2017年9月20日更新モントリオールの地下鉄
この夏、カナダのモントリオールを訪れました。滞在中にたくさん利用したのが、メトロ(地下鉄)だったのですが、日本のとはまた違ったシステムが興味深く、そして驚いたこともあったため、ご紹介したいと思います。
モントリオールのメトロは、”モントリオール市交通局”が運営をしていて、その頭文字からSTMと呼ばれています。合計4路線あり、それぞれ、ブルー・グリーン・オレンジ・イエローと色分けされています。グリーンとオレンジラインが重なり、環状線のようになっている辺りがダウンタウンです。その一部には巨大な地下街が広がっていて、連なるショッピング街を歩いている間に駅間を歩けてしまいます。冬の寒さが厳しい土地ならではですね。
地下鉄がホームに入ってきて一番最初に目についたのが、車輪がゴムタイヤだということでした。タイヤ=自動車という強いイメージがあったため、なんだか最後まで慣れないままでしたが。駅ホームのスクリーンには、次の電車まであと何分なのかが書かれているのですが、場所によっては見えません。電車がくるというアナウンスもないので、トンネル内からゴムタイヤと線路が擦れる轟音が響いてくると、「あ、電車が近づいてきたな」と、そんな具合でした。
とはいえ、平日の朝夕は2~4分、その他の時間帯は4~10分。週末は6~12分間隔で運行していて、待たされている気持ちにはなりませんでした。スクリーンを見る必要もほとんどなかったです。始発は5時台から、終電も1時台が多く、けっこう遅くまで運行しています。
こちらがそのスクリーン。右上にあと何分で次の電車がくるのかが書かれています(上の写真ではあと2分)。各ホームに2個置かれているようでした。新しい駅はプロジェクタではなく、薄型テレビだったのですが、これらのスクリーンは反対側のホームの上や、ホーム向かいにあるため、テレビだとサイズが小さく、真ん前に来ないとあまり見えません。プロジェクタの方が良いのに、と思わずにはいられませんでした。
車輌に対する第一印象は、「レトロ」。車体カラーがくすんだブルーだったからかもしれません。車中はちょっと薄暗く、椅子はプラスチック、窓際のフレームは、イタズラ書き(というより彫られている)だらけで、床は目立ったゴミが落ちているわけでもないですが、埃っぽいというか、日本の電車がいかにキレイで、毎日ちゃんと清掃・メンテナンスされているのかを思い知り、ある意味感動しました。
吊革は無く、ドア付近の空いてるスペースにポールが一本立ってるだけです。そのポールは上半分が3つ又に分かれているのですが、前は1本だったそうで、乗客が増えて掴まれる部分を増やしたのだとか。それでも捕まる場所が少なく思えたのですけれど。朝のラッシュ時に乗る機会もありましたが、日本でのような混み具合にはならなかったですし、けっこう椅子に座れてしまうので、あまり問題ないのかもしれません。
ホームに安全柵はないのですが、けっこうな勢いで電車はホームに入ってきます。地元の人に聞くと、人身事故は聞かないと言っていました。ただ、安全面で気になったのが、電車がホームに到着して扉が開いた後も、電車が完全に止まらずに、ゆっくりとでしたが動いていたことが2度ほどあったという事です。現地の人はまったく気にせずに、まるで観覧車から降りる時のように(というと大げさですが)スイスイと出入りしていて。こちらはビックリしてしまい、完全に止まるまでは電車から降りられませんでした。
と、あまり良いイメージをお伝えしなかったかもしれませんが、それは最初に乗ったグリーンラインでの印象でした。車輌に対する印象は、その後に乗り換えたオレンジラインで大きく覆されました。というのは、オレンジラインの車輌はまったくもって真逆。新しくてピッカピカ、とてもかっこよかったからです。STMのホームページには、その新しい車輌(名前をAZURというようです)の紹介VTRがありましたので、宜しかったらご覧になってみてください。ページ下の方にある2つ動画のうち、下の動画の方がよく車内が分かります。【http://www.stm.info/en/node/3736/azur-metro-cars】
オレンジラインは乗るたびにワクワクしました。ドアが開け閉めするところのライトが、緑や赤、白色に光り、近未来的でかっこよく。社内アナウンスは駅名しか告げないので、どちらが降りる側となるのか分かりませんが、AZURではそのライトでどちらのドアが開くのかを知らせたり、ドアが閉まるタイミングを知らせたりしていました。車内の照明も格段明るく、治安的にも安心感が増しました。
モントリオールは、公用語がフランス語であるケベック州にあるため、構内や車内の表示はほとんどがフランス語、次の駅名を告げるアナウンスはフランス語のみです。ですが、路線はたったの4つですし、乗り換えも階段を昇り降りしてフロアを変えたら、すぐにホームがあるので楽なんです。日本ではしばしある、乗り換えに何百メートルも歩く…なんてことはありません。言葉は分からなくても、仕組みが分かればとても便利な移動手段だと思います。
