2017年5月24日更新ダイエットと言い訳
肌を出す季節が近づくと、テレビや雑誌では決まってダイエット特集や腹筋特集が組まれます。もちろんニーズが盛り上がるからですが、実際にはGW明けに気合を入れ直しても、夏までに効果が目に見えることはまずありません。わかっちゃいるけどできない、でもやっぱり気になる、だから毎年恒例です。
太るのも痩せるのも理由は一つ、摂取カロリーと消費カロリーの差だけです。脂質か糖質かは二の次で、まずは量の問題です。それ以外のすべての理由は単なる言い訳で、痩せたいなら食べる量を減らして運動量を増やせばよいだけなのですが、ダイエットは巨大なビジネスでもあり、さまざまな言い訳が用意されていて感心します。
最近見た中で最も度肝を抜かれたのは「運動すると心拍数が上がる。一生に打つ心拍数は同じなので、運動すると早く死ぬ。だから運動しない」という「理論」です。確かに、生物学的には動物の種類を問わず生涯心拍数は約15億~20億回というデータがあるようで、その中で早く拍動すれば「寿命」は縮まる、というのは論理的に正しいと思われます。
たとえば、ゾウの心拍数は1分間に40回程度で寿命も80年程度と長い一方、ハムスターの心拍数は500回/分を超え、人間の10倍近いので当然短命です。運動するということはハムスターに近づくわけで、その意味ではマラソンで心拍数を170近くまで上げている私などは日々確実に死に近づいていることになります(実際、マラソン大会では「もう死ぬ」と思う瞬間が毎回何度かは訪れますが)。
ただ、これはかなり極端な例で、運動してもしなくても心拍数が上がることは日常的によくあるわけです。100人を前にプレゼンをすれば(挙動を含めて)かなりハムスターに近づきますし、疲れて帰宅した後に、奥様・旦那様の愚痴を延々と聞かされれば限りなくゾウに近づくでしょう。その都度、寿命カウンターが増減するのを気にする生活は、むしろ寿命を縮めるのでは・・・と思うのですが…。そもそも、生涯心拍数は「最大」であって、その前に心疾患で止まってしまえば終わりですが、肥満は心疾患リスクを確実に高めることはデータが証明しています。
私自身は体重も標準の下の方で、体脂肪率もヒトケタですが、健康が目的でマラソンをやっているわけではありません。マラソンランナーはいろいろケガもしますし、心臓だけでなくあらゆる内臓に尋常ならざる負担をかける過酷な競技です。それに、走るという運動はイメージに反して、ダイエットとしてはあまり効率がよくありません。体重1kg減らすには7200kcalを消費する必要がありますが、そこそこ走れる私の場合でもフルマラソン1回で消費カロリーは3000kcalくらい、完走しても体重計は全く動きません。一方で、ちまたの食品の摂取カロリーはといえばビッグマックLセットは約1200kcal、トンカツ定食は約1600kcalと、4ケタ超が普通に並びます。ビッグマック1個分消費するためには10km以上走らなければなりませんし、ケガのリスクも高いので、健康目的の方には「走る」より「食べる量を減らす」ほうを強くお勧めします。糖質やら脂質やらの「質」は、「量」を減らしたうえでの微々たる違いです。
ランナーは痩せていますが、走っているから痩せているのでなく、速く走るために痩せているだけです。もちろん、痩せていることが健康に資することはいうまでもありませんし、デメリットを補って余りあるメリットもたくさんあります。私の場合、運動と並行して昼食を300kcal程度に抑えた結果、体重は10kg以上減っただけでなく、3年前と比べて安静時心拍数が20以上下がりました。痩せたことで心臓の負担が小さくなった一方、追い込んで走ることで心臓が鍛えられ、一拍あたりの吐出量に余裕が出たためです。逆に、体重が1㎏増えると毛細血管は4「キロメートル」増えるそうで、その分だけ心臓の負担は確実に増大します。走るだけでは痩せませんが、痩せることで長く走れるようになり、長く速く走るためには痩せるような生活になる、ということは言えると思います。そして、健康に痩せるには私のように入れ込む必要は全くなく、会話しながらゆっくりジョギングするだけでもダイエット的には全く同じ効果があります。
ちなみに、2016年にフルマラソン85歳以上の部で3時間56分38秒の世界記録を叩き出したカナダのEd Whitlockさんは、73歳の時にも当時の年代別世界記録2時間54分を達成しています。Edさんの前で「運動すると寿命が縮まるから」と言い訳する猛者は、たぶんいないでしょう。それに、彼だけが特殊なのではなく、日本でも80歳で3時間半を切っているランナーはいますし、2016年国内フルマラソン完走最高齢は91歳!いずれも日常不断の努力の賜物です。健康の一番の敵は、言い訳=弱い心なのかもしれませんね。
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