2018年6月19日更新「50歳アニバーサリーライブ」体験レポート
5月26日の夕暮れ時にそのライブは始まりました。本八幡のライブハウスcooljojoは、開演と同時に満席となり、期待と不安半々の観客を前にして、ゆっくりと滑り出しました。裏ピルツ編集部を代表して、今回杉原が取材に行ってまいりました。「アラフィフおやじのギター日記」コーナーの主人公であるアラフィフおやじこと川野氏は、この日出演した2つのバンドの両方で、なんと全21曲に参加!前に出過ぎることなく、全体のバランスを考えた控えめなバッキング、しかし、ソロでは存在感のある演奏。ベテランだからこそできる巧みな技を見せつけてくれました。
最初に登場したのは、川野さんの本業の鉄道関係のメンバーから成るToutes les Mamans(ツレママ)。2016年の3月末にボーカルの恩田さん(通称「王子」)と川野さんが「大人っぽいバンドをやりたいね」と話していたら、社内でうまい具合にメンバーが見つかり、2016年の秋ごろから活動しているそうです。演奏する曲は昭和の歌謡曲やスタンダードが中心。同年代の人が聴いて、若かりし頃にタイムスリップできるような曲や、アラフィフ世代のハートを掴むもうちょっと最近の曲が選ばれていました。月1、2回、就業後の19時~21時頃練習を重ね、このライブの前日は連続4時間の強化練習を実施したとか!その甲斐あって、当日は息のぴったり合った演奏を聴かせていただきました。
このバンドの魅力は何と言ってもボーカルのお二人のコントラスト。「君が代」を歌ってもエロいというリードボーカルの王子は、この世の悲しみや心の痛みを、大人のアンニュイを乗せて歌います。その反対に、aikoさんに声のよく似た女性ボーカリスト奈々ちゃんは、この世の夢や希望をしっとりと歌い上げます。この陰と陽のコントラスト、全体のバランス感覚がいいんですよね。社会人バンドだけあって、歌も演奏もレベルが高く、安心して聴いていられました。
今回読者のみなさんに特別に、杉原が厳選したツレママの演奏2曲をちょっとだけ紹介します!
ボーカルのお二人の魅力も然ることながら、バックの演奏も秀逸なこの2曲です。お楽しみください。
王子の色っぽいボーカルが冴える井上陽水さんの♪「ワインレッドの心」
奈々ちゃんの乙女チックな歌にじーんと来るaikoさんの♪「カブトムシ」
さて、ライブ後半は川野さんの中学校時代の同級生であるボーカルのうったさんが立ち上げたバンドSNOW。(スノーまる)の登場です。今回のライブはメンバーが50歳になる年を迎える「アニバーサリーライブ」と言う節目のライブで懐かしい「アリス」の曲を中心としたラインナップでした。メンバーの中でも一番アリスが好きと言うメインボーカルのうったさんとサブボーカルのよっちゃんの奏でるハーモニーが素敵なこのバンドですが、ボーカルのお二人は小学校からの付き合いだそうです。どおりで、歌も演奏もいい意味で「いつもの仲間がいつものアレを演奏している」みたいな落ち着きがあり、変な緊張感が全くないパフォーマンスでした。ともだちの家でともだちの演奏を聴いているみたいな感じで楽しませていただきました。
観客がアリスが好きかどうかは別として・・・、アリスファンを悩殺しそうな選曲が潔くてよかったです。アリスを好きな人達が演奏しているからこそ、曲の良さが音に出てくるのでしょうね。細部までこだわった演奏からは、単に長く演奏しているというだけではない、「アリス愛」みたいなものが感じられました。姉はアリスの大ファンでしたが、正直あまり好きではなかった私さえ、このバンドの演奏に引き込まれてしまいました。「冬の稲妻」、「Champion」、「終止符」、「遠くで汽笛を聞きながら」などの代表曲だけでなくあまり知られていない名曲「さよならDJ」、メンバーのソロ曲「君の瞳は一万ボルト」などを含む全12曲が次々と演奏され、あっと言う間に時間が過ぎてしまいました。
このバンドは、迷うことなく、やはり毎回必ず演奏するというこの曲を聴いていただくことにしましょう。文句なしの鉄板の演奏です。
Snow。で♪「Champion」。お聴きください。
この後、アンコールでジャズのスタンダードナンバー“Fly Me to the Moon”がスペシャルメンバーで演奏されました。川野さんのギターソロの後、お店のマスターもギターソロで飛び入り参加。そしてボーカルは、Snow。の藤田さんが前半を担当し、途中からツレママの王子さんにバトンタッチされました。メローなサウンドで観客の心に余韻を残しながら、ライブは幕を閉じました。もっと聴きたいと思わせて終わるところがニクイですね。
この2つのバンドの演奏を生で聴かせていただいて、また音楽活動の楽しさを再確認しました。音楽を演奏するとき、そこには上下関係や世間のしがらみはなく、ただその時に身を任せます。相手の奏でる音やリズムに耳を澄まして自分の音を重ねていくそのプロセスは、この上なく平等で相手を信頼しなければできない共同作業です。
バンドってジグソーパズルに似ています。パズルはピースが1つでも欠けたら絵が完成しませんが、バンドもドラムやベース、キーボード、ギター、ボーカルがそれぞれの役割を担う大切な1ピースなんです。ボーカルが一番目立つかもしれませんが、だからと言って裏方的なベースがいなかったら、締りのない音になってしまうし、絵に穴が開いてしまいます。だから一人一人が大切なんです。会社の仲間や同級生と音楽活動を続けているアラフィフおやじ川野さんも、きっとそんなプロセスを楽しみながら演奏されているのではないでしょうか。また次回のライブも楽しみにしています。もしかしたら、次回は私もステージに立たせていただけるかもしれません?!楽しみにしています。
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