そして、モントリオールのメトロが便利だと思った理由は他にもあります。それは運賃システムです。一駅だけ乗っても、終着駅までいっても料金は一律。現在は1回3.25カナダドル(今現在のレートで約300円)です。しかも、各駅から出ている市バスにもその1回のチケット購入で乗れてしまいます。とてもお得だと思いました。
下はSTMの路線図です。メトロは中心部にあり、その周りに広がるブルーやピンクのラインがバスの路線です。モントリオールって島なんですが、バスがほぼ島中を網羅しています。
(STMのホームページからの引用 http://www.stm.info/en/info/networks/maps)
(グリーンライン「Pie-IX」駅:メトロ出入口は道路の両サイドにあり、
両方ともバス乗り場がすぐ目の前に)
メトロの範囲より島郊外や島外へは、鉄道(Commuter Train=通勤列車)が6路線走っていますが、そちらはAMTというモントリオール大都市圏交通局が運営していて、料金は距離(ゾーン)に応じて変わります。実際に郊外へ行った時も、AMTの鉄道だと料金がかかってしまうところ、そこはSTMのバスが通っている範囲だったため、バスで追加料金なく移動ができました。
乗車券は乗車時に改札口にて、紙のチケットを入れるか、日本のICカードのように磁気性チケットをピッと読み取らせる前払い制です。降車時はチケットの読み取りは無く、ゲートから出るだけです。
チケットの仕組みや種類は、日本のとはまただいぶ異っています。紙の乗車券は使い捨てで、「1回券」「2回券」「グループ券」の3種類。磁気性チケットは2タイプありまして、①Occasional Cardという紙でできているICカードと、②OPUS Cardというプラスチック製のICカード。その違いは、①はチャージ不可で使い捨て、②はチャージ式という点です。OPUS(オーパス)は、6カナダドルで購入し、そこに購入したいチケットをチャージしていきます。
STMのチケットの種類は:
1回券、2回券、10回券、グループ券(大人1名+最大小人10名)
1日券、3日券、1週間パス、1ヶ月パス、4ケ月パス
1日券は、日付ごとではなく、実際の利用時から24時間有効なんです。そして面白いと思ったのが、18時から翌朝5時まで乗り放題のイブニングパス、さらには、金曜の16時から月曜の朝5時まで乗り放題のウィーケンドパスです。
STMのバスも、これまたメトロのように、朝は5時台から夜は25時、26時台までと長く運行しているようなのですが、オールナイト路線なるものもあるので、ダウンタウンで夜遊びした後に同じチケットで家路に着けちゃうようです。ライフスタイルの違いを感じますね。
写真上が、Occasional Card。紙でできていて、丁寧にICチップの絵まで描かれていますが、光に透かして見るとそこにチップはなく、実際の磁気は紙の淵に沿うように四角く入っていました。この使い捨てICチケットで買えるのは、1回・2回・1日・3日・イブニング・ウィーケンドパスのみ。「occasional」とは英語で「たまの」という意味なので、たまに使うチケットということなのでしょうか?
そして、このチケット左上に書かれている「vive(ビバ)375」とは、今年でモントリオールが375周年となるお祝いのロゴです(ちなみに今年はカナダの建国150周年でもあります)。そして、写真下がOPUSカードです。
私は最初、Occasional Cardで1日券を買い、その後はOPUSを買って、そこに1週間パスをチャージしました。STMには空港へ行くシャトルバスもあり、帰国時はそれを使いました。わずか10カナダドルで買えて、それもOPUSにチャージしておくだけでした。
島の外まで行った時には、先述のAMTの鉄道を利用しましたが、行先のゾーンに応じた料金チケットをOPUSにチャージする形です。AMTの1日券も24時間制なので、島外で一泊して帰ってきても、帰りの乗車を24時間以内にしたので1回のチケットで済んでしまいました。
(写真上:AMTの通勤列車、写真下:AMT列車内)
今回の旅行でモントリオールのいろいろなところへ足を運べたのも、OPUSで切符を買う手間や心配も減ってスイスイと移動できたのも、STMの便利なシステムのお陰でした。
先ほどモントリオールのメトロはあまり混んでいないと書きましたが、一度だけ日本の電車並みに混んでいた時がありました。それはたまたま滞在中の週末に、STMがフリー乗車サービスを行っていたためでした。その土日は、メトロもバスも乗車が無料で。聞くところによると、ちょうど電気自動車のF1レースがモントリオールで開催されていた週末だったため、そのイベントが関係あるのでは、とのこと。ネットでも調べてみると、他の時でも乗車フリーサービスをやっているようでした。土日を乗車フリーとして開放するだなんて粋だなぁ、と私は思いました。
OPUSは有効期限が4年間なので、今回のカードがまだ使えるうちに、また訪れられたらいいなと思います。ただ、冬季にモントリオールへ行ったら、そのあまりの極寒に、もう行きたいとは思わなくなるかもよ、とのことですが。。 (N.I.)
