ピルツジャパンのブログ「月刊 裏ピルツ新聞」

2018年10月16日更新”腹落ちさせる指導”について考えてみよう ~その2「目:観る」について~

 先月号に引き続き、“腹落ちさせる指導”について、たまたま読んだ本から、引用させていただきつつ、自分の考えてきたことや経験をお話しして少しでもお役に立てれば‥との思いで書いてみます。

 ・引用した本:「なぜ、あのリーダーはチームを本気にさせるのか?」

広江朋紀(ひろえ とものり)著 (同文舘出版 1,500円+税)

私が愛読している「TOPPOINT AUG.2018」に紹介された。

 ・引用文の印:私の勝手な解釈が入ることをお断りしておきます。以下、広江氏の著書から引用した言葉には“*”をつけます)

1.「観る」と言う言葉

①「見る」から「観る」へ

広江氏は「リーダーは、”見る”のではなく”観る”。すなわち、深層に根ざす不変の本質を見抜く眼力を持つことが必要」と言っています。私は、「災害は、職場の問題の代表特性である」と仮定して活動をはじめました。それは、災害対策会議の内容が、毎回同じ項目にいき着いていることに疑問を感じ、「なぜ同じ災害が繰り返されるのか?」という素朴な疑問が湧いたことからでした。

現在も多くの企業で繰り返し言われている災害の原因「ルールを守らなかった、KY不足、リスクの洗い出しが弱い」と同様のことだと思っています。その真因を知りたくて、災害が発生した職場を繰り返し訪問し、現場の中核の人たちと話し合いを続けました。そこで理解したことは、災害の発生する職場には多くの課題が潜んでいることでした。

表面的な問題点だけでなく、「ナゼナゼを繰り返し」真の原因を探ることでした。その全ての要因に対してアプローチしていかなければ災害はなくならないと言うことだったのです。

まさに”深層に根ざす課題の本質を観る努力”を重ね、カイゼンのための提案と実践活動をしてきました。こうした経験から、どのような会社・職場へ行っても、深層を知るための目を持ち続けて、会話をして理解しようとしています。この過程で私の理解が深まることもさることながら、指導を受けた人たちが「腹に落ちる」事につながっているのではないかと思います。

 
②「みる・みえる」と「現地・現物」

心理学者のつくった”だまし絵=ルビンの壺(盃)”を研修で良く使ってきました。みる意識がなければ見えないし、みていても集中が続かず他の部位が見えてしまうというもので、「みえる」事も大事、「みる」意識はもっと大事と言っています。

災害発生時、全体が「みえる」事は、周囲の状況を確認するという大変重要な役割があります。報告書や机の上だけでは分からないことが多くあります。これが現地・現物の良さのひとつです。

「森をみて木をみる、木をみて森をみる」と繰り返し話すことが多くあります。しかし現場へ行っても「みる」意識がなければ重要な事を見落としてしまいます。何をみるのか?「現場へ行く時は、仮の答えを持って行け」と教えられました。

過去の災害からの教訓を持っているか?

重篤な災害に至る原因を整理してパターン化しているか?

現場はどうなっていて欲しいか? など「観きる」ためのベースとなる考え方を持っているかと言うことが大切になります。

例えば、現場で重篤災害につながる危険源、重大なリスク(どうしたら”死ねるか”など)を見落とさずに「観きる」事ができるかと言うことです。現場の人たちは、一生懸命仕事をやっていますが、いろいろなトラブルなどの課題が仕事の進行を阻害していないか、真因はどこにあるかということに気を配ることができれば、「この人は現場を良く知っている。我々のことを考えて発言してくれている」となり必ず、相手の対応・意識が変わるはずです。

 

2.「偏見(バイアス)」を外す

広江氏によれば「*不変の本質を見抜く眼力を持つためには、立場の違いによって生じる偏見(バイアス)を外さねばならない」「人は置かれた環境や習慣から、無自覚にバイアスを持ちがちだ」と言っています。次の4つの歪んだ視点の自覚だけでも自身を知る上で有効と紹介されています。

①「*すべてか無か」:何でも白黒はっきりつけたがる視点

物事には、100ー0はないと考えてやってきました。災害が発生すれば何らかの原因がありますが、最近は、難しい場面が多く、複合的な要因が絡んでいるケースが多いと思います。それだけに「やった奴が悪い」と決めつけては、真の対策に結びつきにくくなります。

正しいこと、間違ったことの整理、今までやってきたことを認め、足らざるを補い「積み重ねていく活動」へ展開していかねば良くなっていきません。あるべき姿を持ち、それと比較し、何が足りなかったのか、できていなかったのかという分析と共にグレーゾーンもあるという前提で検討するという方法が良いと思います。ここを一方通行で展開すると腹落ちしない結果になってしまいます。

 
②「*過度な一般化」:一部の事象を見て、すべて同じ傾向と思い込む視点

災害の結果や真の要因は、同じかもしれませんが、発生する過程は違うことが多くあります。対策の的は、できるだけ絞り込んで展開した方が効果的だと思いますが、具体的な展開については、職場や設備・人の歴史も現状も違いますから具体的には、職場に任せることが大切だと思っています。自分達で決めたことは、必ずやり遂げるはずですし、責任を持って実践してくれると信じてやってきました。信じることが大切だと思います。

 

③「*べき・ねばならない」:凝り固まった決めつけをしてしまう視点

「あるべき姿・ありたい姿」は、持つべきだと思っています。しかし、それは、不変の考え方ではないという柔軟性を持った方が良いと思います。

勿論、絶対に譲れないルールや、しくみはあります。全てをこの言葉で決めつけたとしても、災害が発生してからでは、相手は何も言えないでしょう。発生する前にどれだけ浸透させてきたかが大前提だと考えています。上記①②とも関連しますが、ルールも変えていくことは常にあるという前提で現場と接することが重要と考えています。

 

④「*レッテル貼り」:自身や他者の特徴やネガティブなイメージを決めつける視点

災害を発生させる人は、何度も発生させる、人の言うことを聞かない、やることをやらないなどと言いたくなるケースはあると思います。「安全活動は、人づくり」と考えてやっています。

人は、誰しも現状より良くなりたい・良くしたいと思っています。しかし、性格や経験不足や職場環境などから成長できない人もいます。安全活動は、命を守る活動です。そのことに対しては、誰も反対しません。安全をテーマとして「自分達の仕事を”楽”にするためのカイゼン活動の入口」と捉えて、ポジティブに展開していくことが大切だと思っています。

災害が、発生したら元には戻らない訳ですから、「ピンチはチャンス」と捉え「いかに活かし・つなぐか」と言うポジティブな考え方にしていけば良いのだと思います。そして活かす事ができたら、互いに認め合い次のステップに向かえば良いと考えています。人を育てつつ進める安全活動と考えたら、良いのではないでしょうか?

 

3.まとめ

今回は、「目:観る」という要素でした。みるという文字も「見る、診る、視る、覧る、観るなど」色々あります。単に見える事も大事ですが、「深層を観きる目」については改めて考えさせられました。私は、「職場”診”断」と言う言葉をよく使います。相手の心を読んで励まし、時には叱咤し、互いに良い方向に向かっていける話し合いを大切にしてきました。誰しも、どの職場でも、「井の中の蛙」になりがちです。それだけに安全衛生スタッフなどが「診断しアドバイスをする」ことや、たまには、「外部との交流」や「外部講師による指導」などを企画して観る目を養うことも大切だと思います。

 次回は、「口:問う」「足:踏み込む」について書いてみたいと思います。お楽しみに‥。

記事一覧

ページの先頭へ戻る