ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2017年9月20日更新実践的なリスクアセスメントの進め方
~隔離対策のポイント~

1.現場リスクアセスメントの実践

 先月号で、本来あるべき”設計”リスクアセスメントの説明と共に、現実的な”現場”リスクアセスメントの進め方を説明しました。さて、現場リスクアセスメントを実践していただけたでしょうか? リスクアセスメントの究極の目的は?その答は「重篤災害の未然防止」と言っています。

最悪の状態=重篤災害と表現しましたが、どうしたらケガをすることができるか」「どうしたら死ねるか」と言う発想で現場観察をしてみましたか?こういう観方をすると今まで見えなかったリスクが見えてきたという声を多く聴きます。

管理者と現場観察をしていて、管理者の身体や手を回転体に近づけてやる事がありますが(勿論、本気でやったらケガをしますが‥)、「先生!やめてください。危ないじゃないですか」と声が出ます。「今危ない!って言ったよね。作業者がいつもそういう状態に置かれているのだ。管理者責任は重大だよ」と気づかせることもあります。是非「現場目線」「ケガをするのは現場の人」と言う視点を忘れずに実践して欲しいと思います。

2.良く起きている間違い

[1] 隔離対策をすれば安心か

現在、古い設備で回転体や動力部が露出している設備、改善という名の下に追加設備がなされている設備、なかなか本質安全化ができず隔離対策もできていない設備など、対策が難しい場所(残された課題)で重篤災害が発生しています。災害が発生すると「隔離対策をすること」という指示が出ます。単に隔離対策をするだけでは、何が起こるかと言えば、今までできていた、品質不良や設備不良の対策がやりにくくなり、現場の感覚としては「やりにくい・余分なものを付けてくれた」となります。多くの場合、生産性が落ち、生産ができなくなるケースもでてきます。

それまでは、不意や故意に危険源に近づけることを放置していたことの裏返しであり、「命をかけてやってくれ」と言っているに等しいのです。

隔離対策を指示した側は、隔離したのだからケガは起きないだろうと思いたいのですが、現場は生産第一という考え方なのですから簡単にはいきません。しっかりした考え方を持たずに隔離対策をすると、結果的に安全装置の無効化など不安全行動をする事につながります。現場も、隔離対策が実施されたことは正常な状態ができたと考え、元の生産性や作業のやりやすさに戻していくための「カイゼンのスタートライン」に立ったのだと意識を変える必要があります。

[2] 「停止の原則」とのセットで考える

隔離をすれば必ず出入り口ができます。扉には、ポカよけとして「安全プラグ(安全柵プラグと携帯プラグ)」「電磁ロック」が必要になります。これらはあくまで「ポカよけ」であって「正式な止める装置・方法」ではないと考えるべきでしょう。また、搬送機(製品など)などが通過する開口部も必要になります。そこには、光電管などでポカよけを実施します。光電管などは柵と同じ考え方をしなければなりません。

しかし、一灯式や反射型の検知器が使われているケースがあります。隙間が大きく進入しやすくなっていたり、誤動作の危険性もありますので、安全装置としての光電管を設置することを守ってほしいです。光電管に無効化スイッチがついているなどはもってのほかです。また、光電管の場合は、手や身体がすっと入ってしまいます。

危険箇所との距離はしっかり確保していますか? 光電管は「時間的隔離」と言われます。電気信号の伝達速度と手や身体のスピードとの兼ね合いになります。計算式がありますので確認して下さい。大ざっぱに言えば350mm程度は必要と言えるでしょう。

隔離対策は「停止の原則」とセットでなければなりません。後付けの隔離対策は、従来の作業性を重視している事が多く、それぞれの安全装置の「停止範囲・停止方法」が違うケースがあり「同一柵内・同一停止」という考え方が守られなくなります。その結果「人を騙す装置」「誤解を与える装置」になりかねません。

既設設備に対する安全対策は、一律ではできず一件一様になることが多いでしょう。必ず安全装置の「停止範囲を確認」して、「停止範囲の表示」をする事です。この表示によって現場作業者の教育を繰り返し実施しなければ安全確保につながりません。ハードとソフト対策のバランスです。

大きな間違いとして、「光電管をリセットしたら動き出す」ようにしているケースです。プラグを元の位置に差したら動く、非常停止釦のリセットをしたら即動くと同じ事です。

人の意思とは違う不意の起動は危険きわまりないことです。最近の扇風機は、コンセントの抜き挿しでオンオフをする事はないと思いますが、古い扇風機では、起動スイッチを入れたままコンセントを抜き、再度コンセントを挿すと動くものがありました。安全装置のリセットだけで設備が動くと言う回路は、「人の意思を持って動かす」事にはなりません。絶対にやってはいけないことです(「起動の原則」は別途書きたいと思います)。

[3] 隔離(安全柵)の考え方

隔離対策、特に安全柵の考え方は、キチッと決めておく必要があります。高さは1,100mm以上でも良いのですが、現代人の体格から考えると、超えやすい高さと言えます。少なくとも1400mm以上は欲しいと思います。その上で考えるべき事は「危険源に手や足が届かないこと」です。「空間的隔離」という考え方です。高さがある事が大切なだけでなく、柵の上や間から可動部などへ手が届かないことが最も大切な視点と言うことです。

柵の間隔も身体がすり抜ける事のない幅とすべきで、かつ、横さん(中間の)を作らないことです。柵の下段の隙間もすり抜けることのできない高さとすべきです。危険源が近い場合は、柵にネットを張る事も良い手段です。ただし、設備の可動状況などが見にくくなると言う欠点が生じます。指が入っても危険箇所へ届かなければ良いのですから、できるだけ大きなメッシュとして、さらに、中の見やすさから色は黒とすべきでしょう(細部は各社で人間工学的な見地などを入れて検討・決定してください)。

[4] 色使い

 安全柵を全て黄色に塗ったことで、工場内が黄色一色になり何処が危険なのか分からなくなることがありました。そこで、固定の安全柵は、機械色で良いことにしました。ただし、安全柵の出入口扉の枠は、黄色に塗ることとして、「これから先に入ると危険」という意識を持たせることにしました。また、挟まれ箇所などはしっかり黄色に塗って人の意識を引くようにしました。

メリハリの効いた色使いも考えることが大切だと思います。企業によって違うとは思いますが、光電管も黄色に塗ることをお奨めします。出入り口と同じ考え方です(プラグはほぼ黄色のように思います)。

3.対策後は新たなリスクが生ずる

 リスク対策実施後は、必ず再度リスクアセスメントを実施して下さい。特に既設設備は、現状是認をして対策をするケースが多くあります。隔離対策をしてランクダウンはできますが、なかなか完全隔離は難しく、対策完了で安心することなく、新たなリスクの洗い出しと課題の共有化、新たな対策の推進を必ず実施して下さい。この繰り返しこそが、リスクを見る目を養い、「やりやすさの追及と作業が楽になる」という継続的なカイゼン活動の推進、小集団による活動でチームワークの向上と達成感を得て”人づくり”につながるというリスクアセスメント本来の目的になるのではないかと思います。

4.機械安全基準の制定

設備対策(主に挟まれ巻き込まれ)の前に、安全対策の考え方を決めておかねば、良い対策が進まない可能性があります。また、共通の理解ができなければ付け焼き刃的な対策になってしまいます。つまり、機械安全基準の制定をしていくことです。また、現場の人たちにもわかり易い「マニュアル」をつくることも大切になります。基準制定の進め方とあわせ、マニュアルの作り方なども今後紹介していければと思っています。

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