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2018年12月19日更新Safety2.0 第3回 国際安全シンポジウム2018 ~ピルツCEOのThomas Pilzも登壇~

先月20日、東京にあります機械振興会館にて、一般社団法人セーフティグローバル推進機構と、㈱日経BP総合研究所主催による『Safety2.0 第3回 国際安全シンポジウム2018』が開かれました。セーフティグローバル推進機構は、2年前の2016年に設立され、明治大学名誉教授の向殿氏が会長を務められており、その英語名の頭文字からIGSAP(イグザップ)とも呼ばれています。

IGSAPは、業種や業界の垣根を超えて、ものづくりに対する安全概念や、セーフティアセッサといった資格を普及させる活動を行っていますが、ものづくりの新潮流に対する安全への要求にも力を入れられており、Safety 2.0やIndustry 4.0といった、これからの製造業や建設業での安全をテーマにする講演が多かった今回のシンポジウムは、まさにその一環と言えるものでした。

当日は、会長の向殿氏の他、経済産業省から製造産業局担当の上田洋二氏、国際社会保障協会(ISSA)からHans-Horst Konkolewsky氏、トヨタ自動車㈱から安全健康推進部安全衛生室 主幹の星野晴康氏、清水建設㈱ から土木技術本部 常務執行役員 本部長の河田孝志氏、そしてピルツからはCEOのThomas Pilzという、そうそうたるメンバーが講演を行い、Safety2.0やIndustry 4.0、Connected Industry、協調安全といったこれからの未来のモノづくりに目を向けた内容を中心に、国内外の安全に関する取り組みや最新の情報が紹介されました。

ISSAのKonkolewsky氏の講演においては、「Vision Zero」という、世界中の労働者が健康で安全に働くことができ、幸せな生活を送ることができることを目指す、昨年立ち上がったばかりのキャンペーンが紹介されました。世界の労働環境はどんどん変わっていきます。事故を無くすだけにとどまらず、労働者が心身ともに元気に働けることは、それだけ生産性も上がるわけですので、それらの取り組みをグローバルレベルでの協力をもって行っていく必要性が訴えられました。

立ち上がりからの一年で、すでに世界中の1860の企業、507の団体がこのキャンペーンに参加しているとのことです。Konkolewsky氏の講演後には、会場の参加者全員でVision Zeroの旗や国旗をかかげて、日本でのVision Zeroの発信を写真に収める、という場面がありました。

それでは、わがピルツCEOのThomas Pilzが行った講演について、簡単になりますが、内容をご紹介させていただければと思います。講演タイトルは『ドイツIndustry 4.0推進において必要な協調安全の考え方と安全資格制度の必要性』。

Industry 4.0、Safety2.0、スマートファクトリーといったコンセプトで提唱されている未来のモノづくりですが、その実現の暁には、単一製品の大量生産ではなく、カスタマイズされた個々の製品が量産体制の中で着実に作られ、人・モノ・環境がつながり、人と機械は協働で作業を行うだけでなく、安全も人と機械の協働により実現します。

そして、人と機械の安全だけではなく、セキュリティの面でも守られている必要があります。自社のシステムや制御が乗っ取られてしまうなんてことが起きたら、それは危険極まりないですよね。安全もセキュリティも、両方の面で「受け入れられないリスクがない状態」を保てていることが、Industry 4.0の成功には欠かせません。

これまでの機械安全の基本として、人と動いているロボットが接触して事故が起きないように、例えば、ロボットはガードで隔離され、人とロボットは離れて作業を行ってきました。しかしご存知のように、人とロボットが一緒に作業を行う時代は到来しています。ここで誤解してはいけないのが、「協働ロボット(Cobot)さえ導入すれば、すぐにでも人と一緒に作業できるんでしょ? 」という容易な解釈です。

ISO/TS 15066という技術仕様書では、人とロボットの作業方法について、メソッド1からメソッド4までの4タイプの定義がされています。メソッド1~4については、以前こちらの記事でご紹介させていただきましたので、併せてご覧ください。

協働ロボットとは何ですか?

メソッド4では人とロボットの衝突が起きます。衝突を防ぎ、安全を確保するためにも、多様化したロボットの種類の区分や、それぞれに備わる安全機能について、再検討をして、ロボットの種類の境界線を明確に引き、それらのロボットが使用されるべきアプリケーションを定義する、そのような作業が必要だ、とThomas Pilzは提唱します。

そして「規格」の重要性も、Thomas Pilzは強調しています。なぜなら、どの現場においても「受け入れられないリスク」を無くすことは必要なわけですが、中小規模の企業では、大企業ほどの確立された社内安全基準やシステムがあるわけではないかもしれません。そこで、安全レベルを達成させるガイドラインとして、中小企業で「規格」が使われ、安全な職場づくりが広まっていくことが大事なのです。もちろん経営者の理解と支援(特に時間とリソース面において)は不可欠です。

トレーニングを受けて、機械安全の知識を身につけることは、安全な現場つくりに大切です。(現在はまだ英語版のみですが、わざわざ外部へ行かなくても、ウェブ上で機械安全のトレーニングを受けることが可能な時代になっています。)もう1点大切なことは、トレーニングを受けるだけでなく、最後には試験を受けて、資格の証明書を受け取るということです。

日本では日本電気制御機器工業会(NECA)が行っているセーフティアセッサという資格認証制度がありますので、ご存知の方も多いかと思います。海外ではCMSE(Certified Machine Safety Expert)という認証制度があります。第三認証機関であるTUV Nordとピルツが共同で、これまでに4,000人以上のCMSEを輩出してきました。

CMSEやセーフティアセッサの資格は、機械安全における車の運転免許証のようなものだ、とThomas Pilzは言います。そのくらい機械安全の知識とは重要であり、逆に知識が無いというのは、無免許運転と同じくらいに危ないことでもあるのです。

今回の講演で、Thomas Pilzは画期的な提案を行いました。それとは、CMSEと日本のセーフティアセッサが手を組み、「安全」という同じゴールに向かって協力して取り組んでいこう、という今後のビジョンです。機械安全の知識の重要さを訴えるThomas Pilzの願いとは、今後、より多くの資格保持者を日本そして世界中で輩出していくことです。

Thomas Pilzの講演の最後のスライドには、ドイツ国旗と日の丸が並び、その間に、握手をする写真が載っていました。協働ロボットに関する規格の国際標準化についても、今後、日本とドイツの連携が見られるかもしれません。是非ともその協力と連携が実現し、実を結ぶことを期待したいです。

 

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