ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2017年1月18日更新非定常作業に特化した活動 その1 ~定義付けと洗い出しのポイント~

1.「非定常作業」をターゲットに活動をしていますか?

12月号のレポートにも触れました。そして10月号に「重篤災害に的を絞った活動の勧め」を書きました。その中でも非定常作業における災害防止の調査研究会が行われたことに触れ、報告書も紹介しましたが、中災防の調査研究報告書は見られましたか?そして具体的な活動の推進に反映していますか?

 

私が安全を担当したときに比べて、昨今の労働死亡災害は、半減以下となりました。しかし、製造業で見てみるとその中で非定常作業における死亡災害が7-8割と高い比率のままで推移しています。絶対件数は下がりましたが、非定常作業時の死亡災害が残された大きな課題と言うことです。それだけ現実的には難しい要素を含んでいるという訳です。多くの現場指導をしていてもなかなか良い活動を目にする機会は少ないです。現段階でもそしてこれからも重要な課題の非定常作業時の災害防止について、何回かに分けて、解説してみたいと思います。

 

2.ナゼ?非定常作業時の災害が残っているか

「”非”定常作業」ですから、いろいろな発生パターンがあると言うことです。勿論、繰り返し同じ状態が発生する場合もあります。しかし、発生する頻度も、時間帯も、起き方も違う。また、似て非なる発生の仕方があり、生産を優先する人たちが早く原状復帰をしようとして、大丈夫と思い込んで作業をして受傷すると言ったケースなど色々な発生パターンがあります。現場の人たちが、生産活動をしながら、非定常作業の全てのことに対処できるだけの技能訓練が成されているという状況はなかなか作り出せないと思います。災害が発生した後で「ナゼ?”止めて、呼ぶ、待つ”ができないのだ」「ナゼ?ルールを守ってやれないんだ」と言っているようではこの問題は解決しません。再三、書いていますが現場は「生産第一」という考え方なのです。何度も何度も不具合が発生して生産計画が遅れてくると、どうしても自ら積極的に手を出してしまいます。これが自然だと考えて、では災害が発生する前に何をやっておけば良かったかと言うことが大切になります。調査研究報告書を読んでそのまま現場にしっかりやれ!と言っていませんか?紙だけでは絶対に出てきません。設備や品質不具合が多く出ている中で、非定常作業を進言したとしても、「天につば」となりかねないことを現場は良く知っています。管理者や安全スタッフなどが何処まで入り込めるかが重要なのですが、「現場へ丸投げ」状態にしているケースが多く、災害が減少しにくいことになっているのではないかと推察します。

 

3.定常作業と非定常作業の区分け(「自動生産設備における非定常作業の安全」報告書から)

① まず「定常作業」の定義付けが大切‥次の3要件の全てを満足する作業をいう

ア、日常的に反復・継続して行われる作業

イ、生産計画によって予め立てられた計画に沿って行われる作業(突発的な作業や臨時の作業は含まない)

ウ、作業の手順を定めた基準書等が整備されている作業

(ライン作業、洗浄作業、ライン検査、日常保全(1回/月以上の頻度で実施されるもの))をいう。ただし、定常作業中に異常が発生し、作業標準書等と異なる対応をする場合は、異常処置に該当するために非定常作業として扱う。

 

② 「非定常作業」の定義付け

ア、「定常作業」として定義している作業以外の全ての作業をいう。

 

③ 「対象となる非定常作業」

ア、異常処置(処理)作業

通常の運転中に発生する異常、故障等の処置作業(復帰作業も含む)

イ、改善(カイゼン)作業

既存の設備の効率を上げたり、不具合をなくすために現場の作業者、監督者または改善員(生産技術者など)が行う設備改善作業

ウ、切替・移行時作業

生産切替時や作業変更時、設備立ち上げ時などの際の段取り、試運転、運転確認、調整、給油等の作業

エ、保全作業

保全専門の作業者が行う保守、点検、検査等の作業と、現場の作業者が行う点検、整備、補修等の作業がある。

 

4.定常作業と非定常作業のグレーゾーンが危ない

まずは、上記のように定常作業をしっかり決めているかどうかが重要となります。現場の人たちの理解が得られるようにしっかり話し合っておくことが大切になります。「正常状態の共有化」と言っても良いでしょう。できるだけシンプルに全員が同じことが言えるようにしたいものです。準備段取り作業は、なかなか難しい作業の一つです。例えばプレス型の交換などは、生産活動に直結していますので定常作業とすることが良いでしょう。異常処置や改善作業の準備段取りは、非定常作業となります。同じ言葉でも内容をしっかり見極めて決めていくことが必要です。

