の教訓から作った言葉(活動)です。上司からの”一方通行”コミュニケーションが横行していた事に気づき、この言葉に心を込めて展開しましたが、管理者から多くの賛同の声をもらいました。

 皆さんは、相手から「ハイ!分かりました」と言う答を聞き出すことが目的になっていませんか? 今年のスポーツ界で発生しているパワハラも、トップの人たちが人の声(心の声も含め)を聞かずに、自分が全て正しいと思い込んでしまい、人の話は耳に入ってこなくなると言う事例ではないでしょうか? 企業でも良く見かける事です。

 特に現場の人たちは常に物を相手に仕事をする事が多く、上手に言葉にして伝える事が苦手な人も多いです。それだけに相手の発した言葉に含まれる意味を感じ取る必要が出てきます。そこであえて”相方向”と名付けたのです。相手の気持ちになって、相手の目線で、相手の環境から何を伝えたいのかを推測して聴きましょうということです。「聞く、訊く」という漢字もありますが、「耳を傾けると言う意味の”聴く”」がいいと思います。

 子供と話すときも同じだと思います。子供が発する言葉から何を伝えたいのかを親が推察しなければなりません。いじめで将来のある子供が自分の命を絶つという悲しい事が起きています。それまでに必ず信号が出ているはずです。親・先生はこの段階で気づかねばなりません。そのためには、普段の状態をしっかり観察していないとできません。

 ”常日頃の行動と観察”がコミュニケーションの深みをますことにつながると言うことです。職場のメンタルヘルス対策にも通ずることだと思います。

②「一年間は、部下・メンバーの声と機械の音を聴いて歩くこと」

 この言葉は、新任課長に対する教訓としていつも話してきました。新任管理者は、「職場を良くしよう。変えていこう」と肩に力が入ります。そして、今までうまくいっていることまで変えようとしてしまいがちで(本人は分かっていない)、現場の人たちの心が揺れ動き災害が発生しやすくなります。

 産業医が「心の揺らぎ」と表現していたことを思い出します。少し古いデータですが、災害が発生した件数を分析したところ、5年でローテーションする課長層で新任1年目の管理者の部署で半数の災害が発生していました。1年目は、まず現状を聴いて知る事からで良いという教訓になったわけです。実践した人の声としては、現場の小さな変化が分かるようになった、作業者から本音の意見が出るようになったなどが出ていました。

 私自身も、会社を転籍したときには、1年間このことを実践しました。仕事の話より、特技や、今までのカイゼン事例や自慢話、困ったこと、趣味のことなどを中心に聴くことに徹しました。勿論、きっかけとなる言葉はこちらから話しますが、何に興味を持ち、何が得意なのか、困っていることを聞き出すのですから、相手も気を許すようになってきます。人生の先輩には、敬意を表して「教えてください」と言う姿勢で臨めば、必ず協力してくれるようになります。管理者・役員になったからと言って上から目線の物言いでは成功はしません。「*人の意思・アイディアを引き出す」事がまず大切だと言うことです。

③「*無条件の肯定的配慮」

 「*メンバーの態度や価値観などをいったん無条件に受け入れることだ。口を出したくなる気持ちを抑えて、部下のありのままを受け入れることから始める」とある。私の実践論にかなった内容だと納得です。

④「*共感的理解」

 「*相手の感情を汲み取り、あたかも自分の感情であるかのように感じること」とありました。相手の話を遮り、「それは私の経験からすると‥。いや違うなー‥」などと否定から入れば相手は何も言わなくなるでしょう。

 「そうだねー。分かる」と一度受け入れることが大事です。そして、”一緒になって考える事”が大事と思ってやってきたことと一致します。

⑤「*自己一致」

 「*ありのままの自分でいること。自分を必要以上に良く見せようなどとはせずに、オープンに自然に、相手と向き合う」。これは少し難しいことだと思います。教えてもらいたいという気持ちで接すれば良いことで、知らないことまで知っているようなそぶりをすると、後で苦労することにつながります。私は「共育」と言う字を使っていますが、教え教えられる事で良いのではないかと思えば気が楽になります。まさにこのことかと思います。

 

 6つの機能について書こうと思いましたが、文字数の関係で今回は1つの機能のみになりました。次回以降をお楽しみに‥。

 

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