2018年11月17日更新チャイナタウンへようこそ
横浜には、食欲の秋にぴったりの場所があります。その場所とは横浜中華街です。家庭料理から高級料理まで、広東・北京・上海・四川・福建・台湾・薬膳…などなどなど、様々なジャンルのお店があります。ガイドマップによると、中華料理屋さんは133件、食べ放題スタイルの中華も足すと143件もあります。
いろいろな味の中華まんや小籠包を手軽に楽しめる、食べ歩きスタイルだって人気です。中華以外のレストランもありますし、横浜中華街にいったら、お腹いっぱいになるまで食事を楽しめること間違いなしです。
私は子供のころから中華街の中華まんや中華菓子が好きでした。学生時代は友達と食べ歩き目的で行くことはもちろん、雑貨屋さん(中華だけではなく、アジアン雑貨やアフリカ雑貨、古着やアンティークまであります)をブラブラ回ったりと、よく中華街へは遊びに行っていました。
回るテーブルでなくていいんです。お昼時なら、ランチセットの気分で点心コースにしたりしますが、いろんな味をちょっとずつ楽しめて、お得な気がするんですよね。この間、お店の人が10品1280円のコースを1000円にまけてくれました。あちらこちらから客引きでお店の人が声をかけてきます。ほとんどスルーして、自分のペースでお店を決めますが、たまに感じのいいお店の人だと、そこで決めてしまったり。
点心コースはそれぞれちょっとずつ、と言っても、結局は食べきれないほどの量。いつも残してしまい勿体ないと思っていました。そのお店は持ち帰りができたみたいで、他のお客さんはそのようにしていました。私も今度は聞いてみようと思います。
いまや小龍包の方が目立ってきていますが、中華街での食べ歩きの定番と言えば、中華まんですよね。中華街の中華まんは、お店によって具の中身も味も、皮も異なります。私は食通ではないので、どの中華まんでも満足してしまう気がしますが、お肉の旨味とジューシーさ、筍の食感、ふかふかの皮が最高な、江戸清の「ブタまん」が好きで、時々無性に食べたくなります。
コンビニで売られている中華まんの種類も増えてきていますが、中華街では、例えば「フカヒレまん」などの変わりダネが昔からあり、それも中華街の魅力です。一時期私は、中華街に行くたびに「キノコまん」ばかり食べていました。数種類のきのこが詰まっていて、キノコ好きにはたまりません。
この間「黒毛和牛すき焼きまん」なるものをお土産で買ったので、それを食べるのが今は楽しみです。そういった変わりダネを探しながら、散策するのも楽しいのではないでしょうか。でも、中華まんは1個2個でお腹がいっぱいになってしまうので、数多く試せないのが玉に瑕ですね。
あと、そうそう、中華街のあんまんは、小豆ではなく、黒ゴマ餡を使っている、というのもすごく好きです。あのなめらかで濃厚な黒ゴマ餡がたまらなく美味しいです。
中華まんと言えば、高校2年生の文化祭の時に、同じ部活の2年生女子メンバー7人で、中華街から中華まんと中華菓子を仕入れて販売したことがあります。1つのクラスから出す位の規模のお店を、有志枠を使って女子7名だけで出店しました。
仕入先を見つけるために、週末にみんなで中華街へ出掛け、いくつかお店を回って中華まんのお店と中華菓子のお店をそれぞれ選び、お店の人と交渉しました。断られたお店もありましたが、無事に交渉も成立し、中華街から直接仕入れることに成功。あの時受けてくださったお店の方々にはつくづく感謝の気持ちです。
文化祭当日、お店は大盛況。蒸し器をフル稼働させ中華まんを提供しました。各々のクラスでの出店等もあり、加えて部活の練習もあったのに、よくやったなぁ、と今更ながら感心します。みんなで中華街を回って仕入先を探したこともすごく楽しかったですし、文化祭前日に、放課後遅くまで残ってみんなでお店の準備をしたことも、今ではとてもいい思い出です。
私の記憶が正しければ、たしかこちらのお店から中華まんを仕入れて、
こちらのお店から中華菓子を仕入れたと思います。
そんな青春の思い出もあれば、愛着が湧いて当然の横浜中華街ですが、私がオハイオで留学をしていた時に、そこで出会った台湾人の子から「あんな風にキレイに観光地化されて、横浜のチャイナタウンは本物ではない」とバッサリ言われたことがあります。
彼女は、神奈川大学に留学していたこともあったため、横浜中華街のことを知っていました。その時はそんなこと言われてショックでしたが、その後実際に自分でもマンハッタン、ブルックリン、ボストン、トロントにあるチャイナタウンを訪れることになり、彼女の言う意味がわかりました。
向こうの中華街は、そこで暮らしている人たちの生活感でかなり溢れています。そして、それを見て思った私の感想というのは「やっぱり横浜中華街の方がいい」でした。もっと正直に言ってしまうと、道の汚れやゴミの散らかりが目に入ってしまい、そして生活感ありすぎて、印象はあまり良くなかったからです。横浜中華街のように整備されている方が私には良いです。
加えて、横浜中華街では日本語が通じます。中にはカタコトの人もいるかもしれませんが、これまで会話に困ったことはありません。トロントの中華街で入った飲茶のレストランでは、ワゴンを押すおばちゃんたちが客席の周りをグルグルと回っているのですが、そのおばちゃん達にはことごとく英語が通じませんでした。
