2018年9月19日更新健康・快適・そして若さにも? 欠かせないのは適度な湿度
今年は、日本の各所で最高気温の記録が塗り替えられてしまうほどに、暑さの厳しい夏となりました。これから空気が涼しくなっていくのが嬉しいところですが、春から初夏そして秋といった季節は、ぐんと過ごしやすくなりますよね。冷房も暖房も要らない時期は身体も楽ですし、特に、蒸し蒸しした天気の後に、湿気の少ない日が来ると爽やかでとても快適に感じます。
最近はあまり聞かなくなりましたが、以前は梅雨時から天気予報で「不快指数」という言葉を聞くことがありました。不快指数とは、気温と湿度から求められた蒸し暑さの指数のこと。元の英語名「Discomfort Index」の直訳なのかと思いますが、たしかに、梅雨時や夏場にこれからどれだけ“不快”になるのかを予報されるというのも、いい気がしないかもしれませんね。
不快指数には風速が含まれておらず、しかし湿度は風によって大きく変わりますので、目安とはいえ偏りが大きかったのでしょうか? 最近では『暑さ指数(WBGT)』という、「気温」と「湿度」に加え、「熱環境(日射・輻射)」が加えられている指数が使われているようです。
人は同じ気温でも、湿度が高いほど暑く、低いほど寒く感じます。そして、汗をかくことによって、人は体温調整を行っていますので、湿度が上がり、汗が蒸発しにくくなれば、皮膚の表面から体熱が奪われなくなるため、より蒸し暑さを感じます。体温調整ができなくなるという身の危険を、身体は不快感で忠告してくれているわけです。
とはいえ、日本の梅雨~夏の蒸し暑さについては、これまでもずっと経験していることなので、おそらく多くの人が「これが当たり前だから」と、いくら不快でも耐えてしまうかもしれません。しかしご存知の通り、命にも関わる“熱中症”の状況は毎年深刻になっていて、「今まで大丈夫だったから」という考えは危険です。
熱中症の要因は複数ありますが、その中には「高い湿度」というのも含まれています。屋内で起きる熱中症のケースに多いようなのですが、汗が蒸発せず、身体が放熱と体温調整ができない状態になってしまうからです。私の祖母もそうでしたが、エアコンがあるにも関わらず、ちゃんと冷房をかけずに、部屋でじーっと耐えて過ごしていたことがあったので、とても危ないと思いました。
そして、エアコンなどのない屋外の湿気はどうしようもないですよね。私が夏に一番苦手なのが、人混みや通勤時の駅構内の蒸し暑さなのですが、あのどうしようもない湿気の多さには本当に参ります。私の友人は、朝の通勤時に保冷剤を脇に抱えていると言っていました。外での湿気は取り除けませんが、こういう冷却対策は行えますね。
こうして夏が終わり、多い湿気とおさらばすることに清々しているのは、私だけではないかと思われますが、湿気は少なければ良いというわけでもありません。日本の外に目を向ければ、湿気が少なすぎて困っている地域もあります。ニュースでご存知の方もいらっしゃると思いますが、アメリカやカナダ、オーストラリアなどでは毎年、複数個所で山火事が発生し、深刻な事態になっています。
全米一住みやすい気候で知られるカリフォルニア州も、現在複数個所で山火事が発生しており、北部のMendocino周辺の山火事にいたっては州史上最大規模となってしまいました。カリフォルニア州の森林保護と防火を行う部署 California Department of Forestry and Fire ProtectionのHPに、山火事発生状況マップが掲載されていまして、そちらをご覧いただくとその多さに驚かれると思います。高すぎる気温と乾燥しすぎる空気、近年のカリフォルニア州では大規模な山火事が増加傾向にあります。
これは、私がアメリカのオハイオ州で大学時代を過ごした時の体験談になります。以前の編集後記でもチラっと書いたのですが、そこの土地は湿気が少なく、冬に降る雪はパウダースノーになる程。野菜や果物もやたら長持ちするので、最初は農薬の量を疑ったくらいなのですが、どうも湿気の少なさが影響しているようでした。
