ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2018年11月20日更新”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その3「口:問う」について~

 今月も、“腹落ちさせる指導”について、読んだ本から引用させていただきつつ、自分の考えてきたことや経験を重ね合わせ、少しでもお役に立てれば‥との思いで書いてみます。

・引用した本:「なぜ、あのリーダーはチームを本気にさせるのか?」

広江朋紀(ひろえ とものり) 著 (同文舘出版 1,500円+税)

私が愛読している「TOPPOINT AUG.2018」に紹介された。

・引用文の印:私の勝手な解釈が入ることをお断りしておきます。以下、広江氏の著書から引用した言葉には“*”をつけます)

1.第77回全国産業安全衛生大会から

 はじめに、10月に横浜で実施されました表記大会で感じたことを少し触れさせてもらいます。

今年も講演をする機会をいただきました。「安全衛生スタッフのための入門機械安全」という、安全衛生スタッフにとっては少し苦手意識のあるテーマでしたが、”集まるのかな?”と言う心配を吹き飛ばすように約1,900人というたくさんの人(主催者発表)が集まってくれました。一会場では過去最多の参加者とか‥。感謝です。

伝えたかった内容は、

 受け皿づくりをする事

スタッフだけでなく、知識を持った人たちを集め意見を統一する“場づくり・受け皿づくり”を提案して設定して欲しい。人の命を守る活動はだれも反対しないはずなので、自信を持って安全スタッフが主体となって進めてほしい。

⑵ 「停止の原則」「隔離の原則」

“とめる保障”と“停止範囲の明確化”、“とめ方の明確化(設備単位)”だけでも、きっちり決めてほしい。

⑶ 「他人の誤操作防止」

殺人者をつくらないため、“とめた状態の維持の保障”(ロックアウト)をできるところから実施してほしい。

⑷ 既設設備への対応

既設設備は、“一設備一様”の対策となる可能性大。理想だけを言わず現実から考えできるところから実施。ハードとソフトのバランスのとれた対策が必要。

と言う内容でした。

 総合集会の「伊藤元重教授(学習院大学)」の講演、「製造業安全対策官民協議会・特別セッション」そして「Safety 2.0」に関する報告などから、“安全活動の潮目が変わってきた”事を感じました。Iot,AI,ビッグデータの活用などの言葉が多く出ていました。私の講演の冒頭でこのことに触れたことで、用意した内容が十分伝わらなかったかなという反省をしました。急速に現場にも入ってくる技術だとは思いますし、期待したいです。そのためには、機械安全というキーワードをもっと活かして、シンプル・スリムな設備・ラインづくりへとカイゼン活動を推進していかなければならないと言うことを強調したかったのです。そして、現場目線の安全活動が浸透していかねばならないと逆に強く感じた大会でした。参加された皆さんも感じ方はいろいろだと思いますが、いかがだったでしょうか?

2.「問う」と言う言葉

 災害が発生すると、リーダーは部下に対して「質問をして、原因を追及して、対策など指示を与える」ということを問題解決のために実施してきたと思います。あるいは、「問い詰める」事をして、責任追及をしていなかったかという反省が必要な人も多くいます。

今年参加させていただいた各社の安全大会では災害増加の原因として「ルールを守らなかった」「KY不足」「リスクの洗い出し不足」の3点が共通項目でした。私は、この言葉は「やった奴が悪い」と言う言葉の裏返しと考えています。

やった人も悪いがリーダーの反省はないのか?ここが抜けてしまうので災害が減少しないのではないかと思っています。広江氏は、「問いかけの仕方について」の大切さについて述べています。

①「*調査的問いかけ」

 広江氏は「*主にWhen、Where、Whatの疑問詞を使い、事実情報の収集を行う」その時に陥りやすい「*Why、Whoの使い方に注意が必要」と言っています。私は、「ナゼこんな事をやった?誰がやった?」は、リーダーとしては、”禁句”と言っています。結果論として”責める”事は、現場に行けば分かるはずのことをやっていないことの裏返しで、責任転嫁していることになるからです。事実確認と原因追究は重要です。「尋問」「詰問」になってはいけないと言うことです。

