ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2017年12月20日更新安全活動と品質活動の“根っこ”は同じである ~安全活動から“本音の活動”を深掘りしよう~

1.安全と品質活動の基本は同じ

 先月号も品質保証に関する企業の不祥事について、安全活動の視点から問題を掘り下げてみました。しかし、また違う業界から「モノづくり現場の危機」「日本の製品に対する信頼感を根幹から揺るがす」ニュースがマスコミを賑わしています。大変残念なニュースですが、実践的安全活動の推進をしてきたねらいとも合致する課題が見えるので、再度触れたいと思いました。

なぜ現場で本音が言えないのでしょうか。

どうしたら風通しが良くなるのか。

問題が発生したら社内でまず声が上がり、社内で解決するための議論をすべきだと思いますが、どうしたらよいか皆さんも考えて欲しいと思います。企業活動の根幹でもある安全と品質でものが言えないのでは、企業の存在価値そのものがなくなってしまうと思います。

参考まで私が講演をするストーリーの概要を書いてみました。

 

2.労働災害の減少に壁

⑴ ここ5-6年労働災害全体(休業・死亡)は、下げ止まり状態

労働災害は、長期的には良くなっていますが、製造業に至っては増加傾向にあります。難しい課題が残った結果で、原因は非正規社員の増加や請負化などの雇用形態の変化や、帰属意識の低下、災害の減少による感性の低下、管理者の能力低下など複合的要因があり、従来通りの活動をやっていても下がらない現状です。

また、人に頼った安全活動の限界、形骸化した活動の蔓延と深掘りの弱さ、“やらせた感一杯”の活動で指示待ち人間をつくってしまっている事などがあります。

 
⑵ 正常状態の見える化と具体化が足りない

多くの企業を指導する中で、共通の課題が見えてきます。まずは、小集団など組織としての「正常状態の共有化」ができていないことです。また、いろいろな表現が抽象的すぎて「誰に為に 何のために いつ使うために」やっているのか腹落ちしていない活動をやり続けていること。災害の減少に伴い、災害一件発生するとアレモコレモの対策を指示することが多くなっていることなどがあります。

このことも、結果として「やらされ感」一杯の活動となり、「指示待ち組織・指示待ち人間」をつくってしまっています。

 

⑶ 「ルールを守らない」のではなく「守りにくい・守れない」と考える

現場は変化点の連続と言っても良いと思います。しかし、指示待ち人間・組織では、間違っていることも言えず、言ったとしても相手にされないと思い込み、変えようという意識につながっていきません。

災害が発生すると決まって「ルールを守っていないことが問題」「KY不足」などやった奴が悪いと言わんばかりの対策書が出てきます。また、真の要因に至った分析が弱いので、真の対策につながらず、形だけの活動をしています。結果として災害が減少しないという悪循環になっています。

やった人も悪いのですが、本来、こうした活動を推進している組織的な問題である事を認識すべきです。

 

3.活動の柱はリスクアセスメントであり、現場的リスクアセスメントの実践が必要

⑴ 「重篤災害の未然防止」をターゲットにしたリスクアセスメントの実践

相変わらず「リスクアセスメント”表づくりごっこ”」が中心となった活動や、現場に丸投げの活動になっている現実があります。現場からは「天につば」を恐れて、リスクを低く見積ったり、対策の即実施を指示されるので、対策が難しい本当に危険な作業は出さない等の事実があります。

多くの企業で「Aランク(重篤災害につながる)はありません」という答が返ってくることが多いのですが、程度が死亡災害であっても計算式でランクがさがるようになっている事が多いです。

クレーンや車両災害は、必ずAランクが残ります。Aランクは残しても、方向性が解っていて、できる限りの対策をしていれば残して(表示しても)良いと思います。

何でもかんでもランクダウンをと指示する経営者が多いのです。表示の方法を見直すなどの工夫をすべきです。より一層の「重篤災害の未然防止」をターゲットにした危険源の観方とカイゼン活動が重要となっています。

 

⑵ 「最悪の事態を想定」した「定点観察と相互観察」の奨め

 ”現場的”リスクアセスメントの推進方法と、有効な巡視方法について「定点観察と相互観察」の実践研修をしています。多くの「死ねる作業」が出てきます。

最終的な対策は、人に頼った活動が重要になりますが、それ以前に作業環境や条件を整えることをしていかねばルールは守られません。

つまり、ムリなく、スムーズにできるように改善を進めることが重要になります。そうすれば、自ずとルールは守られるようになっていくし、生産活動もスムーズになり、品質も向上するでしょう。

経営者・管理者がやるべき事をキチッとやっていくことが大切だということです。

 

⑶ ターゲットとなる視点は「非定常作業」

重篤災害の7〜8割は、非定常作業から発生しています。非定常作業は、“非”であるが故に100%把握する事も難しい。同じ事が何度も発生すると、人は短縮行動や省略行動を取りやすくなります。「守れない・守りにくい作業」が増加することです。紙の上でしっかり洗い出すことを指示しても「ルールを守れ」と厳しく言われている以上、現場から「守っていません」などとは言わないことは想定範囲です。

