2018年12月19日更新ひこうきぐも
「ひこうきぐも」という曲をご存知ですか?ユーミンこと松任谷由美さんのデビューアルバムに入っている名曲です。(当時はまだ結婚前なので、荒井由美の名前で出ていました。)同名のCHARAさんの曲もあることを最近知り、そちらも彼女の味のある歌と独特の展開で気に入っているのですが、今回は一番メジャーなユーミンバージョンの方について書きたいと思います。
同年代の方はもちろんですが、2013年にジブリの「風立ちぬ」の主題歌として使われたので、もっと若い世代でもご存知の方もいらっしゃるかもしれません。たまたま私もこの映画を劇場で見てこの曲と再開し、40年の時を経てまだ錆びないこの曲の素晴らしさを再確認したことを覚えています。
このアルバムは、1973年に、後の夫松任谷正隆さんや細野晴臣さんなど、夢のような顔触れがバックで演奏し、ユーミンのボーカルを後で録音するという形で制作されました。録音にこれだけのバックミュージシャンが集まったということは、やはり彼女の才能はただものではなかったことがよくわかります。ただし、デビュー盤の収録は順風満帆にはいかなかったようです。ユーミンのピアノとバンドの演奏はすぐに録音できたようですが、当時のユーミンの安定しない音程のため、歌の録音にかなり時間がかかったそうです。
同年代のユーミンファンなら擦り切れるほどこのレコードを聴いたのではないかと思います。私は当時、アルバムとコピー譜を持っていたので、このアルバムに入っている曲はほとんど弾き語りできました。バンド活動にほぼ全力を注いでいた中高生時代、家でよくこの楽譜を見ながらユーミンの曲を練習していました。
幼少期からピアノを習い、作曲していたユーミンの曲は、ピアノの伴奏がとてもよく考えられていて、ピアノという楽器のよさが全面に出ています。もちろんバックミュージシャンの名演奏にも支えられているのだと思いますが、ピアノでしか生まれなかった曲だと思います。特にこの「ひこうきぐも」は、シンプルなピアノのイントロから始まり、空に向かってジェット機がすこしずつ上昇するように、すんなりと歌い出しに案内してくれるのです。
そして、さらにこの曲のすごさは、どの部分にも必然性が感じられるところです。ピアノのイントロから♪空に憧れてー、と言うサビの部分まで、メロディー、展開、歌詞ともに、他のオプションは考えられません。すべてがはまっているのです。シンプルでありながら心の深いところにそっと触れるユーミンの世界がすでにこの頃から出来上がっていたのですね。夫の正隆さんが彼女の才能に惚れ込んだのもよくわかります。
若くして亡くなった同級生のことを思ってユーミンが書いたこの曲は、今でも人の心に切なく美しい残像を残す不思議な力があるように思います。中高生の時、同じくらい好きだった小田和正さんもこの曲のカバーを2016年にYoutubeで公開しています。こちらは小田さんがピアノをジャズっぽくアレンジし、ピアノ一本で伴奏しています。ユーミンとは趣が異なりますが、透明感のある小田さんの声がこの曲にぴったりで、こちらもお勧めです。
先日、このブログの「アラフィフおやじのギター日記」でお馴染みの川野さんの企画されたプライベートキッチンライブでこの曲を歌わせていただきました。バックの川野さん、よっちゃんこと吉崎さんの安定した演奏は素晴らしかったものの、私のボーカルは練習不足、当日の環境(思ったより低い室温、出番直前の調理)への対応力のなさのため、自分としては65点くらいでした。次回はもっと頑張ろうと心に誓いました。(すぐ忘れてしまいそうですが…)本題とは逸れますが、このイベント自体はとても素晴らしく、ぜひ来年も企画して欲しいです。スタジオでのライブの後、2階のダイニングキッチンでみんなが持ち寄った(調理した)料理や飲み物で手作りの忘年会を楽しみました。
クリスマス、お正月、新年会と、これから世の中はお祭り気分が続きますが、そんな時だからこそ、郷愁にひたりながら、「ひこうきぐも」を聴いていた頃にタイムスリップして、自分を見つめ直してみたいと思います。今でも鮮明に覚えているのは、放課後、下校時刻まで毎日練習した日々、定期コンサートのために母が縫ってくれた白いワンピース、自宅で近所迷惑も顧みず、友人とギターとピアノで大合唱したことなど、夢中で歌い続けた日々のことです。失敗して落ち込んだこともありますが、すべてが今となっては良い思い出です。当時の友人と今でも繋がっていることも感謝です。ユーミンを聴いていたあの頃のように、来年は初心に戻って音楽ともう一度向き合ってみたいと思います。
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