ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2017年11月15日更新機械安全基準の制定と進め方 その2 ~安全・品質・環境は企業活動の根幹である~

1.“モノづくり日本”を揺るがす不祥事が頻発

 最近の日本を代表する大企業の品質問題に対する報道は、大変残念であり、心が痛みます。なぜこうなってしまったのか、複雑な要因があるとは思いますが、ある程度予測できていたとも思います。モノづくり日本、大丈夫か!?と言いたいです。

 安全活動を通じて多くの企業の指導をさせていただいている中で、「モノづくり現場の危機感」を感じてきました。このことは、今までの講演の場や各種機関紙などへの投稿、このブログなどでも書いてきました。ほとんどの人たちは、毎日一生懸命業務をやっていると思いますが、日々の流れの中で間違っていることに麻痺していないか考えさせられます。そう簡単な問題ではないことを知りつつ、私見(主な問題点)を述べたいと思います。

 

① グローバル競争の中で、利益重視の経営に傾きすぎている(安全・品質・環境が優先されていない)

② 雇用形態の変化⇒非正規社員の増加や請負化が進み、企業や仕事への愛着心が減少

③ よって、カイゼン活動をしようとする気持ちが減少、仲間意識も低下

④ トップ指示に対する反論(意見具申)が許されない雰囲気が強くなっている⇒言えない、言っても聞いてくれないなどから「指示待ち人間」をつくってしまっている

⑤ 経営者・管理者が仕事の“丸投げ”が多く、現地・現物の確認が不足。又、問題を観きることの出来る管理者が少なくなっている

など、安全活動の指導の中から感じることと共通点が多く考えられます。「安全はマネジメントそのものである」と言う視点からの考察です。

2.「安全・品質・環境は企業活動の根幹である」という言葉

 私は、「安全第一」と言う言葉を使わずにきました。考え方は大変重要な言葉である事は十分理解しているつもりです。しかし、「生産第一」「品質第一」「原価第一」など現場に対して経営者がその都度「第一」を使うので、現場の人たちは迷い、結果として「生産第一」になる事を知っているからです。現場は、生産をして“ナンボの世界”だと思っていますから、当然だと思います。

 ある時、役員との会話から「第一」と言わないで重要性を表す言葉を考えようということになり、表記の言葉を安全衛生会社方針のスローガンに掲げ提案をしました。それぞれ企業活動の根幹をなす活動であり、企業の存在意義を表すものであるという意味で、安全担当部署から幅広い提案をしたのですが、経営者から反対の意見もなく修正もされずに通りました。それ以来、私自身の安全活動への取り組み姿勢・信条としてきました。今の時代に最も大切なことを言い表していると思います。

 各企業がCSR(Corporate Social Responsibility)を掲げています。いろいろな解釈がありますが私は、次の解釈が最もあっています。「“CSRとは企業活動そのもの”と言っても過言ではない。CSRは、企業を取り巻く“顧客や従業員”といった、ステークホルダーからの期待やニーズに答えるために、企業戦略として対応していくものなのである」

 コンプライアンスという言葉もよく使われます。「法令・社会規範・倫理を遵守すること、行動指針の策定とその遵守のための内部統制システムの構築、企業は良き市民として社会に受け入れられる行動をとっていくことが求められている」とあります。

 どちらにしても、今回の不祥事は、これらを無視していることになります。報道によれば「内部告発」によって明らかになったとあります。真実は、良く分かりませんが、なぜ社内的に解決できなかったのでしょうか? 特に経営側の人たちは、反省をしなければなりません。正しい意見が出ていても、聞く耳を持たずでは困ります。

 また、従業員も声をもっと出していかねばならないと思います。雇われの身であり、クビになっては元も子もありませんから、何度も何度も言うことは出できないかもしれません。しかし、腹落ちしないものは腹落ちしないと言いましょう。上記の考え方に沿わないことは、会社そのものの存在さえ危うくして、最終的には、自分の首を絞めることになる訳です。

 今回の不祥事は、安全活動で感じる課題そのものと言っても良いと思います。そこで誰も反対しない「重篤災害の未然防止」と言う観点からもっと組織的な問題まで深掘りして、取り組みましょうと私は提案してきましたし、もっと声を大にして訴えたいのです。

