2019年3月26日更新協働ロボットの導入による明るい未来
2月28日、雨天の中東京都立産業技術研究センターで「ロボット産業活性化事業セミナー」が開催されました。産業用ロボット、協働ロボット、介護/福祉ロボットなど、さまざまなタイプのロボットの安全性、国際安全規格への適合性、認証について専門家が解説し、国内の事例も紹介されました。雨天にもかかわらず多くの聴講者が参加し、真剣な質疑応答が繰り広げられ、ロボット分野への関心の高さを実感しました。今回の講演の中から、特に印象に残ったユニバーサルロボット社の西部慎一氏の「協働ロボットURの導入ステップと国内事例」についてご紹介したいと思います。
協働ロボット市場は2017年から2022年の5年間で10倍の成長が予測される成長市場です(2017年予測による)。2017年の$283,000,000から2022年には$3,269,000,000までの成長が見込まれています。人手不足解消のため、また西部氏曰く「製造における作業者の価値創造を助けるツール」として今後ますます活用されます。ユニバーサルロボット(UR)社はデンマーク発祥の世界初の協働ロボット専業メーカーであり、50%を超える市場占有率で業界をリードする企業です。
今までロボットと言うと大型の産業用ロボットを思い浮かべる人が多かったのではないかと思いますが、産業用ロボットと協働ロボットの違いは何でしょうか?初めてお聞きになる方は過去記事の協働ロボットとは何ですか?をご参照ください。どちらのタイプにも共通するのは、ロボットはどのような作業を与えられても文句も言わず、24時間の連続稼働にも耐えるため、人間による作業に比べて生産性の向上が期待できる点です。では、違いについて見ていきましょう。通常、協働ロボットは非常に高速な作業には対応しないため、超高速作業を行う場合は、産業ロボットが必要になります。しかし、産業用ロボットを導入するとなるとプログラミングの専門知識が必要ですし、多額のコストもかかります。一方、協働ロボットなら、事前にプログラミングの知識がない人でもわずか数時間で必要な内容を習得でき、設置後すぐに使用できます。したがって、産業用ロボットに比べて数週間時間を短縮できることになります。また、高価な産業用ロボットに比べ、協働ロボットはコストを抑えられるため、短い投資回収期間(通常2年~2年半以内)を期待する多くのユーザの期待にも応えます。
協働ロボットを使うメリットは、一言で言うと、簡単かつ安価に生産性を向上し、危険な作業や単調な反復作業から作業者を解放できることです。協働ロボットは、その名の通り、人と同じ空間で作業することができます。従来の産業用ロボットは安全柵で作業者から隔離されていましたが、協働ロボットは安全性が確保されており(URロボットの場合、EN ISO 13849-1カテゴリ3、PLdおよび10218-1に適合)、作業者と同じワークスペースで安全に稼働します。そのため、作業効率が上がり、生産性が上がるだけでなく、安全柵を追加する必要がないため、従来に比べロボット導入のコストを削減できます。ただし、この場合もリスクアセスメントの実施は必須ですので、ご注意ください。
URのロボットはすでに50ヶ国以上でさまざまな用途に使用されています。今回主に国内の採用事例の動画が紹介されました。日産自動車のパレタイジング、ラベル貼り付けにUR10が採用された事例。株式会社アルファの射出成型、ピック&プレイスにUR3とUR5が採用された事例。いずれも安全柵なしでURロボットを使用していますが、現場の作業者が作業負担の軽減や生産性の向上に貢献したとコメントしています。その他の良い点として、狭いところでも設置でき、生産の状況に応じて移動して別の用途に使用できる点も挙げていました。
自動車以外の分野でも協働ロボットは採用されています。紹介された事例で特にインパクトがあったのは、食品と飛行機の操縦での事例です。カラッと焼きあがった大振りのたこ焼きが美味しい「銀だこ」のたこ焼き機でURが使用されています。ハウステンボスの店舗で、URによる自動調理が行われています。片面が焼きあがったたこ焼きをURが次々にピックで裏返していく姿が映し出されました。画像認識で回っていないたこ焼きを認知して、高精度で裏返しの作業が行われるため、ムラなく均一に焼き上がります。隣で人が焼いていたたこ焼きと遜色ない見事な出来上がりでした。また、アメリカの事例ですが、現在製造されていない古い飛行機の機体の操縦でも今後URが使用される予定です。実際の飛行にはまだ採用されていませんが、Boeing 737ではフライトシミュレータ上で動作確認が終了しています。小型機ではすでに離発着に使用されているそうです。また、工作機械と協働ロボットの相性のよさについても説明がありました。工作機械では作業者が次の作業を行うまで、長い待ち時間が発生しますが、協働ロボットを採用することでこの無駄な時間をなくし、熟練作業者が付加価値の高い業務に集中することが可能になります。
このように今後協働ロボットはさまざまな産業で活用されることは間違いありません。安全の認証を取得しているとは言え、作業者と協働ロボットが衝突した場合の力と圧力の値を測定して、その値がTS ISO15066に基づく閾値以下になることを確認する必要があります。その際、当社の人とロボットの協働のための衝突測定セットPRMSがお役に立てます。協働ロボットを現在使用中、または使用を検討中の方で、測定をまだ実施していいない方はぜひこの機会にご確認ください。今後各分野への協働ロボット導入により、作業者の負担が軽減され、今年から義務化される有給休暇の消化をはじめとする「働き方改革」が実現されていくことを願っています。
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