2025年9月17日更新野菜づくりと人づくり
今年も異常気象が続いています。もはや異常が続きすぎて当たり前?になってきました。9月に入り突然九州南で台風が発生し、太平洋側を縦断するように移動し各地へ大雨を降らせました。今年は、雨が降らず、水不足が言われていたが今度は、一気に降りすぎて被害が出ています。自然はままならないことは知っていても、もう少しバランス良くと願うのは私だけではないと思います。
私の住む豊田市は、猛暑日が50日となり、昨年の55日を超える勢いです。日本一にも確か3回なりました。嬉しくない記録です。体調を考え、夏は現場指導依頼をあまり受けずにしていますが、どうしても行くことになります。健康だからできていますが、汗だくになってやっています。誰にでも言えることですが、いつ倒れてもおかしくない環境になってきました。今回は、日々いそしんでいる野菜づくりと人づくりの共通点について考えてみましょう。
1.家庭菜園50年
(1) 悪戦苦闘の野菜づくり
家を建てたときに道路を挟んで荒れた畑がありました。母が「畑を借りてネギでも作れば便利だよ」といった言葉がきっかけで野菜づくりがスタートしました。もう50年にもなります。初めは、何も分からず、畑のおばあちゃんに教えてもらいつつネギ、トマト、キュウリなどを作り始めました。残業も多く休みも少ないサラリーマン時代で、しかも好きなテニスを休日の日課としていたこともあり、空いた時間の畑仕事は野菜づくりというよりは、草との戦いでした。それでもトマトが採れ、キュウリができてとてもおいしく感動したことが今日まで続いているエネルギーになっています。
(2) 土づくりに3年、人づくりも3年が大切
雑草は強く、子孫を残すために早く種をつけます。一度種を土に落としてしまうと3年は季節季節にきちっと芽を出します。毎年その生命力には驚きます。土づくりのためには、出た芽はできるだけ早く刈り取ります。一度芽が出た草の種はお役御免なのでできるだけ早く刈り取ると徐々に少なくなっていきます。抜いてしまうと違う種が自分の出番と思って生えてくるため抜きません。そして牛糞堆肥や肥料をやりつつ耕作を続けると3年経つと草の生え方が大きく減少します(と言っても種は空中を飛んでくるのでなくなりはしません)。企業内でも人づくりのための期間として「最初の3年」が大切と思ってやってきました。「三つ子の魂百まで」と言う言葉もあります。生まれて3才までに基礎的な性格や行動様式が形成される重要な時期と言われています。社会人になったときも同じです。上司は選べませんのでなかなか難しいですが、社会人は赤ちゃんと違って考える力がついているので自分としても努力する期間と考えるべきだと思います。私が職制になってからその心構えは持って部下と接してきました。その後、皆元気にそしてそれなりの地位についてくれました。私の自慢の一つです。新人時代の3年と考えると挽回できないように思ってしまいますが、新たな職場、新たな挑戦を始めたときから3年が大切と考えると良いと思います。3年で芽が出ない、足跡を残せないのであれば一度やり方を見直す必要があります(「私は、この職場に3年しかいないので現場に力をつけてやってもらう。」という人と時々で会います。言葉は格好良く聞こえますが自分は何もしない人です。こういう管理者は要らないと言っています。)。上司は、夢を語り、時に厳しく、時に優しく一緒になって考え行動することが求められます。
(3) 野菜は育つもの
「野菜は育てるのではなく育つのだ」とある大学の先生が言っていました。その通りだと思います。良い土壌をつくりそこに苗を植えれば勝手に育つものです。ただし、日々成長を見守りつつ、虫がつけば消毒をして、水が足りないと思えば水をやり、肥料が足りなければ肥料をやります。しかし、やり過ぎは返って苗を腐らせてしまいます。過剰な指導、行き過ぎた指導は毒になると言うことです。ものを言わない野菜と同じように、ものを言わない現場に足を運び変化点を感じ取って自ら対策を打つこと、そのための現場観察(巡視)が必要であると言うこと、これこそ管理者の責務と言うことだと解釈しています。夏野菜は、25~30℃が適温と言われます。今は、遮熱シートをかけて野菜の熱中症対策もしています。環境改善・土壌づくりは与える側、管理者(会社)の仕事です。
(4) 今年の出来は?
