2018年3月23日更新桜にまつわるエトセトラ
いよいよ桜の季節到来です!桜が開花し始めると、そわそわと計画し出すがの「お花見」でしょうか?
お花見とは花を鑑賞すること。けして宴会スタイルではなくとも、お昼に桜の近くでお弁当を食べたり、帰りがけに近所の桜スポットを通ってみたり、昼でも夜でも(夜は街灯があるとバッチリですね)、桜を鑑賞できると、とても幸せな、そして満足した気持ちになります。
お花見というと、言わずとも「桜」のことが頭に浮かびますが、むか~し昔はお花見と言えば「梅」だったそうです。それは奈良時代のことでした。遣唐使により日本へ中国の大陸文化が伝わりましたが、その中には梅がありました。奈良時代の貴族は梅を愛で、いわゆる花見の起源がそこにはありました。
その後の平安時代、日本独自の文化が発展し、人気の花は梅から桜へと代わります。その変化は和歌集にも表れていて、万葉集(7~8世紀)では「桜:43首」「梅:110首」だったのに対し、古今和歌集(10世紀初期)では「桜:70首」「梅:18首」という逆転ぶりです。 先日編集後記でご紹介した小倉百人一首でも、歌に出てくる花はほとんどが「桜」でした。
安土桃山時代、豊臣秀吉が奈良の吉野山と、京都の醍醐寺で催した盛大なお花見は、歴史でもとても有名です。その人数「吉野の花見」は5000人、「醍醐の花見」は1300人といいますから驚きですね。そして「花より団子」とはよく言いますが、花見での甘味も、醍醐の花見で全国の銘菓が集められたことがきっかけだそうです。
赤・白・緑でおなじみの「花見団子」の方は、江戸時代に広まったようですが、その三色には意味がありました。薄い赤色→桜(春の息吹)、白色→雪(冬の名残)、緑色→新緑(夏への予兆)だそうです。なんともきれいな季節の表現ですね。
アレ?秋がない・・・、それは「あき(飽き)がこない」とされているからだとか。お団子大好きの私にはとても粋なオチだと思いました。
そして、花見を堪能していたのは、貴族や武士たちだけではありません。農民の間でも豊作祈願の行事として花見が行われていました。暦の無い時代、桜は田植えの時期を教えてくれるものであり、そして、田の神様(サ)が座る“神の座(クラ)”として、サクラは田の神が宿る場所でした。
桜の下で食事とお酒を味わって、冬の神様を山へ送り、山から降りてきた田の神様を迎え、桜の咲き具合で収穫を占います。農民たちにとって桜そして花見は、大切で神聖なものだったのですね。
ところで、そのように遠い昔から日本人は桜を愛でてきましたが、いま我々が日本のアチコチで見かけている桜と同じ桜を、昔の人たちも眺めていた・・・わけではありません。
日本の桜の8割を占めると言われている、もはや桜の定番となっているのは「ソメイヨシノ(染井吉野)」という、江戸時代の末期に交配してつくられた桜です。つまり、およそ200年前までは存在していませんでした。それより以前に、貴族や武士たちが眺めていた桜は違う品種の桜たちなのです。
ソメイヨシノは現在の豊島区駒込に位置する染井村の植木屋さんが、「江戸彼岸」と「大島桜(※)」を合わせてつくった桜です。「ヤマザクラ」の名所である、奈良の「吉野山」にあやかって「吉野桜」という名前が付けられました。その後、ヤマザクラとの誤解を招くとして、明治には「染井吉野」となりました。
(※ 大島桜の若葉は、“桜餅”を包むのに用いられている葉っぱです)
ソメイヨシノは、接ぎ木でふやせて、成長も早い桜のため、特に戦後に多く植えられ日本全国に広まっていきました。もともと、桜の一流ブランドである「吉野」という名前が入っていたことも人気になった一因のようですが、大振り(大島桜の特徴)で、花が葉より先に咲く(江戸彼岸桜の特徴)ように改良されている桜なので、あの満開時の、薄ピンク一色の豪快なソメイヨシノに圧倒された経験を思い出せば、人気になったのは頷けます。
もちろん他の種類の桜も人々に感動を与えてきたことは言うまでもありません。枝垂桜は趣があり1本でも十分存在感がありますし、八重桜の豪華さにはいつもうっとりさせられます。桜の種類は江戸時代までに300種を超え、分類によっては今ではその種類は600を超えているそうです。
そんなにも種類があるとは、桜はとても好きなのに、実際ほとんど知りませんでした。。
そこで思い立って、とある場所へ行ってきました。その場所とは、神奈川県立三ッ池公園です(ピルツジャパン本社がある新横浜の駅前から市営バス1本で行けます)。この公園には、78種類、1600本を超える桜が植えられています。
訪れた日(3/16)は三ッ池公園で開かれる「さくらまつり」の初日。あいにくの雨・風・寒さで、残念ながら撮影日和ではありませんでした。とはいえ、「大寒桜」や「オカメ」「寒緋桜」などの桜はほぼ満開で、「修善寺寒桜」や「椿寒桜」という早咲きの桜はピークを過ぎ、花吹雪が舞っていました。
(寒緋桜)
(大寒桜)
(修善寺寒桜)
それ以外の桜の木々はどれも蕾状態でしたが、それぞれの木の幹には名札がついていて、次から次に初めて聞く名前の桜を見つけてはワクワク、それはまるで宝さがしのようでした。私がその日に三ッ池公園で出会ったソメイヨシノ以外の桜は、次の桜たちです。
「手弱女(たおやめ)」「華 加賀美」「奈良八重桜」
「八重紅枝垂」「糸括り」「花笠」「永源寺」「関山」
「朱雀」「普賢像」「江戸彼岸」「越の彼岸」「横浜緋桜」
これでも園内をけっこう歩き回ったのですけれど、まだ60種以上も見つけていないことになります。なにより、幹と蕾しか見ていないので、ぜひリベンジしなければですね。
(三ッ池公園パンフレット 桜ガイド)
最後に、桜と言えば、昨年4月のPILZ TOPICで代表川久保がご紹介した、アノ桜のことを覚えてらっしゃいますでしょうか?それとは「ワシントンから里帰りしたシドモア桜」です。
昨年3月、シドモア桜から接ぎ木して作った苗木が、横浜市港北区にある大倉山記念館の前に植樹されました。ピルツジャパンの本社も港北区にあり、ご近所ですので、あのワシントンに渡ったシドモア桜のDNAを持つ木の一年後を見てきました。
幹はまだまだ細いですが、その枝にはしっかりと蕾がついていました。開花のタイミングは逃したものの、夏の暑さに台風、そして雪にも負けずに、元気に育っていることが分かりました。100年以上前に太平洋&アメリカ大陸横断に耐えた桜のDNAを持っているのですから、これからも強く元気に育っていって、毎年春には桜をたくさん咲かせてくれることを期待しています。
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