2018年8月22日更新オーストラリア・フィリップ島の世界一小さなペンギン
日本とは季節が反対のオーストラリアでは、いま冬を迎えています。とはいえ、シドニーやメルボルンの冬の最低気温は6℃~7℃とのことで、東京の冬と比べると、なんとも過ごしやすそうです。
オーストラリアは、カンガルーやコアラを始め、他にもワラビーやウォンバットなどの固有種がたくさんいて、まさに動物大国というイメージがあるかと思います。そんなオーストラリアには、世界一小さなペンギンが生息しているというのを、ご存知でしたか?
それはそれは可愛らしい「Fairy Penguin(フェアリーペンギン)」と呼ばれている小さなペンギンです。フェアリーとは妖精という意味。「Little Penguin(リトルペンギン)」いう名前もついています。オーストラリアと、ニュージーランドにも生息していて、ニュージーランドでは「Blue Penguin(ブルーペンギン)」と呼ばれています。羽毛の色が、青と灰色の混ざったような色をしているためのようです。
その体長は約30cm~40cmで、ペンギンの中でも一番大きなコウテイペンギン(100cm~130cm)の半分以下もしくは3分の1。その他多くのペンギンは60cm前後のようですので、それらと比べてもフェアリーペンギンはとても小柄です。他のペンギンと並んで一緒にいたら、きっと子供のペンギンだと思われてしまうでしょうね。
ペンギンは南極の氷の上でしか暮らしていないと思っていましたので、陸に住むペンギンのことを知った時には、だいぶイメージが覆されましたが、調べてみるとアフリカや南米の海岸沿いなど、陸に住んでいるペンギンは世界中には他にもけっこういるのですね。フェアリーペンギンは、オーストラリアでは南部の海岸沿いに暮らしています。
オーストラリア第二の都市、メルボルンから車で約2時間のところに「フィリップ島」というフェアリーペンギンを見ることができる島があります。その島はPhillip Island Nature Parks(フィリップ島自然公園)という自然保護地区となっており、NPOによる自然環境や野生動物の保護・研究・教育活動が行われています。コアラ保護センターなどもあり、そこでは「ペンギンパレード」というフェアリーペンギンを見ることができるツアーを行っています。
いろいろな旅行業者がペンギンパレードツアーを扱っているので、そちらに申し込めばメルボルンからの送迎も含まれていますし安心です。私は11年前、当時ワーキングホリデーでメルボルンに住んでいた友人を訪ねた際に、このツアーに参加しました。
なぜ「パレード」なのか?といいますと、フェアリーペンギンたちは、毎日、朝方に海へ餌をとりに出かけ、日没時に海から帰ってくるのですが、その時にグループになって一斉に波打ち際を上がってきます。そして、それぞれの巣穴へと帰っていくのですが、そのビーチを群れになって歩くペンギンたちの様子からパレードって呼ばれているのですね。
ペンギンたちは海の中では、身体の色が保護色となり身を隠せますが、陸ではそうはいかず、肉食の鳥などの天敵から身を守る必要があります。そのため、天敵が眠る日暮れになってから、皆で一斉に陸へと上がってきます。
Phillip Island Nature Parksのビジターセンターから海岸までは、ボードウォーク(板張りの遊歩道)が続いています。その先には、階段状の観覧スペースが設けられていて、そこでペンギンたちの帰りを待ちます。さらに追加料金を払った人たち専用の観覧スペースもあり、そちらはペンギンたちが陸へ上がって行くスポットに、より近い場所に作られています。
私が見たペンギンたちは、だいたい数十羽のグループもあれば、数匹程度で固まっているのもあり、波打ち際からピョコっと現れては、ビーチの端の方にある岩場に向かって足早に去っていきました。私が見た場所は追加料金ではなく、一般の観覧スペースでしたので、そこからは、遠くの方へ目を凝らさないと見えない状態でした。しかも日没時の薄暗い時なので、どんどん見えにくくなっていきます。