春採れ野菜の代表格はジャガイモです。ここ2-3年は大変良い出来で、店に出ているものよりおいしいと言われます。夏野菜のキュウリもしかり。シャキシャキとして包丁の入り方が違います。畑で最も熟したときに採ることで糖度も高く新鮮でおいしいのは当たり前です。水やりや追肥、暑熱対策、雑草取りなど手塩をかけているだけに収穫の時は心が躍る感じです。育成の過程がどれだけ大変でもこの感動・喜びが次へつながるエネルギーになります。職場の改善活動の達成感と同じだと思います。達成感を感じてこそ、次のステップへ行く意欲が湧きます。秋冬野菜の植え付けは、この暑さで今年は苦戦しそうですがすでに土づくりはできています。今年も白菜、大根、玉ねぎ、ニンニクなどの栽培に挑戦します。今年も野菜の高騰がありそうで心配ですね。
「オニヤンマ(トンボの模型)で蚊対策」を知っていますか?女子プロゴルファーが帽子につけているのを見て何だろうと思ったのがきっかけです。私も作業中に帽子に2個、腰に2個オニヤンマを着けています。今は、多く知れ渡り百均などでも売っています。30℃を超えると蚊も動かなくなります(外での運動は禁止?)。それらが相まって今年は、蚊に刺されることが激減しました。減災には、まず「物的対策」が必要です。
2.現場観察指導などで思うこと
(1) 人づくりに臆病になっていないか?
「働き方改革」というが何を持って「働き甲斐」を感じろと言っているのか、肌感覚でよく分からない現象が多い気がします。目標を持ち、チームとして挑戦して、達成してこそのやり甲斐・働きがいだと思うのだが「○○ハラ」が変に増殖?して人を育てることから臆病になっている人たちが多くなっている傾向を強く感じています。子供が少なくなり、家庭での集団生活の経験が少なく、叱られる経験も少なくなっている人たちが、会社に入って少し強く注意されたら親がでてくることもあるとか。全てではないが何かが変だと思うことが起きています。難しい時代ですが、人と人の関係、人間の本質は変わらないと思います。折角、今の仕事に就いたのですから、思い切ってやって欲しいです。
(2) 指示待ち人間が増えている?
言われたらやる、言われたからやるのでは楽しくなかった自分としては、何か歯がゆいものを感じてしまいます。自分が何をしたいのかという「発想」を持たなければ人生は、面白くないと思うのですが‥‥。安全活動でこうしたことが顕著になり、形骸化した活動をただ実施している傾向が強くなっています。危険予知(KY)活動、ヒヤリハット活動、リスクアセスメント活動、安全パトロール、表示等など、「何のために、誰のために、いつ使うために」ということすら腹落ちしていない人が、部下に活動を指示しているだけでは組織全体として活力は生まれません。やらされ感の払拭をそれぞれの立場で考え、それぞれの目的・主旨を自分で落とし込み、全員が腹落ちする活動に変えていかねばならないと思います。私の研修では、「実践無くして成果なし」と考え、それぞれの機会で強く訴え続けています。
(3) 安全活動を通じた元気な人づくり・組織づくりを
安全衛生活動の目的は、「命を守る活動」です。「最悪の事態の想定」をして「起きてからでなく未然防止活動」を展開することは誰も反対しない共通テーマです。その活動の過程で同じ目標に向かっていく集団が出来て、改善が進めば自分たちの仕事が「楽になる」はずです。そこに達成感を感じ、次のテーマへの挑戦する意識が芽生え、一緒になって取り組んでいく楽しさを感ずる事につながれば、「個々人の成長と組織の成長」につながっていくと思います。先回も書きましたが、人づくりに繫がらない安全衛生活動は1回やめてみることです。私が指導させてもらっている規模(大企業が多いですが)は、500人以下の事業所が多いですが、3年くらいかけて指導することで、やるべき事の的が絞られ、腹落ちした活動になり、必ず改善活動が活発になって上記のような懸念事項が良い方向に向かっていきます。勿論、継続と継承することが必須です。指導されたことを鵜呑みにして忠実にやるだけでなく、実践してみて初めて分かることが出てきます。それらを「各事業所“流”」としてつくっていくことができれば必ず定着していきます。是非、挑戦して欲しいと願っています。
- 補足 ‧‧‧ 参考まで以前読んだ本から一部分を要約して紹介します。
「ピグマリオン効果」‥他者から期待されることでその期待に応えようとして能力・成果が向上する心理効果」
- 「教師が生徒に期待する態度が、子供の学習意欲に大きな影響を与える」という説
例② 子供を褒めない親は子供を伸ばすことはできない
・「日の光が当たらないところで植物が育たない」ことと同じ
・「自己肯定感」が十分でなければ、子供は安心して前に進めない‥マイナスイメージの言葉を多く浴びている子供は、自分に自信が持てない。
記事一覧
- 野菜づくりと人づくり
- 安全衛生推進者の役割について~そのⅡ~
- 安全衛生推進者の役割について~そのⅠ~
- ヒューマンエラーは原因でなく結果
- 日本の明日は大丈夫?