 

⑷ 管理者が現場で語っている職場は良い職場

現場には、問題も答えもあります。つまり、管理者が現場へ足を運び、設備故障や異常が発生している場所へ行って、あるいはそれらを想定して現場の人に「問いかける(聴く)」ことが必要です。

問いかけられれば、人は答えようと考えるし、質問の内容が的を射ていれば真実を話すでしょう。答を言った人は、その言葉は忘れないし、守ろうとするはずです。こうした繰り返しの活動をしていけば、真のコミュニケーションがとれていくはずです(問いかけ方が大事になっていきますが‥)。

結論としては、作業者の思考回路づくり、考える事のできる人づくりにつなげていくことが大切と言うことです。

 

4.「モノづくりは人づくり」

⑴ 管理者に対する研修が浅く、「共育」の充実が必要

管理者が現場を守らなければ誰が守るのか。その管理者研修が、安全衛生法の教育程度で終わっています。

各社の過去の災害からの教訓とあるべき姿を継承する内容にしていくことが必要と思いますが、ナゼ充実されないのでしょうか。過去の教訓を活かすためのマニュアルと、機械安全のマニュアルが必要になります。これらを整備して教育体制をしっかり組んだ会社は大変良い教育ができています。

 

⑵ 「考え方」×「能力」×「情熱」=「結果」

安全衛生活動は、適当にやっておれば良い。と言う考え方が少しでもあれば「考え方」はマイナスであり、結果は見えています(※京セラの稲盛氏がJALに置いてきた言葉)。

自分の命、仲間の命を守るための活動が、なぜこうなってしまうのか? 死亡災害や障害災害になっている人たちは、生産第一で頑張っていて、将来を嘱望されている人たちが多いことも忘れてはならないことです。経営者や管理者は、部下は自分の子供と思い、「現場目線」でしっかり取り組んで行かねばなりません。

 

⑶ 「現場巡視は人を育てる活動」と考える

安全巡視(パトロール)は、まだまだ「ルール違反者を見つけること」、「指摘合戦」になっています。”ありがとうございました”と言われる巡視がナゼできないのでしょうか。

正しい作業をしていれば「褒めて(認めること)」、そして重篤災害につながる作業は「改善ポイント」として、それぞれ一つずつ言うことがポイントです。「こうすれば作業が楽になり、スムーズにできるのでは?」と投げかけることでカイゼンのヒントになり、指摘だけの時に比べ感謝され、結果として「ありがとうございました」ということばが返ってくるのではないでしょうか。

実践してみると褒めることが難しいようです。それは、日頃から作業を観察していない、ありたい姿を持っていないからできないのだと思います。

 

5.「現場の強さが企業の強さ」「安全活動はマネジメントそのもの」

⑴ 安全活動は、災害を減らすためだけでない

安全活動は、企業体質強化につなげることが重要だと考えてやってきました。現場を強くすること、すなわち「モノづくりは人づくり」の精神が大切です。

安全活動は、小集団活動の良いテーマと捉え、カイゼン活動を通じた仲間づくり、人づくりをしていくことと考えれば必ず良い結果につながります。カイゼンを推進することは管理者の仕事であり、「安全活動は、マネジメントそのものである」ということになります。

 

⑵ 「安全活動こそがTPS(トヨタ生産方式)の本流だね」

こうした声をかけられ大変嬉しかったことを覚えています。それは、安全活動を通じて「ムダ・ムラ・ムリ(3ム・ダ・ラ・リ)」の追及をして、生産ラインのシンプル・スリム化(本質安全化)が図られたこと、そして安全活動を通じてヒトづくりにつながったこと(個のレベルアップとチームワークの向上)、機械安全基準の整備や、活動の整理ができて、教育体制が確立し「活かし、そしてつなぐ」しくみづくりができて、災害の減少と共に、生産性向上へも寄与したことなどからだと思います。

 

⑶ 安全・品質の向上は、全ての仕事の質を向上するプロセスの中にある

組織横断的な仕事の展開で、機械安全基準などをはじめ全社共通化を図り、新設工場建設などの設備企画や、設備改善時の仕事がスムーズに出来るようになり、異常に対する対策も明確になり、結果として業務の無駄が大幅に減少しました。

安全活動は、特別な活動にしてはいけません。生産活動そのものなのです。普段の生産活動の中に安全活動をどのようにして組み込んでいけば良いかを考えてください。

 

⑷ 安全活動は、必ず経営をよくする

安全活動は、ムダを省き、人の動きをより良くする活動であり、真剣にそしてトコトンやることによって企業体質は必ず良くなるはずと信じて欲しいです。

安全化活動を奨めていく過程で、「問題は問題」とはっきり言える雰囲気が出てくると思います。皆さんで安全活動のあり方を考え、会社の問題を本音で語り合えるようにしていくために何をすべきかを考える機会にしていただければ幸いです。

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