いつどの辺の波からペンギンたちが上がってくるのか分からないですし、初めのうちは見逃さないようにと、こちらもちょっと必死な感じに。次第に、ビーチのあちらこちらでペンギンたちの姿が現れ、最初のころよりも見ることが出来ましたが、想像していたほどの数の多さではなく、程なくしてパレードも終わりました。(繁殖期や子育て期、巣作り期といったライフサイクルのタイミングや、天気などによってもペンギンの数は変わるそうです。)
そのような感じで、ペンギンパレードでは、波打ち際から突如現れたフェアリーペンギンの小さなシルエットたちが、サササササ・・・と岩場とその先の草むらに向かって帰っていくのを見守ります。中にはたった1羽だけのペンギンもいたり、波打ち際で波に引き戻されてしまうのもいたり、フェアリーペンギンは歩く時の姿勢がけっこう前傾なので、まるで今にも転びそうな足運びで、お腹を空かした家族の待つ巣穴を目指して帰っていきます。ただでさえ歩くのが苦手な生き物なのに、そしてその辺を掴む手もないのに、岩場をジャンプしながら一生懸命に登っていくんです。とても健気に映りました。
ペンギンの目は光に敏感で、また、慣れない明かりは脅かしたり混乱させたりしてしまうため、写真や動画撮影は禁止となっています。あれだけ禁止だとアナウンスしても、それでも思い切りフラッシュをたいて写真を撮る観光客がいるのですが…。観覧スペースには外灯もありましたし、ペンギンたちが海から上がってくると、一目散にビーチの端の暗がり目指して行ってしまうのが納得でした。
あっという間に日は沈み、海の方は真っ暗で見えなくなります。ペンギンパレードは終わり、観光客はぞろぞろとビジターセンターへ戻っていきます。さて、これでお終いだ、と思ったのですが、ビジターセンターへの帰り道にはサプライズが待っていました。
なんだか歓喜が聞こえるな、と思っていたら、なんとボードウォークの辺りに巣穴を構えるペンギンたちがけっこういるようで、ボードウォークの下を時々立ち止まりながらも、一歩一歩がんばって歩いているペンギンたちを超間近で見ることができたのです。(ペンギンたちはボードウォークの下の草むらを、人間たちはボードウォークの上を歩いている状態です。)
他の人たちも帰り際のこのサプライズは期待していなかったようで、それでおそらく歓喜を上げてしまった人がいたのでしょうね。その辺りに巣を構えるペンギンたちは、ツアー客に慣れているように見えました。パレード見学中はあんなに遠くからペンギンたちを見守っていたのに、帰り道ではすぐ目の前でペンギンたちを見ることができたので、ちょっと拍子抜けした感じもありましたが、近距離で見ることができて感激でした。
ビジターセンターに向かって登り坂となっている中を、それでもけっこう海から離れたところまで来ているペンギンもいたので、これを毎日繰り返しているのかと思うと自然界で身を守りながら暮らすことの大変さが伝わってきました。
残念なことに、人間が原因(漁業、ゴミ、油流出、海洋汚染)でフェアリーペンギンたちが命を落とすこともあるようです。ペンギンパレードなどの観光収入はフィリップ島での自然・動物保護活動を支えています。これからも、フェアリーペンギンたちのコロニーが無くならないように、野生動物たちの保護活動が続くことを願います。
日本の水族館の中には、フェアリーペンギンを飼育している水族館もあるようですよ。水族館によっては「コダカペンギン」という名前で呼んでいるかもしれません。もし出会えたら、その可愛さにぜひ癒されてください。
(フィリップ島のお土産のポストカード)
Philips Island Nature Parks公式HP:https://www.penguins.org.au/attractions/penguin-parade/
Philips Island Nature ParksがYouTubeで公開しているペンギンパレードの紹介動画:https://youtu.be/CyVRl1owBXw
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