ピルツジャパンのブログ「裏ピルツ新聞」

2022年9月8日更新身分証明書

 

  私たちの社会では、身元や資格の確認のため、政府や所属する組織から色々な身分証明書が発行されます。運転免許証、健康保険証、パスポートなどが最もよく使われるものだと思いますが、最近になってマイナンバーカードの普及率も増え、今年8月末時点で、全国で47.4%の普及率を達成したようです。約二人に一人は持っていると言うことですね。マイナンバーカードの登録者が急増したのは、マイナポイントの給付が原因でしょう。ご多分に漏れず、私もマイナポイントが欲しくて、マイナポイント第二弾に申し込んだばかりです。マイナンバーカードを健康保険証として登録したり、公金受け取り用の預金口座を登録したりするだけで、最大2万円のポイントがもらえるのは魅力です。まだ申請していない、と言う方は9月末まで申請可能ですので、早速ネットで調べて申し込みされることをお勧めします。

  身分証明書は万国共通かと思っていたら、アメリカ留学中に気が付いたことがあります。それは、日本では笑顔禁止ですが、アメリカではみんな笑顔の写真を撮っていたことです。私が1986年に初めてカリフォルニアで取得した運転免許証の写真もスマイル、もっと前に大学から発行された学生証も100%スマイルの写真です。これらの写真を撮る時、いつも”Smile!”と言われたのを覚えています。

カリフォルニア州運転免許証

大学学生証(兼カフェテリア食事券)

  反対に、日本で息子が小学生の時、パスポート写真用に提出した写真は、笑顔過ぎたためクレームが付きました。歯が出ていると言う理由で、本当はNGだそうですが、子どもだからという事で特別に認めてもらえました。身分証明書ひとつにも、お国柄が表れるなと思ったことでした(ただし、私はアメリカでパスポートは申請したことがないので、もしかしたらパスポートにはアメリカでも「歯出し禁止」ルールがあるのかもしれません)。

  英語では身分証明書のことをID(アイディー)と言いますが、私が渡米した80年代から、アメリカではお酒やタバコの購入、映画館などでIDを求められました。お酒やタバコは、未成年と思われる人が購入しようとすると必ず身分証明書を求められました。映画はすでにレーティング(年齢制限)制度が導入され、暴力や卑語、性描写などが含まれているかによって、制限のない映画以外は、年齢による入場制限がありました。渡米前のことはわかりませんので、実際にはもっと前からこれらの制度が普及していたのかもしれません。

  日本でもその後、これらの制限が導入されるようになりましたが、80年代は、日本ではまだ自動販売機で誰でも煙草が買え、親に頼まれて?子どもがお酒を買いに行っても、何も聞かれたりしない時代でした。ご存じかもしれませんが、アメリカでは21歳が飲酒年齢です。日本よりさらに1年遅いのです。大学三年生の自分の誕生日が来るまで、お預けと言うことになります。

  ダメと言われると余計に興味が湧くのが人情です。周りの学生から入れ知恵された私は、大学1年の時、香港からの交換留学生で21になったばかりのライリンに、ID(学生証)を貸して欲しいとお願いしたことがあります。週末のパーティーのためにビールを買いたかったからです。アメリカ人から見たら二人とも東洋人で、目の色も髪の色も変わらないので、わかりはしない、と言われて、半信半疑でしたが、周りからのプレッシャーに負けて実行に及びました。IDを見せながら、「もしバレたらどうしよう?」と冷や冷やしましたが、IDを見せるとすんなりとビールを買うことができました。今思うと、若気の至りで、そんなことに加担させてしまったライリンに申し訳ない気持ちです。

  ライリンは優秀な学生で、フランス語の黒人教授から一目置かれていました。同じ東洋人なのに、出来の悪い私は、クラスで出た宿題がわからない時、いつも寮の彼女の部屋に行って教えてもらいました。とても香りのよいジャスミン・ティーを淹れてくれたこと、ときどき彼女が自分で墨を摺って書道をしていたこと、その達筆な文字などが懐かしく思い出されます。彼女は今、どうしているのでしょうか。

  IDと言うと、大学時代のあのID偽装事件と彼女のことが今でも頭に浮かびます。そして、それから30代になって帰国するまで、スーパーでワインやビールを買う度に、ずっとIDを求められ続けたことが当時は鬱陶しく感じました。一体私はいくつに見られているのだろう、もういい加減未成年扱いはやめて欲しいと。しかし、今ではあの頃が懐かしく感じます。息子が小学生の時(例の歯出しのパスポートを持って)家族でアメリカ旅行した時は、もうIDは求められなかったのです。時の流れと、もう若かったあの頃の自分ではないことを実感した瞬間でした。

  社会人になって、ピルツジャパンで社員証の発行を担当をしていた時期があります。社員一人一人に写真を提供してもらい、写真がない場合はスマホで撮影し、業者にデータを送ってプラスチックの社員証を作成してもらいました。それから新入社員が入社するたびに社員証を発行していましたが、いつの間にか社員証が使われなくなり、当然私はこの業務を担当する必要がなくなりました。楽になったと言えばそうですが、ちょっと寂しいような気もしています。

  読者のみなさんはどんな身分証明書をお持ちでしょうか。出社する時に、ゲートでピッとタッチされる方もいらっしゃるかもしれません。コロナ以来、パスポートをしばらく使っていなかった方もいらっしゃるでしょう。この機会に、マイナンバーカードの申請がまだの方はカードやポイントの申請を、パスポートや免許証の有効期限が心配な方は、チェックしてみてください。そして、身分証明書の情報を盗み取る詐欺サイトにはくれぐれもご注意ください。怪しいサイトで身分証明書の提示を求められても、決して写真を送ったりしてはいけません。みなさんの身分証明書が不正から守られ、旅行中の安全や日々の健康を守ってくれることをお祈りします。

 

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