 災害が出ている会社(事業所)では、安全活動でさえ、現場から声を出せない状況が見受けられます。トップが一方通行的な指示だけを出して現場を知らなさ過ぎます。

 私は、その点について厳しく指導させてもらうことがあります。内部ではなかなか言いにくいことも外部講師の立場なら言えます。そして気づいてくれるトップが多い事も事実です。やりとりを聞いている現場の職制達は、フッと呪縛から解き放たれたかの様になる事が多いです。

 トップだけが悪い訳ではありません。良くしようと思ってやっていることは間違いないのです。提案するスタッフ、意見を言う現場が必要と言うことです。災害や問題を出している会社(事業所)は、こうした意見の言えない雰囲気をかもし出しています。多くの課題を”潜在化”させてしまっているということです。”マグマ?”が一気に”顕在化(噴出)”した時には、止まりません。

3.機械安全基準の制定の過程

 前月号でも書きましたが、なかなか制定が進みません。機械安全基準を制定した例を元に進め方の一例を紹介します。重篤な災害を出してからでは、大変多くの費用と労力がかかってしまいます。災害が発生する前にどれだけ手を打てるかが大切なことは、今回の不祥事をみるまでもなく明らかなはずです。

 どの会社でも出来る訳ではないのですが、トップの指示や重篤災害の発生などのきっかけで、設備基準制定の動きになります。ここからが重要です。

① 結論から言えば、既存(国際規格やJIS、他社事例など)の基準をそのまま写し取って社内基準とするやり方もありますが、自社流にしていくための議論する過程が大切です。「喧々囂々(けんけんごうごう)」「侃々諤々(かんかんがくがく)」という言葉がありますが、私は、二つ合わせて「喧々諤々(けんけんがくがく)」と使ってしまいます。どちらにしても、正しいと思うことをぶつけ合い激論をしてほしいのです。この検討プロセスが、考え方を整理して基準の根底に流れる考え方となっていきます。
② 検討組織の委員長は役員が良い。決断が必要になるからです。
③ 事務局はできる限り安全衛生部署として、委員として組織横断的に生産技術者を配置する。
④ まず、将来のあるべき姿、ありたい姿を描きつつ議論して方向性を出す。とりあえず既設設備をどうしていくかは、棚上げとしておく。
⑤ 設定後、新設機への摘要は必須。既設機は、それまでの歴史(設置時期で異なる仕様など)や今後の使用期限などを勘案して一件一様の議論をする。また、基準の何処までを展開するかの方向性を示す(上位3項目とか)。
⑥ 既設機に対して、100%展開することはムリなので、ソフト的対応が必要(特に異常処置者などの“教育と訓練”の内容としくみをしっかりとつくり実践すること)

ここまでかけて整備するのに、大体2〜3年はかかります。しかし、このことが、従業員の命を守るためのCSR活動の一つではないでしょうか。

4.教育による知識と意識の向上

 新任部長・課長や生産技術部門の新入社員などに、機械安全基準の内容や歴史的背景、強い思いなどを教育することで底上げを図ってきました。この教育の事務局は、人の命の大切さを、身をもって知っている安全スタッフが適任だと思います。講師は、安全スタッフと生産技術スタッフが担当します。単なる基準の説明会ではなく、管理者として、企業人としての基本的な考え方の基本をしっかり教えていくことが大変重要になってきます。

 また、講師育成を継続して行うことも大切な活動と考えています。人に伝えることができてはじめて自分のものになっていると言えるでしょう。こうした場をつくり、チャンスを与える活動で人づくりにつながり、会社の財産となっていきます。

 ベースとなる考え方がしっかり共有化されてくれば、現状との差が明確になります。この差こそがカイゼンテーマなのです。正しい考え方が共有化されなければ、バラバラな活動になり、成果も上がりにくくなるでしょう。勝手な判断が横行し始めると結果として大きな問題につながりかねないということです。

  多くの企業で組織横断的基準制定もなく、こうした教育ができていない現状であり大きな課題ですが、教育は企業活動の命とも言える活動です。大いにチャレンジしてほしいと思います。

 

追)今月号は、機械安全基準制定の話しとは少し離れましたが、根本的なところではつながっていると思います。他人事にせず、是非考えるきっかけとしてほしいと思います。

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