2016年10月19日更新PSENmlock ~ISO14119:2013に求められる正しい取り付け方法とは?~
先月の記事で、安全インターロックとガードロックの両方を備えているピルツの新製品“PSENmlock”をご紹介し、最後には、下記写真にありますPSENmlockの取り付け方法について、国際規格ISO14119に準拠していない箇所はどこか?という問題を出題させていただきました。(クイズにご応募いただきました皆さま、誠にありがとうございました!)
早速ですが、正解の方をお伝えさせていただきますと・・・、
「アクチュエータを取り付けているネジが、一般のネジであるため取り外し可能となっている」 という箇所でした。
これは、容易な方法で安全装置を無効化できてしまう、ということになりまして、このような一般的なネジでは、ドライバー等で外すことが出来てしまい、取り外されたアクチュエータをセンサ側に差し込めば・・・、そこでは“あたかも扉が閉じている状態が作られてしまう”わけです。
これではガード(柵)と強力な保持力によるロック(施錠)で危険源を隔離し、機械の停止が確認されている間のみ扉が開く…、というせっかくの機械安全の仕組みは保てません。
安全装置の機能を無にしてしまう、“無効化”を最小限にする設計を行うことが、ISO14119:2013では求められています。
国際規格「ISO14119:2013」とは
そもそも、ISO14119とは?ですが、その名称を
「機械類の安全性」-ガードと共同する
インターロック装置-設計及び選択のための原則
と言いまして、安全関連のインターロック・監視装置の選択と使用方法についての国際規格です。
これに対応する日本の国家規格(=日本工業規格)は「JIS B9710」になります。このJIS B9710は、1998年に発行されたISO14119:1998に準拠しており、改訂されたISO14119:2013での変更点については現時点(2016年10月現在)では含まれておりません。ですが、国際規格となっていますので、日本から海外向けに輸出される設備機械等には適用される内容となります。
EUでは、2013年の改定後に1年半の移行期間を経て、それまでのEN規格「EN1088」と置き換わる形で2015年4月30日より施行されました。つまり、EU各国ではISO14119:2013がすでに国家規格となっています。
[備考:WTO(世界貿易機関)の加盟国は、”TBT協定”という取り決めにより、国際規格を基礎とした国家規格の作成を行うことが義務付けられていますので、日本のJISも、ISOをはじめとする国際規格と整合されていくことになります]
2013年の改訂で追加された変更点とは
主な変更点としては…
- ISO14119は欧州だけではなく国際的に適用される
- インターロック装置の安全スイッチ(センサ)はタイプ別に分類される
- 電磁ロックスイッチの必要な保持力についての記載
- 安全スイッチのタイプ別、追加の無効化防止策
などが挙げられます。
強調したいのは、改訂前(ISO14119:1998)よりも「無効化防止」に対するより詳しい記述が加えられたところです。
先ほども述べましたように、ISO14119では”無効化の可能性を最小限にする設計(=不正操作防止対策)”が求められていますので、インタロック装置は“簡単な方法”では無効化できないように設計される必要があります。
ここで言う”簡単な方法”とは…
手動で、または容易に利用可能なものによって、“意図する操作”が達成されること
を意味しまして、
”容易に利用可能なもの”とは…
- ねじ、針、金属板片、ドライバ、磁石、など
- 日常使う物。例えば、キー、コイン、機械の意図する使用で必要とする工具、などを指します。
ISO14119:2013では、インターロック装置の安全スイッチが4つのタイプに分類され、そのタイプ別に追加の無効化防止策が定められています
この規格では、安全スイッチの無効化の可能性を最小限に設計した上で、更に安全スイッチのタイプに応じて施す必要がある無効化防止策が示されています。
安全スイッチのタイプについては、以前は2タイプに分類されていたところ、改訂後は4タイプに分類されるようになりました。
コード化タイプの安全スイッチにおいては、下記の3つのレベルに分けられます。(数字はコードのバリエーション数)
- コード化レベル低(Low):コードパターン 1~9
- コード化レベル中(Medium):コードパターン 10~1000
- コード化レベル高(High):コードパターン 1000以上
今回ご紹介しているピルツのPSENmlockは、「機械式」で「コード化タイプ」の製品になりますので
→ 分類は”タイプ2”となります。
それでは、それら安全スイッチのタイプ別に、どのような無効化防止策を取る必要があるのか?
それはISO14119の表3にまとめられています。下記は和訳したものになりますがご参照ください。
ピルツのPSENmlockは、タイプ2+コード化レベル高(※)の安全スイッチ。上記の表によると『アクチュエータを取り外し不可能にする』ことが必須として求められていることになります。
もし、使用する安全スイッチが同じくタイプ2であっても、コード化レベルが低もしくは中であった場合には・・・
上の図の『①~④の方策のうちどれか1つ』と、⑦の『アクチュエータを取外し不可能にする』の両方ともを施さなければならなくなる、ということです。
PSENmlockならば、そこまで行わなくてもこれ1台で済みますね!
[※ 完全コード化(製品型式:PSENml b 2.1)もしくは特定・完全コード化(製品型式:PSENml b 2.2)の場合]
ということで、ISO14119に従ったPSENmlockの正しい取り付け方は・・・
必須である無効化対策は『アクチュエータを取り外し不可能にする』ですので、アクチュエータを取り付ける際には、一般的なネジではなく、例えば下図の1方向ネジのような”特殊ネジ”で取り付けることが必要です。このような特殊ネジは、ドライバなどの簡単に使えてしまう工具では取り外せません。
しかも、このPSENmlock、これ1台でパフォーマンスレベルは「e」まで達成可能です!
より詳しい内容や製品についてのお問合せ等は、いつでもご相談ください。
最後になりますが、インターロックについての説明は「そうだ!ピルツに相談だ!」に後日掲載予定です。
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