②「*提案的問いかけ」

 災害の水平展開(横展開)の時に、一方的な押しつけや、命令など強制になっていることが多くあります。重篤な災害発生時など、致し方ないケースもありますが、普段は、再発防止の為に「こうしたらどうだろう」と提案型の問いかけが有効だと思います。要は、関係者全員で話し合い、実践的な方向を見いだしていくことが納得性もあり、腹落ちすると考えています。リーダーは、経験と知識を持った人です。部下に気づきを与え、自ら考え行動するように仕向けていく必要があります。

③「*探求的問いかけ」

 広江氏は「*この状態が続くとどうなる?引いて全体から見ると(空間軸)?」と言うように問題を捉え直すことで、思考の行き詰まりを打破する事につながると言っています。私は「新しい活動を考えるのではなく、今の活動を”深掘り”しよう」と言います。一生懸命やっていても、知らないことは多くあります。災害が発生したとしても、対策のための対策をいくら繰り返しても意味がありません。「災害を活かす」ために、まず今までの活動の良さを共有化した上で、「何が足りなかったのか?」を考えて”積み重ねの活動”にしていくポジティブな思考が大事だと思います。

④「*共創的問いかけ」

 広江氏は「*明白な答を誰かに与えるのではなく、“私たちは、どのようにすれば、それが可能になるのだろう?”と主語を相手(You)ではなく、私たち(We)に置くことで視点を広げられるオープンな問いかけになる」と言っています。“我が意を得たり”です。私は、「指摘ではなく、改善提案をしよう。答は言っても3割程度」と言っていますし、「どうすれば良かったか?正しい状態(正常状態)と比較してみよう」などと指導をしています。「思考回路の醸成」とも言っていますが、問いかけることで相手は考えるようになります。共に育つ「共育」にも通じていて、一人ひとりが考える力をつけていくことがリーダーの役割でもあると思っています。

3.「問いかけ育成」

① リーダーの役割の大きさ

「自分の部下は、自分の子供と思え」と育てられました。広江氏の考え方は、リーダー(親)が発する言葉、内容、方法などで、相手(子供)は全く違った結果になってしまうと言うことだと思います。

自分の気持ちを伝えるのは難しく、皆さんも失敗事例があると思います。私たち人間は、話す力を与えてもらったのだから、研いていかねばもったいないです。「耳:聴く」でしっかり相手の言葉を聴いて何を考えているのか、まず受け止めてやることからです。「目:観る」でしっかり現場・現実を観る努力と力をつけていきましょう。現場は生き物ですし、ウソはつきません。この努力の上に立って、「口:問う」を考えてみましょう。

② “相方向”コミュニケーションの心

 いろいろな研修で討議をすると、結論は、”最も大切なのはコミュニケーションだ”となります。その通りですが、具体的にどうすれば”コミュニケーション力”はつくのでしょう。今回のテーマは、何もきれいな言葉の羅列や、うまく話そうというのではなく、泥臭くても良いので相手の立場で考えて一緒になって考える事ができれば、気持ちを伝えることができると言っていると思います。その前提となる考え方を教えてくれています。

”相方向”とは、相手の立場で物事を考え、一緒になって考えてみよう。相手の立場まで降りて考えてみようということだと思います。

是非、一つひとつトライして欲しいです。

 

追)今回の全国大会での講演は、自分としての評価は60点くらいでした。しかし、終了後、何人もの人から「今回も元気をもらいました」と言っていただきました。正直、その言葉で少し安堵しています。講演、講義、現場指導などを日々やらせていただいている私ですが、気持ちを伝えることの難しさと葛藤しつつ勉強する日々です。

 

 

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