自分の髪はクセに加えてとても広がり、夏場や雨の日にはお手上げ状態となるのですが、オハイオではその悩みから解放され、髪が広がらないばかりか、日本の美容室でストレートパーマをかけた時よりもストレート、という奇跡の状態になる日もありました。
と、そのへんは良かったのですが、もちろん良いこと尽くしではなく、一年中湿気が少ないので、日本にいる時よりしっかり保湿をしないと、肌がとても乾燥します。身体を洗うためのボディソープも、お店に置かれている製品のほとんどが、洗い流しても皮膚にヌルヌル感が残るものばかり。
最初はそれが気持ち悪くて、何度もシャワーで流していました。他の日本人の子で、そのヌルヌル感が嫌なため、洗い上りがサッパリする固形石鹸を見つけ出して使っている子がいましたが、肌が乾燥してしまうので、それはそれでどうかと。保湿には代えられないので、慣れるしかありませんでした。
ある初夏の日に、外で教科書を1時間ほど読んでいたことがあります。そこでの冬は、晴れ間が少なくとても寒いので、長い冬がようやく終わり、嬉しくて日光浴したくなったんです。その時、日焼け止めを塗らなかったことが失敗でしたが、私の肩はその1時間でひどい日焼けをしました。肌の色が赤色や小麦色を通り越して紫色となり、自分で自分の肩を見てゾっとしました。
その時に感じたのが、太陽の光がさほど熱くはなくても、「空気が乾燥していると、光の有害な部分がダイレクトに肌に突き刺さってくる」、そんな感覚でした。子供の頃よく日焼けもしましたし、高校時代は陸上部で、日焼け止めなど塗らずに(塗っても汗で流れ落ちるので)毎日のようにグラウンドや競技場を走っていましたが、そんな太陽の光が突き刺さってくるような経験はしたことがありませんでした。
感覚的に、日本の湿気を多く含んだ空気は、太陽の有害な光を和らげてくれているのだ、とすごくそう思えたのです。今回気になって調べてみたところ、やはり「湿度が高いと紫外線が弱まる」そう。空気中の水蒸気が紫外線を弱めるとのことです。
時には、日本の湿気はとても不快で、無くなってほしいと思ってしまいますが、湿気は我々の肌を守ってくれています。肌質の違いもあるとは思いますが、自分の経験からして、日本人のお肌は西洋人と比べてみても潤っていて、若々しく見えます。顔の肌だけでなく、手の甲とか腕とか首にもその差は出ていて、乾燥というのはシワの増え方に大きく影響していると思います。日本に暮らしているというだけで、自然からタダでお肌を潤わせてもらっているんですね。
当時留学中の冬休みに、日本へ一時帰国をしたことがあります。空港に着くや否や、私の髪はボワッと膨らみ、いつも通りに戻りました。オハイオと比べれば、日本の冬はまだまだ湿気があることにビックリ。しかしそうは言っても、もちろん日本の冬の空気は乾燥しています。「乾燥注意報」が出ることもありますよね。ひどくなれば、肌トラブルで痒くなったり、あかぎれなどを起こしますし、喉や目なども乾燥にさらされます。
快適な湿度は「40%~60%」と言われていて、季節で分けると、夏は50~60%、冬は40~50%が理想とのこと。加えてお肌に良い湿度は、60%~65%なのだそうです。冬は部屋が快適な状態でも、お肌は乾燥気味かもしれません。例えば、東京の1月では、晴天だと湿度20~30%あたりとなるのが多いようなので、快適な湿度から大きく外れています。
数字で言われてもピンとこないかもしれませんが、湿度は快適さの問題だけではなく、多くても・少なくても、どちらも健康的な生活に悪影響を及ぼします。60%以上の湿度は、カビやダニが活発に繁殖してしまいますし、40%以下では、肌や喉の乾燥に加え、ウィルスやバクテリアが活発になってしまいます。ですので、インフルエンザなどが冬には流行り、加えて、肌や粘膜を保護している潤いや免疫力が足りないと、ウィルスに負けてしまうわけです。
これから季節は秋そして冬へと向かいます。湿度が減ってくるこれらからの季節は、しっかり保湿と加湿をして、休養もとり、乾燥やウィルスに負けない元気な身体で過ごしたいですね。
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