ピルツジャパンのブログ「裏ピルツ新聞」

2021年6月14日更新雨の日も心が晴れる永井宏さんの本

永井宏さんというアーティストをご存じでしょうか。私は書店で見かけた永井さんの一冊の本を事情があって当日買うことができませんでした。買わなかったことを後悔し、諦めきれなかった私は、著者名もタイトルもわからないのに、白い表紙の本ということと、あやふやな内容をメールで伝え、書店に問い合わせました。すると、親切な書店の店員さんが画像を送ってくれたので、「これだ」と思って、早速発注しました。その本のタイトルは「愉快のしるし」。

その本には、タイトルの通り「愉快」がたくさん詰まっています。永井さんは2011年に59歳の若さで他界されていますが、リアルタイムで彼の活動を知らない私にとっても新鮮で、全く古さを感じさせません。この本には、永井さんらが立ち上げたSUNSHINE+CLOUDと言う通信販売のショップで、年2回発行された自作のカタログに収められた文章が17年分集められています。

全体を通して登場するのは、海辺の町、葉山での何気ない日々の生活から見つけた小さな楽しみや喜び。海辺の散歩やサーフィン、ハワイの島々での休暇、フラダンス、友人の子どもたちとのたわいのない会話などが、ゆとりのあるスペースに、短い文章で綴られています。いつもラフな格好で葉山の町で暮らし、日々愉快を見つけて、仲間と一緒に過ごす時間を大切にされた永井さん。サーフィンもフラも全く経験のない私でも、永井さんのように「愉快」に暮らせたら素敵だな、と葉山のシンプルライフに憧れてしまいます。

永井さんは、まだインターネットでの通信販売が今のように一般的でない頃から、こだわりの商品を作る作り手が、衣服や工芸品、農産物などを販売できる場を提供しました。そして、カタログも業者に任せるのではなく、自ら制作したのです。

本業は美術作家なので、ポスターや写真の制作、著書や詩の執筆だったのでしょうが、それだけにとどまらず、アーティストの発表の場や詩の朗読会の企画・提供、飲食店、農業、出版などを始めたい人の支援まで、さまざまな分野の人が一歩を踏み出す支援をされていました。永井さんに背中を押されて世に出ることのできた方が大勢いるようです。「だれにでも表現はできる」と多くの人を励まして来られたその生き方が、多くの種を実らせて来たのですね。

「愉快のしるし」には、永井さんの好きな音楽もときどき登場します。私の知らない一世代前のアメリカンミュージックなどをApple Musicで検索して聞きながら、この本を読むのも楽しみの一つです。ちょっと私の好みではない曲も、これいい、と思う曲もあるのですが、この本に出合わなければ、きっと出会うことのなかった過去の音楽に出合えるのも「愉快」の一つだと思います。

永井さんの世界にどっぷりハマってしまった私は、永井さんの本を大人買いしてしまいました。これからまだまだ読めるかと思うと、とてもワクワクします。みなさんも、ちょっと疲れた時、気分が晴れないとき、永井さんの本を手に取ってみてください。美術にも、音楽にも、文学にも造詣の深い永井さんの言葉が、愉快な気分にしてくれるかもしれません。

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