- “話す力・伝える力”と“言葉の意味”を考えてみる
- 安全活動は足し算?引き算?
- コミュニケーション力向上の心構え
- 最近の関心事から“雑感”
- 安全教育を充実させていく“肝”
- 先人の偉業と教訓そして実践
- サッカーワールドカップと俯瞰力
- 安全衛生法制定50周年と今後のあり方考察
- 水の大切さと恐ろしさ
- 冬季オリンピックと平和を考える
- コロナ禍の教訓を労働安全活動に活かす ~2021全国産業安全大会・講演要旨~
- モノの見方・考え方を一考する ~本:“どうせ死ぬから言わせてもらう”から~
- 正直に生きる・語ることの大切さ ~“生き様”を振り返る~
- 新型コロナ禍の更なる課題・再考 ~件数・パフォーマンスより内容重視の活動へ~
- 安全衛生方針の重要項目と展開ポイント ~絞り込みと運用マニュアルの活用~
- “新型コロナ禍”から考える教訓-2 ~行動の変化~
- 思い込みの怖さと正しい判断・行動 ~ “新型コロナ禍”から考える教訓~
- “野村克也元監督”の教え・あれこれ ~人を育て残す事の大切さ~
- “ラグビーロス”とその後~“ラグビーワールドカップの感想と実践の大切さ“~
- “人間性(心の持ち方)”について考える~ラグビーワールドカップと“故・平尾誠二氏”の生き方~
- より・安全で、安心な時代“令和”をつくろう~“平成”を考えつつ~
- 継続と深掘り・“不断”の努力の大切さ~“東日本大震災”から丸8年~
- チームワークとリーダーの役割
~“大坂なおみ”全豪オープン優勝~ - ポジティブシンキングの実践 ~“箱根駅伝”の教訓~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その4(最終回) 「足:踏み込む」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その3「口:問う」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その2「目:観る」について~
- ”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その1「耳:聴く」について~
- ”環境”の大切さと人の行動 ~“命を脅かす”気候変動~
- まず”減災” 目ざせ”ゼロ災” ~大阪北部地震の教訓~
- “危険なタックル問題”から人の育て方を考える
- 作業標準書・作業手順書の作り方と活用法 ~“守・破・離”の心~
- 薬傷災害から活かし方・つなぎ方を再考する ~事後の百策より事前の一策~
- 気づかい・個のレベルアップとチームワーク ~平昌オリンピックの感動からの教訓~
- 後継者・人の育成を考える ~人の成長をどのようしてサポートするのか~
- 気づき・気がかり粗末にするな 気づいたらすぐ行動に移せ!
- 安全活動と品質活動の“根っこ”は同じである ~安全活動から“本音の活動”を深掘りしよう~
- 機械安全基準の制定と進め方 その2 ~安全・品質・環境は企業活動の根幹である~
- 機械安全基準の制定と進め方 その1 ~激しい向かい風の中を”航行”~
- 「そうだ、古澤先生に聞いてみよう」コーナーへのご投稿について
- 実践的なリスクアセスメントの進め方
~隔離対策のポイント~ - 新コーナー【そうだ、古澤先生に聞いてみよう!】いよいよスタート!
- 実践的なリスクアセスメントの進め方
~「現場リスクアセスメント」の進め方~ - 実践的なリスクアセスメントの進め方 ~重篤な災害に的を絞った洗い出し~
- 安全衛生方針の作り方・活用の仕方
~もっとわかり易く~ - 1年間を振り返って ~現場目線からの提案と報告~
- 非定常作業に特化した活動‥その4 ~重要な柱「ソフト対策」の進め方~
- 非定常作業に特化した活動‥その3 ~真の要因に対するハード対策の推進~
- 非定常作業に特化した活動‥その2 ~洗い出しのキーワードとカイゼンの実践~
- 非定常作業に特化した活動 その1 ~定義付けと洗い出しのポイント~
- 管理者研修の実践 ~第75回全国産業安全衛生大会(in 仙台)講演骨子~
- “新しい安全”「Safety 2.0」と言う考え方
- 重篤災害に的を絞った活動の勧め
- 人を育てる安全巡視の進め方
- 「みる」と「みえる」の違い
- 安全活動はカイゼンの入口と捉えてみよう
- 腹落ちした活動とするには「具体化」と「共有化」
- 産業現場で起きている災害の現状と課題
- 古澤 登(ふるさわ のぼる)プロフィール