会話と言っても、お水(Water)をお願いしたり、ワゴンに乗っている点心の中身を聞くため、指差しながら「チキン?、ポーク?」と聞いている程度なのですが、全く通じません。おばちゃんも困り顔でこちらを見ていますが、注文したいこちらはもっと困りました。最初は何度か、お店の入り口にいる案内役のお姉さんを呼んでは中国語で通訳してもらいましたが、途中からは諦め、適当にワゴンの上の点心を指差すだけにしました。
簡単な英単語すら知らなくても、英語圏で暮らしていけるおばちゃん達の強さに恐れ入りましたが、おそらくお客さんも中華の人が多くて、自分たちのコミュニティ内だけで生活している分には支障ないのかもしれませんね。
ちなみに、ブルックリンの「フラッシング」という街は、中華街というより、もはや居留地みたいです。目に入る文字は漢字ばかり、行き交う人はアジア人。看板のモデルも、警察官もアジア人です。ATMも中華系の銀行ばかり。フラッシングへは何も知らずに行ったため、その街並みにはすごく驚かされました。
もし今、あの時の台湾の子と同じことを言われたら、「観光地なんだから、本物じゃなくていいよ」と私の意見も言うつもりです。観光地は多少なり整備されている方が過ごしやすいし楽しめる、という心境に至った経験でした。(リアルがいいという方は、ぜひ本場の方へ…)
横浜中華街は、行くたびにどこかしらのお店が変わっている気がするくらい、変化が早い場所だと思います。そうして消えゆくものもありますが、昔も今も、普段見かけないものや変わったものに出会える、そんな面白い場所です。
最近、街中でタピオカのジュースバーに行列ができているのを見かけますが、中華街では昔からタピオカドリンクが店先で売られています。夏になると今ではコンビニやスーパーによく並んでいるマンゴープリンも、昔は近所で売っていなかったため、中華街へ行った時に買っていました。
そして、今では見かけなくなってしまいましたが、「ヤシの実ジュース」が売られていたこともありました。本物のヤシの実にぬるくて甘い水が入っていた、そんな記憶です。探せばまだ売っているお店があるかもしれませんが、姿を消してしまった理由は、あまり美味しくなかったからかと…。
杏仁ソフト(杏仁豆腐味のソフトクリーム)に一時注目が集まっていたこともありますが、もっと前から、中華街ならではの変わった味のジェラートを売っているお店がありました。今でも覚えているのは、細切れのフカヒレが入っているフカヒレジェラートと、中華街といえばパンダ、パンダにちなんだ「笹の葉」味、あとは月餅味のジェラート。この間行った時には記憶にある場所付近に見当たらず、そのお店はなくなってしまったのか、私の記憶が曖昧なだけかもしれません。
この間はこんな飲み物を見かけました。ほんと中華街は飽きない場所だな、って思います。神秘の青いハーブティーだそうです。
最後に、横浜中華街にあるお気に入りの場所をご紹介させてください。三国志で有名な関羽が祭られている「横濵關帝廟(よこはまかんていびょう)」の近くに、『悟空茶荘』という本格的な中国茶を楽しめるお茶屋さんがあります。
1階はお茶葉や茶器、雑貨を売っていて、2階が茶館(喫茶)になっています(注:山下公園方面にある「朝陽門」の近くに、悟空の1号館があるのですが、そちらには喫茶はありません)。悟空茶荘の店内はとてもゆったりとした空間が流れていて、中華街でたくさん歩いて疲れた時も、単にカフェでのんびり過ごしたい時でも、ぴったりの場所です。
何より悟空茶荘では、とても美味しい中国茶が飲めるので、それ目的で来るべきお店だと思います。常時30種類くらい用意しているとのことで、お茶の種類も豊富。私はお茶の名前の雰囲気や説明文から適当にチョイスしてしまっていますが、そんな適当な選び方でも、味や香り、喉越しが、日頃飲んでいるお茶とはぜんぜん違うので、その美味しさに感動します。特に香りにはいつもウットリしてしまいます。
注文したお茶は、そのお茶に相応しい茶器で出され、店員さんが煎れ方を教えてくれます。例えば、四季春という烏龍茶では、温めた蓋碗(がいわん)に茶葉を入れ、お湯を入れて蒸らします。それを、茶海(ちゃかい)→ 聞香杯(もんこうはい)→ 茶杯へ移し、いただきます。聞香杯は香りを楽しむためのもの。なんだかまどろっこしいかもしれませんが、そうして茶杯を移してからの方が飲みやすい温度になったりもするので、教わったとおりに煎れると美味しくいただけます。
上の店内写真に一緒に映っているお茶(白桃烏龍茶)のように、そこまでしないお茶もありますし、ガラスポットの中で花のように開く工芸茶など、どのお茶にしようか選ぶ楽しみもあります。それぞれのテーブルにはお湯が入ったポットが置いてあり、お湯のおかわりが自由、ある意味飲み放題なんです(おそらく5、6回煎じたら、本来の味はなくなりますが、風味だけでいくらでも飲めてしまうんですよね)。茶杯は言わばおちょこサイズなので、日頃はグビグビ飲んでしまうお茶を、ちょっとずつ、香りも味もゆったり楽しめることに、贅沢さを感じずにはいられませんね。
私が知っている横浜中華街は、まだまだほんの一部。もっと奥深く、色んな世界が広がっていることでしょう。これからも、お腹も好奇心も満たしてくれる楽しい場所であることを期待しています。(N.I.)
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