記事一覧
- 鉄道博物館を訪れて思う鉄道のあれこれ
- 地球温暖化について考えてみた
- 学び直し
- SNJメンバーと小室山リッジウォーク散策
- サンタクロースの季節
- 創立75周年ビデオ制作
- 嵐の中のLes Cordes生音ライブ
- 予約の多い美容院
- 土佐旅行記
- 身分証明書
- ウェルビーイングについて考えてみた
- デジタル時代の働き方
- 村上春樹ライブラリー
- SDGsについて考えてみた
- 雨の日も心が晴れる永井宏さんの本
- ジェンダー・ギャップについて考えてみた
- コロナ終息後の個人的行動計画
- コロナ禍に響くハンドベルの音色
- 秋の夜長にバルミューダスピーカーで聴くジョニ・ミッチェル
- テレワーク中の過ごし方
- 健康診断はお好きですか?
- フランス人は結婚しない?
- ラクして美味しいチリ
- 幸せになるには
- ひこうきぐも
- チャイナタウンへようこそ
- 備えあれば憂いなし ~災害に備えよう~
- ジャズピアノはじめました
- 健康・快適・そして若さにも? 欠かせないのは適度な湿度
- バカンス効果
- お客様との関係は恋愛に似ている?
- オーストラリア・フィリップ島の世界一小さなペンギン
- 誰でもできる涼しくなる呼吸法
- フルーツの魔法でフツーのワインがおしゃれなカクテル「サングリア」に変身
- 洋式競馬発祥の地と「天野喜孝展 天馬」
- もったいない「食品ロス」、どうすれば減らせる?
- 「50歳アニバーサリーライブ」体験レポート
- ヤッホーではない自転車事故の現状
- 懐かしのエスニックフード ~ 米国編・日本編
- 私流 英語の発音上達法
- 桜にまつわるエトセトラ
- ランチ後の睡魔撃退実証実験
- あなたの知らないアメリカ
- 腰痛持ちのあなたにお勧め~続けてみようYOGA
- プチ・タイムトリップはいかがですか? 小倉百人一首の世界
- リスクとハザードは違います「富士山噴火?するわけねーじゃんww」
- アラフィフのパワー全開、最強教員バンド
- モントリオールの地下鉄
- 疲れた時に効(聴)く音のビタミン剤、Pentatonix
- 恩師との再会
- 機械安全LOTOセミナー in 名古屋&大阪 お申し込み方法のご案内
- 恩師を偲ぶ
- Message from the Wine Shop Owner
- ワイン専門店オーナーからのメッセージ
- Wine Specialty Shop in Germany
- ドイツのワイン専門店
- 現代英国に舞い降りた吟遊詩人 エド・シーランの世界
- Why Europeans Get a Tattoo is Different from Japanese
- 欧州と日本
まったく違うタトゥー(入れ墨)事情
〜リアルインタビュー〜 - 夏の風物詩を一足先に味わえる夜
- 美女と野獣は人間の本質
- ドイツ・ハンブルクで見た 印象深かったことトップ3
- ダイエットと言い訳
- ワシントンから横浜へ里帰りした「シドモア桜」
- 「君の名は」だけではない!RADWIMPSの魅力
- あなたもわたしも「ラ・ラ・ランド」
- 初めての古澤節を聴いて・・・
- 「安心」と「安全」は違います
- 戦場カメラマンが贈る言葉
- 思い出厳選BOX(完成はいつだろうか?)
- リスクを取ってこそ、安全は生まれる
- 「道」は続く
- ゴジラは日本代表
- Rioが終わり・・・Tokyoへ
- バイトテロはリスクの本質を物語る
- 家猫状態のリフレッシュ休暇
- ドイツのおすすめビアカクテル