 

「非定常作業の正常化」が行われている現場も多くあります。例えば、品質不良対策のための処置作業や、品質維持のための清掃作業等、回転体が止まっていない状態で手を出す災害が見受けられます。「生産活動に必要」だからではなく、異常処置作業だという認識を強く持たなければならない作業までが、日常的に繰り返されると「定常作業化」されてしまうという問題です。回転体に手を出して清掃させていて災害になった事例も多くあります。ほとんどの企業は「コンプライアンス重視」と言っていますが、安衛法でも禁止されている作業をさせていて、コンプライアンスも何もあったものではありません。

 

異常処置作業も同様です。基本は、「止めて」処置する事が大前提になります。しかし、現場は、復帰しにくい設備であればあえて止めようとはしません。また、何度も何度も同じ異常が発生していれば、止めて処置していた作業も次第に止めなくなってきます。これらの作業をどのように洗い出せるかが非定常作業の災害防止にとって重要なポイントとなります。

 

方法としては、リスクアセスメントです。しかし、今まで述べたように、重篤な災害につながるリスクが洗い出されていないリスクアセスメントでは意味がありません。現場に、上記のようなケースを洗い出せと指示してもまず出てこないと思って良いでしょう。それは、「正しいことをしている」「これ位やらなければ生産計画は維持できない」など前向きな発想から定常作業と理解しているケースや、「ルールを守らずともこれ位やるのがプロ」と考えているケースなど、どちらにしても提案したところで自分がやることになると判断すれば表には出てきません。

 

ここからが管理者や安全スタッフの出番なのです。可動率の良くない行程や設備のある現場に行って、作業者と一緒になって定常作業と非定常作業の分類について話し合い、設備の不具合発生時の作業内容について一つひとつ確認していく作業が必要になります。一気にやるのも良いのですが、非定常作業が一気に出ることはありませんので、一つの方法として一週間とか二週間とか一定期間を定め管理者から現場の人たちが一緒になって一つひとつ洗い出していく努力をする事が最も良い方法ではないかと考えています。これらをリスクアセスメント表に記録して、対策を考え実行に移すことです。繰り返し発生する場合は、「異常処置作業標準書」をつくり、訓練のための教材とすることも必要になります。そして最も大事なことはこうした不具合をいかになくしていくかというカイゼン活動につなげていくことです。「異常処置作業標準書」をいかに減らしていくかの活動と言っても良いと思います。

 

こうした実績ができていくと、必ず他の設備でも役立ちます。作業者も腹落ちする活動になっていけば、究極の目標である、余分な事を考えずに生産活動に没頭できる環境づくりにつながり、生産性向上にもつながっていくことです。

 

5.活動の柱・流れ

鉄鋼設備、紙パルプ設備などを中心として、重篤な災害を減少させるための、業界を超えた組織横断的な活動がスタートしようとしています。私は、全体の災害が減少してきた中、非定常作業における災害が残っているので、ここを活動のターゲットしたらどうかと考えています。

 

「重篤災害防止」⇒「非定常作業の洗い出しとカイゼン」⇒「現場で実施するリスクアセスメント」⇒「対策は、ハードとソフト」という活動の流れをつくってはどうでしょうか。対象は、”非”定常作業であり、発生の仕方も一定ではないため、作業の洗い出し方、実態を把握すること、見える化が難しいのです。また、万々が一の確率で発生する重篤災害防止ですから、なかなか難しい面もあります。今まで実施してきた活動以上に、活動の深掘りをしていかなければ前進はありません。1,000人余の人たちが毎年命を落としているのです。これ以上、労働死亡災害を発生させてはならないと思います。1,000人という一括りではなく、かけがえのない一人ひとりの命なのです。過去の災害から学び、現場で管理者と作業者が一体となって挑戦をしていかねばなりません。一朝一夕には、結果は出ないと思いますが、何年後かに振り返った時に、今年がその「ターニングポイントになった年」だったと言えるといいなと思っています。夢をかなえたいと思っています。皆さんも是非実践をしていただき、良い活動の情報提供をしていただくことをお願いいたします。

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